スペイン発のラグジュアリーファッション・フレグランス企業のプーチ(PUIG)の2022年12月期決算は、売上高が前年比40%増の36億2000万ユーロ(約5285億2000万円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が同36.9%増の6億3800万ユーロ(約931億4800万円)、純利益が同70.9%増の4億ユーロ(約584億円)と増収増益だった。インフレや金利上昇、地政学的緊張などの逆風にもかかわらず、フレグランスの需要増が追い風となった。同社は21年3月、23年に売上高30億ユーロ(約4380億円)、25年に45億ユーロ(約6570億円)を目指す3カ年計画を発表していたが、計画より1年早く前者の目標を達成した。
カテゴリー別では、フレグランス・ファッション事業の売上高が同40.4%増の26億6500万ユーロ(約3890億9000万円)、メイクアップ事業が同51.5%増の6億2600万ユーロ(約913億9600万円)、スキンケア事業が同19.7%増の3億2800万ユーロ(約478億8800万円)と全カテゴリーで2ケタ成長となった。フレグランス事業の売り上げ拡大は、フレグランスブランド「バイレード(BYREDO)」の買収のほか、「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」「キャロリーナ へレラ(CAROLINA HERRERA)」など既存ブランドの好調も寄与。同社はラグジュアリーフレグランスの世界市場におけるシェアを10%まで拡大した。中でも「パコ ラバンヌ」の“フェイム(Fame)”や「キャロリーナ へレラ」の“ベリー グッドガール(Very Good Girl)”、「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」の“スキャンダル(Scandal)”などが人気だった。また「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は初のフレグランスラインを発表した。
ファッション事業も好調に伸びており、「ジャンポール・ゴルチエ」ではシーズンごとにゲストデザイナーとコラボレーションしてクチュール・プレタポルテコレクションを発表する戦略が成功したほか、「ニナ リッチ(NINA RICCI)」はハリス・リード(Harris Reed)をアーティスティック・ディレクターに起用、ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクター率いる「パコ ラバンヌ」、ウェス・ゴードン(Wes Gordon)=クリエイティブ・ディレクター率いる「キャロリーナ へレラ」の体制作りが奏功した。
メイクアップ事業では「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」で人気シリーズ“ピロートーク(Pillow Talk)”の商品を拡充し、イギリスでNo.1のメイクアップブランドに成長した。また、「ドリス ヴァン ノッテン」が初のリップスティックを発表した。スキンケア事業ではR&D(研究・開発)への投資を強化し、「シャーロット ティルブリー」の“マジック クリーム(Magic Cream)”が好調だったほか、「ユリアージュ(URIAGE)」や「アピヴィータ(APIVITA)」がサステナブルな商品作りに注力した。
地域別ではEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)の売上高が同30.7%増の19億5900万ユーロ(約2860億1400万円)、アジアが同40.7%増の3億4900万ユーロ(約509億5400万円)、北中南米が同56.3%増の13億1200万ユーロ(約1915億5200万円)だった。全地域で2ケタ成長となった。
マーク・プーチ(Marc Puig)会長兼最高経営責任者(CEO)は今期の業績について「過去15年で実行してきた戦略がようやく実を結んだ」と振り返った。22年はスウェーデン発の「バイレード」をはじめインドのウエルネスブランド「カーマ アーユルヴェーダ(KAMA AYURVEDA)」、コロンビアの自然派コスメブランド「ロト デル シュール(LOTO DEL SUR)」など買収が続いた。これらによりプーチの販売拠点は大きく拡大し、1000人の従業員が新たにグループに加わった。
プーチは引き続き、世界5位のフレグランスメーカーのポジションを保つが、今後はニッチフレグランスにさらに注力するという。「ニッチフレグランスが伸びており、今後は同市場でシェア20%を獲得したい」とプーチ社長兼CEOはコメントしている。