4月は新入社員が働き始めるほか、転職や異動などにより新たな職場で仕事をスタートする場合もあるだろう。そこで今回は、ドキドキしながらファッション&ビューティ業界に足を踏み入れた人に向けて、日米中韓の「WWD」エディターが業界の現在地と2023年の展望を解説する。K-POPやコスメなど、若者文化の発信地となった韓国。手ごろでデザイン性の高いアパレルでも知られるが、サステナビリティの観点から、最近は“ヘリテージブランド”が人気だという。「WWDKOREA」の若手エディターが、韓国の若者世代の現在について解説。(この記事は「WWDJAPAN」2023年4月3日号からの抜粋に加筆したものです)
1 / 1
韓国では3月20日付で公共交通機関でのマスク着用義務が解除されたが、コロナ期間中に発展した事柄のうち、ファッション業界における循環性の進化とリセール(2次流通)プラットフォームの台頭は2023年も引き続き注目したい。
ファッション業界は、環境汚染を悪化させている主な産業の1つと批判されて久しい。しかし、近年は環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視するESGの観点から、循環経済の実現に取り組むアパレル企業も増えている。こうしたことの背景に、環境問題に敏感なミレニアル世代やZ世代の購買力の高さがあるのは言うまでもない。彼らは消費の主役であるだけでなく、自分の意見を口にすることを恐れず、ブランドが(実際はそうではないのに)サステナブルな商品と見せかけるグリーンウォッシュの監視役となっている。また、以前はより高い年齢層向けと思われていたラグジュアリーブランドのアイテムを購入し、後にフリマアプリ「ポンゲジャント(Bungae Jangteo)」や「キャロット(Karrot)」、リセールプラットフォームの「クリーム(Kream)」でプレミアム価格で売るなど、“賢い消費”の実践者でもある。
“ヘリテージブランド”の人気
ミレニアル世代やZ世代にとって、大量生産されて環境に有害な上、リセール価値のほとんどないファストファッションは魅力的ではない。コロナ禍の間に自分を振り返り、価値観の変わった消費者は、数年前とは異なる基準で買い物をする。多少値が張っても、時間と共に価値が下がらないものやサービスに投資するようになったのだ。何かを購入する際にそのリセール価格を思い浮かべるのはもはや習慣となっているし、いずれ売却するときのために最良のコンディションを維持するメンテナンス方法についても考えを巡らせる。このように、かつては生鮮食品のようなフレッシュさがファッションの“売り”だったが、現在は循環性も重視されるようになった。
こうして若年層もラグジュアリーブランドに興味を示すようになったことから、リセールプラットフォームは高価なバッグや限定品のスニーカーであふれるようになったが、状況は再び変わりつつある。経済的な先行き不透明感が長引き、人々の購買意欲が減退する中、韓国の若者の関心はあまりにも高価なラグジュアリーブランドのバッグから離れ、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」「ラコステ(LACOSTE)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などの、クラシックでヘリテージがありつつも価格帯がそこまで高くないブランドへと移っているのだ。
例えば「ポンゲジャント」では、23年2月における前述の3ブランドを含むヘリテージブランドの取引量は、21年9月と比べて約76倍となっている。また、こうしたヘリテージブランドの購入者のうち78%がミレニアル世代とZ世代だという。ファッションに使える予算が減っていても、安価なファストファッションを数多く購入するのではなく、循環性のあるヘリテージブランドのアイテムやビンテージ品を1点購入するのが現代の若者の姿だ。
このような動きを受けて、アパレル企業はリセールプラットフォームを買収したり、自社で設立したりしている。23年1月には、韓国最大のインターネット企業ネイバー(NAVER)が、米フリマアプリのポッシュマーク(POSHMARK)の買収を完了。ラグジュアリーブランドの古着やグッズを専門に扱うパリ発のリセールサイト「ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)」は、22年7月に韓国でサービスの提供を開始した。
23年も、若者を中心に、消費者は循環性を意識した買い物をするのは間違いない。リセールプラットフォーム各社はこの勢いを逃さず成長するべく戦略を練っているが、次のカギとなるのはトレーサビリティーだ。ブロックチェーン技術などを活用し、消費者が商品の製造過程や流通を追跡できるようになれば、循環性はさらに促進されるだろう。