合同展示会「ファッションワールド 東京(FaW TOKYO )2023春」が4月5日、東京ビッグサイトで開幕した。中国企業の出展が戻り、前回の約2倍となる約750社が集まった。第3回を迎えた「サステナブル ファッション EXPO」には約200社が出展した。前回までは素材開発の打ち出しが際立っていたが、菊池孝宏・事務局長によると「サステナビリティのブームは少し落ち着き、各社の向かう方向性が多様化している」という。フェムケアやスマート製品といったウェルネスや、メタバース、DXなどのキーワードのほか、今回特に焦点が当たったのが資源循環の取り組みだ。
豊田通商は、繊維循環のインフラ構築を目指す新プロジェクト「パッチワークス(PATCHWORKS)」を披露した。同社はこれまで「パタゴニア(PATAGONIA)」とコットンTシャツの循環事業を進めてきた。そのスキームを拡大し、同社がハブとなってさまざまな小売やアパレルメーカーに循環型のサプライチェーン構築を呼びかける。集めた衣類は埋め立てや焼却処分をしないこと、透明性を持って再資源化することをポリシーに掲げ、まずは繊維への再生技術が確立されているポリエステルとコットン、ナイロンの単一素材に絞って回収を進める。
衣類の再資源化は、回収した後の分別や解体作業にコストがかかる。同プロジェクトでは、参加企業から消費者に呼びかけ、消費者自身に作業してもらう。一部では学校教育の一環として、分別・解体作業を行なった。回収後は、衣類回収業者のナカノが2次選別(取りきれていない資材や異物の除去)を行い、提携するリサイクル工場で繊維に戻す。参加企業には回収だけでなく、再生した糸を購入してもらいリニアエコノミーからの脱却を促す。さらにどのようなデザイン設計であればリサイクルがしやすいかなど、リサイクルの過程で得られた情報は企業にフィードバックし循環型を前提としたモノづくりをサポートする。
同プロジェクトを主導する鬼形智英担当は、「繊維循環は社会のインフラとして整備されるのが理想だと考えている。今回の取り組みは、その一助になる活動だ。金銭的なメリットだけでなく、次世代に何を残すべきかを同じ目線で考えてくれる企業に参加してほしい」と話す。現在ポリウレタンの分離技術の開発なども進んでいるという。
丸紅は、同社が出資する米拠点のスタートアップ企業サーク(CIRC)との取り組みを大きく紹介した。「ザラ(ZARA)」の親会社のインディテックス(INDITEX)なども出資する注目企業で、綿とポリエステルの混紡素材を分離して新たなセルロース繊維原料とポリエステル原料にケミカルリサイクルする特許技術を有する。アメリカでは量産化に向けて開発が進む。丸紅は台湾の紡績工場などと、サークの原料を糸にする仕組みを構築中だ。22年には古着回収を目的とした100%子会社エムサーキュラーリソーシーズを設立し、日本国内での繊維循環のスキーム構築に向けて動き始めている。
一般社団法人繊維育英会が進める循環型プロジェクト「ウィゾール(WITHAL)」では、「回収した繊維を余す事なく、再生できる」点をアピールした。参加企業が設置した回収ボックスで回収した衣料のうち、綿100%の素材は糸に戻し、それ以外の素材は全て「パネコ」「リフモ」といったリサイクルボードの原料として活用する。22年に始動し、現在までに約20社が参加する。非営利団体としての立場を活かし利用料は1店舗あたり2000円〜と低価格で設定して間口を広げる。
資源循環の取り組みは、副資材にも広がっている。大手副資材メーカーの東京吉岡は、製造・流通・保管の工程で衣類を保護する透明のリサイクルポリエチレン袋を大きく打ち出した。使用済みの袋を回収し、同社が手配するリサイクル工場でペレット化したのち、新たな袋に再生する。環境省主導の「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加して算出した結果によると、通常のポリエチレン袋と比較して約82%の二酸化炭素排出を削減できるという。
“土に還る素材”として注目が集まる生分解性素材も、適切な堆肥化までのプロセスをどう構築していくかかが課題だ。バイオ由来の生分解性ポリエステルの開発・販売を行うV&A JAPANは、自社で回収および堆肥化までを行うことで透明性を担保している。
各社に話を聞くと、特にアウトドアブランドやユニフォームメーカーで取り組みが先行している。より複雑な混率の商品を扱う一般アパレルのプレイヤーたちも巻き込み解決策を模索していくことが業界全体で循環型へシフトしていく鍵となるだろう。