一般の人には「UA」という文字から連想するのは、音楽アーティストであり、人気モデル村上虹郎の母でもあるUA(ウーア)だろう。実際にグーグルを検索すると、上位にはずらっとウーア関連の情報が並ぶ。
ファッション・ビジネスの文脈では、UAと言えば多くの人がユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)を連想するはずだ。「UA」は、単にメディアが勝手に呼んでいるだけではなく、実際に駅ナカ業態の「ザ・ステーション・ストア」では、UとAをフィーチャーしたデザインのロゴを展開していた(ザ・ステーション・ストアは22年に撤退)。
だが、今回注目したい新「UA」は、ドームが展開する米国のスポーツウエアブランド「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」だ。これまではあまり省略されて呼ばれることは少なかったが、ドームは4月6日、新しい会員プログラム「UAリワード(UA REWARDS)」をリリースし、アプリも刷新した。
新アプリで出色なのは、人気アスリートも出演する、独自性の超高い「ハウツー動画コンテンツ」だ。例えば野球編では、なんとメジャーリーガー(ボストン・レッドソックス所属)の吉田正尚がバッティングについて丁寧に解説している。人気のトップアスリートだけでなく、「ランニング」「ワークアウト」「シューズ選び」など、多彩なテーマに応じて人気インストラクターが分かりやすくトレーニング法などを解説するなど、コンテンツはかなり充実している。
しかもこれらの動画は、基本的には「UAリワード」アプリの独自コンテンツで、大半は同社の運営する「アンダーアーマー」のユーチューブチャンネルにも出していないのだ。
ドームは24年3月末で19万人の「UA リワード」の会員数を、28年3月までに78万人に増やす青写真を描く。ただ、海外のスポーツブランドとしては「ナイキ」「アディダス」に次ぐ知名度を誇る「アンダーアーマー」にしては、目標会員数はやや少ないようにも思える。この点について、ドームの野田佳宏マーケティング事業部長は「『UAリワード』で目指しているのは、顧客の体験価値の向上を通して、ファンとの結びつきを深めること。思いとしては“ライトファンを増やす”よりも、“熱狂的なファンを増やす”こと。購入金額に応じて3%のポイントが貯められるが、買い物だけでなく、多彩なイベントへの導線の意味合いが強い」という。
日本での「アンダーアーマー」は、自ら優れたスポーツ選手であり指導者でもあった創業者の安田秀一氏が自身のカリスマ性を武器に猛烈な勢いで成長させ、定着させ、「ナイキ」「アディダス」に次ぐポジションにまで押し上げた。その一方で、顧客は40代の男性の割合が高く、商品MDにもやや偏りがあった。今後はウィメンズやシューズなど、より商品や顧客層を広げる必要があり、「UAリワード」はその強力な武器になる。伊藤忠出身の北島義典社長が率いる新生「アンダーアーマー」は、新たな「UA」の象徴になれるか。