来日中のキャサリン・チ・タイ(Katherine C. Tai)米国通商(USTR)代表は19日、「パタゴニア(PATAGONIA)」渋谷店を訪れ、出迎えたマーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長とともに報道陣の前に立ち、人権や環境への取り組みの重要性についてアピールをした。「私たちが着る服の綿花であれ、運転する車の金属であれ、私たちはサプライチェーンの各段階で強制労働に対処しなければならない。日本は、この闘いにおけるかけがえのないパートナー。地球を守り、労働者をエンパワメントし、世界中の労働基準を高め、生活向上を共に推進したいと」と同代表は語った。
背景にあるのは、米国との間で緊張感が高まる中国の存在だ。米国バイデン政権は22年6月に新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法を施行した。米国税関・国境警備局(CBP)の統計によると、施行後23年3月3日までに同法に抵触する疑いでCBPによる検査や差し止めの対象となった輸入貨物は3237件にのぼる。その約半数が太陽光発電製品で、続いてアパレル・履き物・織物が多く631件だった。
同代表はこの日、林芳正外相、西村康稔経済産業相とそれぞれ会談をし、今年1月に署名した「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォースに係る協力覚書」などについて話し合っている。同じ日に、より生活者に近いメッセージ発信の場として、「企業の強力なリーダーシップの好例」と評するパタゴニアの店頭を選んだようだ。「パタゴニア」は、2020年夏にはウイグル自治区からの素材調達をストップしており、製品の85%がフェアトレード認証を受けているという。「過去2年間、日米両政府は、強制労働と闘うためにどのように協力できるかを優先的に議論した。これを成功させるためには市民社会や企業提携しなければならない」と呼びかけた。
また、米国バイデン政権は、特にファーウェイなどハイテク分野で中国企業の対輸出規制を強めている。記者からの「今後、繊維・ファッション産業における対中国規制の強化があり得るか」という質問に対しては、直接の回答は避け「どこで生産されているかということではなく、どのように生産されているかということが重要だ。消費者は、自分たちが使っているお金が責任ある行為に使われていることを知りたがっている」と答えた。