ファッション
連載 私が新入社員だったころ

アパレル店長、コンサルを経てジョイン ワールドのシステム外販担当が「キャリアチェンジしても変わらないこと」【私が新入社員だったころ vol.9】

  「WWDJAPAN」は4月3日号で、ファッション&ビューティ業界の新入社員や若手社員に向けて、「プロになろうーー知っておくべき業界の今」と題した特集を掲載している。それと連動し「WWDJAPAN.com」では、業界で活躍するアラフォー世代以下のリーダーたちに、自身が若かった頃に心掛けていたことや、それが今にどうつながっているかを取材。連載形式でお届けする。 連載第9回は大手アパレルのワールドで働く加藤圭介さん。現在はシステムソリューション事業本部に所属し、同社の店舗運営やサプライチェーンのシステムを他社に外販する仕事に従事する。新卒から数年は「ユニクロ(UNIQLO)」で店長を務め、コンサルティング会社を経てワールドへ転職した、彩り豊かなキャリアの持ち主だ。

WWD:ワールドでの現在の仕事は。

加藤圭介・ワールドシステムソリューション事業本部 第2システムソリューション部:私が所属するシステムソリューション事業本部は、ワールドが既存のアパレル事業以外の収益源を拡大すべく、目下注力してる領域である「デジタル事業」を担うセクターの一つです。これまで自社で構築・運用してきたシステムを他社に販売し、業務効率や生産性の改善などに役立てていただいています。私がセールスしているソリューションは主に2つ。店舗とECの両販路で、いかにお客さまの満足度を高めていくかという「OMO対応」と、データに基づく需要予測・生産による「在庫の適正化」です。

WWD:前職の経験が生きているのか。

加藤:これまでアパレルの現場と本部、コンサルティング会社を経てきましたが、今も毎日勉強することばかりです。ワールドでのキャリアは4年目で、すでに2回の異動を重ねました。オフプライスストア「アンドブリッジ(&BRIDGE)」の立ち上げ、公式ECの「ワールド オンラインストア(WORLD ONLINE STORE)」の集客・企画にも携わりましたが、これらは経験したことのない領域です。異動のたびに、新入社員からやり直すような気分です(笑)。

WWD:元々キャリアのスタートは「ユニクロ(UNIQLO)」という。

加藤:新卒でファーストリテイリングに入社して、まず「ユニクロ」の店長として3年半ほど現場に配属されました。当時は自分が店長だった横浜エリアの店舗が、神奈川ブロックにおけるお客様満足度でトップになっていたりもしたんです。結果だけで見たらいいのかもしれませんが、当時の僕はどうやら、めちゃくちゃ「やなヤツ」だったみたいで。当時の店舗のメンバーから、僕や店舗運営に関してフィードバックしてもらったんですが、ほぼ全員のリアクションペーパーに「怖いです」「意見が言えません」と書いてありました。

 愕然としましたね。自分ってこんなふうに見られているんだ、と……。でも心当たる節もありました。店舗でジーンズなどの裾直しをする補正担当が不在の日があれば、経験もないのに「自分でできる」と思い込んでガタガタな仕上がりになり、お客さまからこっぴどくクレームが入ったこともありました。

WWD:なぜ仲間に頼ることをしなかったのか。

加藤:信頼関係を築けていなかったからですよね。プライドが高くて、自分のことを他人よりも優秀だと思い、壁を作っていたのだと思います。それから徐々に自分を変えていこうと、常に胸に留めていた言葉は“率先垂範(そっせんすいはん)”。まずは自分がチームの模範になる。そして一人一人と向き合って、自分の熱量で巻き込んでいけるよう対話を大事にする。もちろん、すぐには結果は出ませんでしたが、半年くらいかかって、徐々に売り上げにつながっていきました。

WWD:その後は本部に異動となった。

加藤:4年ほど需要予測やサプライチェーンといった商品計画に携わったあと、その経験を生かしてコンサルティング会社に転職しました。誰もが知る小売企業の部長クラスの担当者にMDシステムの改善提案をするのは、プレッシャーも大きかったですが成長も感じられました。

 「ユニクロ」の店舗で働いたリアルな感覚は、転職してからもずっと強みとして生きていました。現場と本部、どちらの事情も分かっているからこそ説得力ある提案ができたのだと思います。

WWD:コンサル会社での学びは。

加藤:「自分に矢印を向ける」のが大事だということ。何かを成し遂げたいと思った時には、人を巻き込む必要が出てきます。「なぜ思い通りに動いてくれないのか」と人のせいにしていては、いつまで経っても物事は進まない。だから人が気持ちよく動いてくれるために、まず「自分がどう動くか」を考えるようになりました。それから、一つの仕事に泥臭く粘り強く食らいつく精神力、時間とそれに対する成果へのシビアな感覚を身に付けられたのも大きかったですね。

 ただやはり、ユニクロを離れてからも「ファッションに携わりたい」という気持ちが自分の根っこにずっとありました。それをど真ん中でやっている会社でもう一度チャレンジしたいと思い、19年にワールドへ転職しました。

WWD:新しいチャレンジに抵抗はないのか。

加藤:ころころとジョブチェンジしてきたので、その度に自分を「リセット」することにはずいぶん慣れています。今でも年上・年下問わず、分からないことはまず人に聞いてみる。常に平身低頭でいたいですし、組織内でも自分をそんなふうに「キャラ付け」するように心がけています。

 もちろん、新しい挑戦のたびに失敗はつきものですが、成功するまでやり続ければいいだけの話。成功すれば、失敗も全ての糧に変わる。そんなマインドセットで、ある意味開き直って目の前の仕事に取り組んでいます。

WWD:さまざまな仕事を経験してきたキャリアをどう振り返るか。

加藤:ひとつのことにしがみついてがんばることも、すばらしいことです。僕もそうでありたかったと憧れます。最近はプライベートでも(楽器の)サックスを習ったり、デザイン学校に通ってみたりと、迷走しながらチャレンジを続けています(笑)。昔から好奇心が強いので、その赴くままに生きてきたらこうなってしまいました。ただ、これまでの僕のキャリアを振り返ってみても、ひとつとして無駄な経験はなく、今につながっていることばかりです。色々なことを片足跳びに経験してきた僕も、1つ大きな目標は決まっていて。新しいブランドや事業を、いつか自分の手でゼロから立ち上げたいと思っているんです。

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