シャンパーニュ「テルモン(TELMONT)」は、知る人ぞ知るサステナビリティとトレーサビリティーにこだわるブランドだ。同ブランドは1912年に創業。”母なる自然の名のもとに“をモットーに、環境に配慮したシャンパーニュを生産している。ルドヴィック・ドゥ・プレシ(Ludvic du Plessis)最高経営責任者(CEO)が4月末に来日し、都内ホテルで2023年に発行したサステナビリティ・ガイドの内容についてセミナーを開催した。
多くのシャンパーニュメゾンがあるフランス・シャンパーニュ地方では、バイオダイバーシティー(生物多様性)へ配慮した農業が行われている。ブドウを原料とするシャンパーニュ業界では、生き生きとした土壌を保つことが重要だ。一方で、農薬、殺虫剤、化学肥料を使わないオーガニック農業をしているのは、わずか4%。シャンパーニュ地方は湿度が高いので、ブドウにカビが付きやすくオーガニック農業は難しいと言われているが「テルモン」では実施している。
プレシCEOは、「畑から消費者に商品が届くまでCO2排出量を測るのが重要。『テルモン』では21年にサステナビリティプロジェクトをスタートして以来、計測して削減するためのビジョンを持ち実践している」と話す。ボックスをなくすことで、1本につき全体の8%のCO2削減を実現。輸送も、航空輸送は行わず全て海上輸送だ。空輸は海上輸送の27倍もの温室効果ガスを出すと言われている。
ラグジュアリー業界のリーダーとして先陣を切る
全体の24%のCO2を排出するボトルについても軽量化を図った。シャンパーニュは発泡酒のため、通常のワインより強度のあるボトルが必要だ。プレシCEOは「ボトルは特注ボトルやクリアボトルを使用するのをやめ、再生ガラスを使用した緑色1種類のものに統一した。さらに、ボトル製造業社のベラリアと連携し835gのボトルを800gと最軽量化を実現。瓶内の圧力に耐えられるかテストをし、成功したばかりだ」と言う。わずか35gと思うかもしれないが、それでもCO2排出量が1本につき約1%削減になる。「年間3億2000本ものシャンパーニュが生産されているので、それらが軽量ボトルに切り替わればインパクトは大きい」と同CEO。
「テルモン」の本社は、100%再生可能エネルギーで運営。全て電気自動車で、トラクターなどはバイオ燃料を使用している。経営陣の4人はパリから電車で移動し、最寄り駅からは折り畳み自転車で本社まで通勤している。
プレシCEOは、「ラグジュアリー業界のリーダーとして『テルモン』は先陣を切って指針を示すことが大切。生産量を増やしてもCO2削減はできる。それを義務だと思い、プランを立案して進むだけだ」ときっぱり。
「テルモン」では、2年ごとにサステナビリティ・ガイドを発行する予定だ。