「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事はWWDジャパン2023年4月24日・5月1日合併号からの抜粋です)
齋藤薫/美容ジャーナリスト
齋藤薫(さいとう・かおる):女性誌編集者を経て独立。女性誌を中心に多数のエッセー連載を持つほか、美容記事の企画や化粧品の開発、アドバイザーなど広く活躍する
今、少しだけ不安に思っていることがある。いわゆるフェムテック市場の未来である。一気に花開き、大喝采を受けるように劇的な成長を遂げた市場だ。近年ここまで勢いよく、拡大を見せたジャンルはなかったほど。ただそれがあまりにも性急であったことから、この先順当に成長し成熟させていけるのだろうか、そんな心配がちょっとだけよぎるのである。それも、これまでタブー視され意味なく封印されてきたからこそ、ひとたびふたを開けるとせきを切ったようにあふれ出てきた需要と供給、だから前例のない一大ブームを生んだと言っていいが、そもそもこれは単なるブームにしてはいけないものだからなのである。
説明するまでもなく、女性用の生理用品などデリケートゾーンにまつわる商品開発で、女性特有の悩みに応えるテクノロジーを意味するのが「フェムテック」。そもそも「フェムテック」という言葉が生まれたのも、ほんの10年前。ドイツの月経管理アプリを開発した女性起業家が生みの親だといわれる。
ただ、例えば尿漏れを意識した吸水ショーツは以前から存在したし、古典的な布製ナプキンも昨今のナチュラル志向から再注目されてた。「フェムテック」が注目を浴びて、にわかにその存在が明るみに出た月経カップも、実際にはナプキンなどより早く、1930年代にアメリカで生まれていたものなのだ。
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