「エルメス(HERMES)」は4月7日、フランス西部ノルマンディー地方のルビエに新たなレザーグッズ工房をオープンした。パリから車で2時間ほどの場所にある約6200平方メートルの開放感あふれる新施設では、需要の高い“ケリー”バッグを中心にハンドバッグやレザー小物を生産するほか、パリ以外で唯一、サドル(鞍)の製作も手掛けることになる。
”控えめなラグジュアリー(QUIET LUXURY)”が話題を集める中、「エルメス」はクラフツマンシップにこだわり続けている。ハンドバッグの製造方法は50年前から変わらず、一つのバッグを作るのに15〜18時間がかかるため、一人の職人が製作できるのは週2〜3個。同ブランドでは年間数百人を雇用しているというが、職人のトレーニングには18カ月を要するため、すぐに生産量が増やせるわけではない。これに対し、ギョーム・ド・セーヌ(Guillaume de Seynes)製造部門および株式投資担当エグゼクティブ・バイスプレジデントは、「生産能力を高めようと努力しているが、私たちにとって絶対不可欠な品質へのアプローチを維持したい」と説明。現在、フランス国内のさまざまな施設でレザーグッズの製造に携わる職人は約4700人に上り、ルビエの新工房では最終的に260人を雇用する予定だという。
「エルメス」は現在、他にも4つのレザーグッズ工房設立に向けた準備を進めている。うち2つは年内にオープンし、残りの施設は2年以内に開設を予定する。また、リヨンのシルク工場は増築を終え、7月のオープンを目指している。非常に好調だというテーブルウエアや、スイスでの時計の生産キャパシティーも拡大予定だ。ド・セーヌ=エグゼクティブ・バイスプレジデントは、需要が供給を上回り続けていることについて、「あらゆる分野で将来的なキャパシティーを高めるプロセスを検討している。うれしい悩みではあるが、問題だ」とコメント。「2022年の結果は予想以上だった。全ての部門で成長があったので、全ての活動に投資し、生産能力を高めるようにする必要がある」と付け加えた。