三陽商会は2023年2月期、7期ぶりの営業黒字化を達成した。20年5月の大江伸治社長の就任以来、不振脱却へ構造改革を進めてきたが、一つのメルクマールを達成したことになる。
「マジック的な要素は何もない」。14日に都内で開かれた決算説明会で、黒字化要因について問われた大江社長はそう強調した。
社長就任当時、三陽商会は“バーバリーショック”の後遺症で4期連続の赤字に陥っており、直近の19年度(決算期変更により19年3月〜20年2月の参考値)の営業損益も29億円の赤字。すでに不採算ブランドの撤退や人員整理など手は打っていたが、浮上の道筋は見えないままだった。
かつてゴールドウインを再建した大江社長は、三陽商会においても荒療治を断行。過剰な商品在庫を絞り込み、販管費を徹底して削減する。トップライン(売上高)を追わず、利益を出せる体質に変える。「構造改革と成長戦略は同時には進められない。損益分岐の確保が最優先」。二兎を追わず、守りの戦略に徹してきた。
売上高は追わず利益を改善
「結果は必然」
結果、売上高だけで見れば23年3月期は582億円と、コロナ前の19年度(19年3月〜20年2月)の757億円には大きく及ばない※。だが利益面の指標は着実に改善しており、売上高総利益率は2.8ポイントのプラスとなった。「努力目標や希望的観測に基づく要素はできる限り排除した。実行すれば必ず結果が出ることだけに取り組んできた」と大江社長。「(営業黒字化という)結果は必然だ」と冷静に受け止める。
※三陽商会は2023年2月期から新収益認識基準に変更。19年度の売上高は同基準に照らし合わせて置き換えた参考値
今期も、25年2月期を最終年度とする中期経営計画(売上高625億円、営業利益43億円、純利益35億円)の達成に向け、着実に数字を積み上げる。期中には百貨店において新規出店13件、改装50件を計画。都心の有力店でのポップアップも積極化する。「ブルーレーベル・クレストブリッジ(BLUE LABEL CRESTBRIDGE)」「ブラックレーベル・クレストブリッジ(BLACK LABEL CRESTBRIDGE)」「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「ポール・スチュアート(PAUL STUART)」「エポカ(EPOCA)」など7つを重点強化ブランドとし、いずれも早期に売上高100億円を目指す。