ファッション

「ケイタ マルヤマ」が見た夢の景色、地獄の現実【90年代リバイバルの源泉】

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 2020年代のファッションを象徴するトレンドに1990年代リバイバルや“Y2K”がある。これらを経て、2020年代のトレンドはこの先どう変化していくのだろうか。1990年代に一斉を風靡したデザイナーたちや、カリスマ的人気を誇ったショップの仕掛け人、大ヒットした雑誌の編集長が当時を振り返りながら、この先のファッション界の変化を予想する。(この記事は「WWDJAPAN」2023年月4月24日&5月1日合併号からの抜粋です)

丸山敬太/「ケイタ マルヤマ」デザイナー

PROFILE:(まるやま・けいた)1965年生まれ、東京出身。1987年に文化服装学院卒業後、ビギグループの「アツキ・オオニシ」の企画デザイナーを務める。90年に独立し、ドリームズ・カム・トゥルーら多くのミュージシャンやタレントの衣装を手掛けた。94年に「ケイタ マルヤマ トウキョウ パリス」として東京コレクションでデビュー。96年には東京・青山に旗艦店を開く。97年にパリでウィメンズのコレクションを発表。20年にはK.M デザイン スタジオを設立し、代表取締役を務める PHOTO:KO TSUCHIYA

 丸山敬太が自身のブランドを設立してから、2024年で30周年を迎える。1990年に独立後、アーティストやタレントの衣装を手掛けた後に「ケイタ マルヤマ トウキョウ パリス(KEITA MARIYAMA TOKYO PARIS)」を立ち上げて94年の東京コレクションでデビューを飾った。丸山デザイナーは「当時は何も考えていなくて、ノリで立ち上げた。だって、何もやってないのにトウキョウ パリスだし」と笑う。ブランド名の由来は、丸山デザイナーが衣装を手掛けていたドリームズ・カム・トゥルーの吉田美和が「今日の衣装はケイタ マルヤマ パリス」とステージで紹介したことがきっかけ。「パリコレで自分の名前でショーがやりたいという夢を話していて、それを拾ってくれた」。4月20日に原宿のキーウエストクラブで開いたデビューショーをスタッフやモデルが一丸となって成功させ、ショー終了後はみんなで泣いた。その鮮烈デビューにより、展示会では大手セレクト店などが買い付けたが、勢いで始めたブランドにとってその反響は想像以上すぎた。「地獄だった。賭け率や生産について分かっていなかったから。展示会場で先輩に電話して掛け率を聞いたり、知人のお母さんにニットを編んでもらったり」。

通信販売で届く現金書留で生活

 貯金が底をつきそうになると、自身が手掛けたドリームズ・カム・トゥルーのスタッフTシャツが雑誌「オリーブ(OLIVE)」の通信販売ページに掲載され、読者から届く現金書留を毎日に生活費にした。しかし周囲に支えられながら知名度は飛躍的に広がり、ビジネスも急成長。97年には念願だったパリ・コレクションにも参加し、最盛期は年間売上高25億円規模になるまで事業を拡大していった。順風満帆に思えたデビューからの道すじだったが、丸山デザイナーはあるコンプレックスを抱えていたという。「モードの人たちには全く評価されなかったから。楽しいと言ってくれる人もいれば、アヴァンギャルドの系譜の人たちからは『これはファッション・モードではない』という評価で、ずっとその二極をきた」。

 その後は、運営会社が変わるなどのビジネスの浮き沈みを経て、現在はライセンス事業をなくし、東京・南青山の直営店「丸山邸」を拠点に、自身のコレクションやさまざまなコラボレーションを行っている。30周年に向けてさまざまなコラボレーションや、これまでデザインした約800の柄を使った企画も進行しているという。「僕はアーティストではなく、デザイナー。これからも社会の中心にいる人たちに愛される存在でありたい。必要であれば、次世代にためになることをやりたいと常に考えている」。

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