ファッション

アパレル×サステナビリティは踊り場 「で、着る人は何を得られるか」を訴求せよ

 ファッション産業におけるサステナビリティの取り組みが、踊り場を迎えている。ここ数年はリサイクルや生分解といった素材開発が先行し、それらは継続ながら一段落。今はアパレルがそれを「どう使うか」のフェーズに来ている。同時に、サステナブル素材への置き換え以外にファッションビジネスが取り組むべき課題やアクションも数多く見えてきた。4月5日に東京ビッグサイトで開幕した「サステナブル ファッション EXPO」に出展企業からその傾向を探る。

 「サステナブル ファッション EXPO」は、合同展示会「ファッションワールド 東京(FaW TOKYO」の一コーナーとして2020年にスタートし、回を追うごとに規模を拡大してきた。当初は大手の繊維専門商社を中心に副資材メーカーなどが最新のリサイクル素材技術を競い合うように披露したが、一通り出そろった今は、各社が素材開発以外の取り組みの訴求を始めている。ここを見ればファッション×サステナビリティの今がわかる、見取り図のような存在になっている。今回、特に焦点が目立ったのは、資源循環の取り組みだった。

素材特性は大前提。それをブランドコンセプトにどう繋げるか?

 ファッションビジネスのサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)において、リサイクルや生分解性といった環境負荷を軽減する特性の素材活用は大前提だ。しかし、それだけでは消費者にとっては服の購買動機にはなりずらい。「それを身につけるとどのようなライフスタイルを送れるか、どのような自分になれるか」といった「サステナビリティ+α」の付加価値を訴求することが欠かせない。アウトドアやスポーツ、インナーの分野ではこの動きが先行している。

 展示会で特に目を引いたののが、フェムケアやスマート製品といったウェルネスを切り口にした提案である。繊維商社のヤギは、フェムテック商材に特化した「レイ(RE:I)」を“旅”を切り口に訴求。ブースにおしゃれなベッドを持ち込み、旅先のホテルの一室を演出した。吸水ショーツや吸水ブラなど機能アイテムが特徴の同ブランドだが、機能を前面に出すのではなく、着用シーンを想起させるビジュアル提案をすることで、ブランドコンセプト「女性の身体的・心理的ストレスをゼロにしたい」につなげている。

 初出展のイフミック(IFMC.)が打ち出したのは、テイコク製薬社が温泉療法に着眼して製造した非常に微小なミネラルの結晶体「イフミック」だ。これまでに帝人フロンティアのグループ会社テクセットと寝具の共同開発などをしている。「目指すのは健康寿命の延伸」と畠山進之介社長。身体に近接させることで血行促進効果が期待でき、200回の洗濯にも耐えうるとのことで、衣料品への活用を提案している。長年、服のデザインは生地や色が起点となってきたが、今後はこういった加工がフックの一つともなりそうだ。

「野菜染めの服で地元を盛り上げる」は購買きっかけになり得るか?

 「サステナビリティ+α」には、生活者の地元への貢献、社会貢献といった切り口もあり得る。中でも注目は、フードロスとファッションという新しい関係だ。

 繊維商社の豊島は社会貢献につながる様々なプロジェクトを進めており、廃棄食材を再活用した「フードテキスタイル(FOOD TEXTILE)」もそのひとつ。食品関連企業や農家・農園の食品残渣を染色に生かし、「タリーズ」「カゴメ」など多数のパートナー企業を持ち2月には靴下のタビオとの取り組みを発表している。

 瀧定名古屋は、同展で東京農業大学と取り組むプロジェクト「ハタケ ライフカラー」を発表した。全国の農家と連携し、野菜や植物の端材から抽出した色を使った染料使いを提案する。ブースには同社の拠点である愛知県周辺の生産者によるメロン、トマトなどで染めた生地が並んだ。「農家と直接取り組むことで、服を買う人に農家の方の顔が見える。服もフードも捨てるのはもったいない、という考えが広げたい」と同社の担当者は話している。

 フード染色のように「それを着ることが農家と地元を盛り上げる」といった価値観はファッションビジネスにおいて大きな力となり得るのか。特にアウトドアやウエルネス志向ではない“普通の”アパレルがこれらにどう取り組むかに注目したい。

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