「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND…)」などを運営するアダストリアは、2024年2月期に正社員約4000人を対象にした平均6%の賃上げを行うと発表した。これにより、人件費として約10億円を織り込む。「出店先デベロッパーで営業時間を短縮する流れが徐々に広がっていることで、働き方の効率化が進み生産性も高まる」と木村治社長は期待する。
同社は21年5月から新静岡セノバと組み、同施設で営業時間フレックスタイム制を推進。コアタイム以外の営業を各テナントの判断に任せるというもので、営業時間の短縮につながっている。4月4日に行われた23年2月期決算会見で木村社長は、「新静岡セノバには、毎月のように各地のデベロッパーが視察に来ている。23年度は他社にも営業時間短縮の考え方がより広がるのではないか」とコメント。ただし、「一部の大手デベロッパーが、なるべく長い時間営業するという価値観を保ったままだと、なかなか業界全体としては働き方の変化が起きづらい。働いている人たちも(来店客がほぼいない中で夜遅くまで営業していることに)疑問を抱くようになっている」(福田三千男会長)というのも業界の実情だ。
賃上げと併せて、今春入社した新卒正社員の初任給も昨年から1万円引き上げ、25万円とした。「今春は200人の正社員を採用できている。地域によって差はあるが、採用難で人材獲得に非常に苦戦しているといったことはない」と金銅雅之常務。
2023年2月期連結業績は、売上高が前期比20.3%増の2425億円、営業利益が同75.4%増の115億円だった。アダストリア単体では、実店舗の既存店売り上げが12カ月連続で前年実績超えとなった。特に基幹の「グローバルワーク」(売上高455億円)や積極出店中の生活雑貨業態「ラコレ(LAKOLE)」(同79億円)が事業に貢献。ただし、不正アクセスで1月に自社EC「ドットエスティ(.st)」と物流システムを休止(18〜25日)していたことで、1月のEC売上高は前年同月比11.4%減、復旧後もお詫びクーポンの配布などで利益面に影響があった。
24年2月期連結業績は売上高が前期比7.2%増の2600億円、営業利益が同21.6%増の140億円を見込む。原料高などの影響を受け、今期も引き続き「5%前後の値上げが進む」が、「『ハレ(HARE)』や『ジーナシス(JENASIS)』を筆頭に、品質やデザイン性を高めて10%以上値上げしても、お客さまはついてきている」(木村社長)と手応えを語る。海外は「ニコアンド」で中国本土に積極出店を重ねており、現在上海、成都、重慶に13店を持つ。今期は4月にタイ・バンコクに初出店すると共に、フィリピンでも出店準備を進める。バンコクのグローバル旗艦店は、地下鉄駅直結の商業施設「サイアム スクエア ワン」に4フロア約1000平方メートルで出店する。