百貨店の売り上げ構成比が変化している。日本百貨店協会の2022年の統計によると、百貨店の売り上げ構成の1位は「食料品」の29.0%、2位が「衣料品」の26.6%、3位が「雑貨」の19.7%、4位が「身の回り品」の15.3%となる。百貨店では売り場面積が大きい「衣料品」が2000年頃まで40%以上のシェアを誇ってダントツの存在だったが、「ユニクロ」に代表されるSPA(製造小売業)の台頭やショッピングセンターとの競合激化でじわじわと衰退。コロナ下の20年に初めて「食料品」に1位の座を明け渡し、行動規制がだいぶ緩和された22年も1位の座を取り返すことはできなかった。
興味深いのは「雑貨」と「身の回り品」である。
百貨店業界の分類でいう「雑貨」とは、化粧品、美術・宝飾・貴金属、玩具など。22年の「雑貨」の売上高は前年比14.7%増の9829億円だった。10年前の12年に比べて売り上げ構成は5.9ポイント上昇している。マスク着用の継続もあって化粧品の売上高は9.1%増の3795億円と緩やかな回復だった。一方、美術・宝飾・貴金属は23.3%増の4526億円だった。美術・宝飾・貴金属には時計が含まれており、数百万円の高級時計が富裕層を中心によく売れた。
「身の回り品」とは靴、バッグ、アクセサリー、財布・革小物、傘、旅行用品などを指す。22年の売上高は前年比26.1%の7630億円。物販系の伸び率でいえば最も高い。こちらも10年前に比べて売り上げ構成は3.0ポイント上昇している。けん引しているのは平場の靴売り場やバッグ売り場で売られている商品というよりも、ブティック形式で出店しているラグジュアリーブランドの商品である。コロナを経てラグジュアリーブランドは勢いを増す。バッグなど物によって10万円以上の値上げを行なっているにもかかわらず、動きは活発だ。昨年10月以降、回復してきた東南アジアや欧米からの訪日客が円安を背景に日本で高額品を買い求める。
銀座店で売上高の約85%を稼ぐ松屋は、23年2月期決算で「身の回り品」の売上高が初めて「衣料品」を抜いた。立地柄、ラグジュアリーブランドの品ぞろえが強いことと、訪日客の回復したことが重なって、「身の回り品」の売上高は前期比78.3%増の275億円。売り上げ構成では8.1ポイント上昇の34.1%になった。