デサントは10日、2023年度の事業戦略説明会を東京・目白の東京オフィスで行った。“ブランディング”を軸とした積極的な投資を行い、27年3月期に主要マーケットである日本、韓国、中国での「デサント(DESCENTE)」ブランドの収益倍増を目指す。小関秀一社長は「4年前の4月9日に社長に就任した際は、韓国事業に依存し、正常な経営体制ではなかった。その後、韓国での不買運動やコロナとさまざま出来事があったが、改善を繰り返し、今、ようやくスタート地点に立てた。ここから“攻め”の経営を行う」と語る。
今年度の強化ポイントは大きく2つ。まず、自社工場のブランド化だ。岩手・奥州にある自社工場、水沢工場を30億円かけて刷新し、新たな時代に合わせた働き方を実現する。同工場は、「デサント」の人気シリーズ“水沢ダウン”を手掛けており、年間3万着を生産している。工場設立50年に伴い、“新たな50年”を見据えて、地球環境や地域共生など、現在の建屋の隣に新しいコンセプトを取り入れた新工場を作る。同工場は118人の全従業員が日本人で、他では実現できない複雑な工程も担う。「われわれの強みであるモノづくりの象徴的な存在だ。刷新により従業員が働きやすい環境を整えて、よりクオリティーの高いプロダクト開発につなげる」と小関社長。新工場は、縫製や製品開発など用途に合わせた空間にするほか、食堂やカフェなどの憩いの場も設け、従業員の満足度を高める。あくまで環境の改善とイメージ向上が目的で、増産はしない。25年7月に操業開始予定だ。
加えて、水沢ダウンで培った産地と商品イメージを直結させる戦略を、他の自社工場にも応用する。例えば、奈良の吉野工場では、「マンシングウェア(MUNSINGWEAR)」の200回洗濯しても襟がヘタレない“10年ポロシャツ”を作り、宮崎の西都工場では、「アリーナ(ARENA)」のトップレーシング水着や接着縫製技術を生かした商品などをメインに作る。「国内の自社工場は高付加価値商品の専用工場として位置付ける。融通が効き、便利だからといって、いろんな商品を請け負うことはしない」と小関社長。
もう一つの強化ポイントはマーケティングだ。同社はここ数年、主要マーケットである韓国と中国で現地のアスリートやタレントを起用したマーケティングを実施し、“中高価格帯のプレミアムブランド”としての認知を広げてきた。日本でも「ルコックスポルティフ(LE COQ SPORTIF)」のイメージビジュアルに女優でタレントの池田エライザを起用するなど、1年半前からマーケティング戦略を強化しており、「すでに一定の成果を得ている」(小関社長)という。「我々の持ち味は、あくまで商品力。しかし、これまではそれを伝え切れていなかった」。グローバルマーケティングに10億円を充てて、より効果的にブランド情報を訴求する。
そのほか、「デサント」では8つの国内既存店を順次リニューアルするほか、コーポレートロゴを英字のみのモダンなデザインに変更し、東京オフィスの改装なども行う。これらもブランディング戦略の一環だ。
同社は2022年4〜9月期に日・韓・中の全てで増収し、同期の連結決算予想では過去最高の純利益となる100億円を見込んでいる。収益の安定化とともに、“攻め”の投資でさらなる成長を目指す。