「シロ(SHIRO)」を展開するシロは4月28日、創業の地である北海道砂川市に“モノづくり・環境・観光”をテーマにした付帯施設「みんなの工場」をオープンする。場所は江陽小学校跡地で敷地面積は2万332平方メートル。オープンに先立ち、25日に関係者向けに内覧会が行われた(レポートはこちらから)。
「みんなの工場」は、「シロ」の商品を製造する工場に、ショップやカフェ、キッズスペース、ラウンジを併設する。工場は、研究開発室、素材処理室、調合室、充填室、包装室の5つの空間で構成。手作業で行われている商品の製造工程を全て見学できるように全面ガラス張りで“工場を開く”ことを実現した。モノづくりの現場や働くスタッフの姿を通じて「子どもたちがモノづくりの楽しさを感じられる場にしたい」(担当者)と話す。
付帯施設のショップには、自分のオリジナルの香りを実際の工場と同じ製法で作ることができる“ブレンダーラボ”を設置。ブランドを代表する香り“サボン”や“ホワイトリリー”、“キンモクセイ”など8つの香料を用意する。また、全商品をそろえるほか、同ショップ限定のフレグランス“フルーツブーケ”を展開。フローラルをベースにハスカップやりんご、ぶどうなどのフルーツの香りが特長。ヘアバーム(税込3410円)、オードパルファン(税込4180円)、フレグランスディフューザー(税込5720円)を販売する。なおデザインは、これまでの白いボトルから「新しい砂川を表現した」というブランド初の黄色を採用したパッケージに、ブランドロゴを大きくあしらった限定のデザインに仕上げた。カフェは、札幌市のイタリアンレストラン「TAKAO」協力のもと、道産の食材をふんだんに使ったピザやパスタ、オリジナルドリンクをそろえる。
キッズスペースは、素材処理室が見学できる手前の天井部分にジャングルネットを張り、空中で遊べるようにした。また、天井の一箇所に処理室と空気孔をつなげ、素材の香りを楽しめる仕掛けも用意した。ラウンジは、同社のスタッフが選書した約1300冊の本が並ぶブックシェルフに階段状のベンチを設置。自由に読めることができ、購入することも可能。また、一部の壁に「シロ」の前身である「ローレル(LAUREL)」のアーカイブ商品を並べ、これまでの変遷を伝える。
環境に配慮した取り組みとして、「水」「森」「食」の3つの循環を実現する。「水の循環」は、化粧品の製造工程で生じた工場排水を浄化し、工場のトイレ用水として再利用。その後はカフェの排水と合流させて浄化したものを、さらに浄化池に溜めて、微生物や植物の力で排水中の養分を吸収させてから石狩川へ流す仕組みを整えた。
「森の循環」は、森のミズナラやキタコブシなど在来種の種から育てた苗を植樹し、将来的に家具などに利用するほか、砂川市の在来植物を守り育てながら地球環境への負荷を軽減する。「食の循環」は、製造工程で出る残渣をカフェメニューに生かし、それ以外はコンポストで堆肥にする。堆肥は、農園の土づくりに活用し、畑で育てた野菜をカフェで提供したり、販売したりすることを目標とする。
「みんなの工場」は、砂川市の活性化を目的に、市民と子どもたちが主役のまちづくり“みんなのすながわプロジェクト”の一環としてオープンした。当初は、地域住民からのネガティブな声は少なくはなかった。福永敬弘シロ社長は「町の清掃業務をはじめ、社員が運転する車のスピードに注意したりと、住民の声を一つ一つ拾い上げ、草の根の活動を地道に取り組んできた。今ではオープンを喜んでいただけるようになったが、これからも住民の人の貴重な意見に向き合っていく。この施設をきっかけに、みんな(大人も子どもも自然も)が幸せになり、みんなが地球環境に配慮できることを考えられる場として提案できたら」と話す。
砂川市の人口は現在、約1万6000人と人口減少や少子高齢化が進む。シロは昨年、定年制度を廃止し、同工場で働くパートを入れたスタッフは10代から80代まで幅広い層が集まる。なお、今年、新卒で入社した24人中4人が同工場に勤務している。「年齢関係なく、みんなが得意なこと好きなことを手を取り合って受け継ぐ場所にしたい」と、移住の促進や雇用の創出を図る。
今井浩恵シロ会長は「私たちシロが100年後の未来に残せるものは何か、そして残したいものは何か。それは、モノを作る風景だった。ここでモノを作っている風景こそが本当に尊く、100年後、200年後のシロが自信を持って残せるものだと思っている。私たちは30年以上、自分たちが欲しいと思うモノをひたすら作ってきた。私たちが工場を開くことで、子どもたちの原体験を創出し、大人は何かの気づきを得たりと、モノづくりを通じて社会が良くなっていくきっかけになれば。日本はモノづくりで大きくなってきた国。シロが工場を開くことで、100年後の未来がモノづくりに溢れることを願っている」と述べた。