ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は4月13日、2023年8月期上期決算説明会に登壇し、売上高10兆円達成に向けた今後の経営方針や大切にしている考え方、「第4創業」に込めた思いなどを語った。そのほぼ全文に加え、アナリストや報道陣からの質疑応答をまとめた。
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長:今、世界は新型コロナウイルス後の新しい世の中を作る大きな転換の時代にあります。本当のグローバルブランドになるために行動する時です。その思いを込めて、今年の年度方針を「第4創業 挑戦・実行・達成」としました。
ユニクロの創業は1984年。広島市に1号店をオープンしました。これが第1創業です。第2創業は2005年。2001年のロンドン出店以降失敗続きだった海外展開が、この年の香港出店で初めて成功し、その後、グローバルで成長する突破口になりました。第3創業は2013年。究極の普段着、LifeWearという全く新しい服の概念を確立し、服の世界の常識を変える挑戦を始めました。そして、今が第4創業です。世界中のすべてのお客さまにご満足いただける商品をお届けする真のグローバルプレイヤーになる。世界のどこでも誰でもユニクロで買えば安心という信頼感のあるブランドになる。そのプロセスをグループブランド全体で同じように実現してまいります。世界中でお客さまに最も愛されるナンバーワンブランドを本気で目指します。
10年後に売上高10兆円へ
今期の連結業績は売上収益2兆6800億円を見込んでいます。来期は3兆円程度になる見通しです。次は10兆円を目標に成長を加速します。過去20年の成長プロセスでは、ほぼ10年で3倍ずつ売上げが伸びています。2000年に3000億円、2013年に1兆円を達成。そして、2024年に3兆円です。これまで同様、自らの理想、高い目標を掲げ、そこから逆算して達成する方法を考え、実行する。そのような考え方で次の10年も3倍以上に成長し、10兆円を目指します。
この目標実現のために、私たちが目指しているのは、過去に例のない、まったく新しい「情報製造小売業」になることです。そのために2016年から進めてきた全社改革が「有明プロジェクト」です。お客さまのニーズを発見し、その情報を即座に商品化、生産、販売し、あらためてお客さまのご意見をいただく。情報の流れとモノの流れが一致するように事業を構築していく。世界中で情報をリアルタイムで商品化する。まったく新しい業態になります。
こうした考え方の下に進めてきた有明プロジェクトが着実に成果を生み、真のグローバルブランドになるための道筋が見えてきました。本当に良い服を追求するLifeWearの考え方が世界中のお客さまの共感を得つつあります。
「価値共感の商売」を地道にグローバル展開
たとえば、米国では長い試行錯誤の末、価格訴求の商売と決別し、あらゆる人々の生活をより豊かにする服、生活ニーズから考え抜かれた究極の普段着、LifeWearのコンセプトを、全面的に、繰り返しお客さまに伝え、商品としての服が持つ価値に共感してもらう商売を追求しました。従業員に対してはわれわれはなぜこのマーケットに存在するのか、私たちは何者なのか、という本質的な問いかけを繰り返し、日々の業務の中でブランドの存在意義を全従業員が理解し、商品、サービスを提供するように徹底しました。その結果、ファーストリテイリング、ユニクロに対する好感度、認知度が大きく向上しました。
成功の原動力は、グローバルとローカルが現場で一体になって業務の改革を進めてきたことです。私たちが掲げてきた「グローバル・イズ・ローカル、ローカル・イズ、グローバル」の考え方が、まさに実行段階に入っています。世界各地のユニクロでコア商品を中心に、お客さまの声をもとに各国のチームとグローバルの本部が一体になって商品開発を行い、ローカルでニーズがある商品、さらには、ローカル発でグローバルに売れる商品を生み出すためにグローバルマーケティングを強化した結果、Tシャツやフリース、エアリズム、ソフトレギンスなど大きな成果が出ています。
店舗の経営も同じです。個店経営の店が集まってグローバルにチェーン経営を展開していきます。個店ごとに独自に問題点の解決に取り組むと同時に、グローバル本部のメンバーが常に現場に入り、現場の人たちと一緒に問題解決する。世界中の店舗と商品企画から生産、物流、販売のサプライチェーン全体が直接つながって、本質的な問題解決ができる。そういう体質をつくっていきます。
あらゆる問題は一国だけでは解決できません。すべての問題はグローバルで知恵を出し、グローバルで行動して解決する。グローバルとローカルの力が合わさったときに、私たちは大きな力を発揮できます。ファーストリテイリングはそういう企業です。「第4創業」の原動力、今後の成長の源泉がここにあります。
世界中で人材投資を強化
そのために必要なことは、日本人を中心とした経営から、世界中の人材が経営者として活躍する経営体制に作りかえることです。人材の採用や育成への投資を強化し、地域間での人材異動をさらに活発化して、グローバルな視野で経営を担える人材を育成していきます。
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