フランス発ジュエリー「メシカ(MESSIKA)」のヴァレリー・メシカ(Valerie Messika)創業者兼アーティスティックディレクターが来日した。同ブランドは、2005年に設立。日本には2020年に上陸した。ケイト・モス(Kate Moss)やジジ・ハディド(Gigi Hadid)とのコラボレーションなどでも知られるジュエリーブランドだ。約3年ぶりに来日したメシカに、クリエイションなどについて聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
ヴァレリー・メシカ「メシカ」創業者兼アーティスティック・ディレクター(以下、メシカ):イベントで顧客やメディアに会いにきた。日本で会社を設立したのが約3年前。コロナ禍で大変だったが、ブランドの認知度アップを図ってくれたチームのサポートも目的だ。販売員のトレーニングも行う。また、ブティックにふさわしい場所の視察も兼ねている。私は日本の文化が大好きで、家族で京都や富士山にも行くことを大変うれしく思う。
WWD:自身のブランドを立ち上げたきっかけは?
メシカ:父親がダイヤモンド商だったので、小さな頃からダイヤモンドに囲まれて育った。ダイヤモンドで遊んだり、とても身近なものだった。私が25歳になったときに感じたことは、ダイヤモンドの世界では伝統が重んじられるという点。若い女性がつけられるようなダイヤモンドのジュエリーがなかった。だから、ダイヤモンドに自由を与えてモダンでエッジのきいたジュエリーを作ろうと思った。
WWD:ブランドのフィロソフィーは?
メシカ:ダイヤモンドを解放すること。ダイヤモンドが輝きを増すようなセッティングを施したり、クールで心地良いファッションのようにエネルギッシュなものにしているという点。若い世代がつけられるジュエリーを提供している。ダイヤモンドは男性から贈られるものではなく、女性が自分で買えるものというメッセージをこめている。ダイヤモンドとは夫婦の間だけのものでなく、バッグやシューズのように手に取ってもらいたい。ダイヤモンドを通して女性が美しくパワフルになるのを願っている。
WWD:ダイヤモンドに特化したブランドにした理由は?
メシカ:ダイヤモンド商の父が、ブランド立ち上げのときに、「他のマネをせずに自分のスタイルにこだわるべきだ」と助言をしてくれた。家族みんながダイヤモンドに携わっているので、ある意味、われわれはダイヤモンドの専門家。弟は原石の調達を行っており、鉱山から消費者まで一貫して独自性を持ってダイヤモンドを提供できる。それが強みだと思っている。同じ石に毎回向き合うのは難しいこともあるが、ダイヤモンドはタイムレスで流行に左右されない貴石だ。
WWD:クリエイションのインスピレーション源は?
メシカ:ダイヤモンドからインスパイアされる。実際触れているので、どうすれば美しく引き立てることができるかと考える。だから、ダイヤモンドにオマージュを寄せたクリエイションもある。また、女性もインスピレーション源の一つ。母や祖母、娘などの家族から女優や歌手などさまざまな女性から影響される。ファッションも大きなインスピレーション源だ。パリは、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)やアズディン・アライア(Azzedine Alaia)、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などによるクチュールの都だから。アートや建築、旅などから着想を得ることもある。
WWD:クリエイションの過程で最も苦労する点と楽しい点は?
メシカ:苦労するのは、アイデアを現実のものにするということ。夢を実現するにはステップ=技術が必要。技術を通してアイデアがポジティブなものに変わることもあり、それは楽しみでもある。とてもチャレンジングだ。楽しいのは、チームでそれぞれのクリエイティビティーを発揮して刺激し合うという点。そうすることで、皆ハッピーに感じていると思う。
WWD:現在何カ国で販売しているか?トップ3の市場は?
メシカ:75カ国で販売している。トップの市場はフランス、2位が中東、3位が中国とアメリカ。
WWD:日本市場における戦略は?
メシカ:「メシカ」らしくあること。「メシカ」のような洗練された製品を手に取りやすい価格で提供するブランドはない。日本の文化を尊重しつつ、「メシカ」が持っているロックンロールな部分をアピールしていく。
WWD:今後、ジュエリーの制作においてチャレンジしたい点は?
メシカ:人々を驚かせ続けたいと思っているので、一般的ではない提案をしたい。前回のランウェイショーでも発表したが、口や鼻など思いがけない体の部分をクールかつモダンに見せるジュエリーを作りたい。
WWD:ラボグロウンやモアサナイトの存在についてどのように考えるか?
メシカ:私は天然ダイヤモンドに囲まれて育ったので、何百万年もかけて地球が作り出した天然ダイヤモンドの魔法を実感している。ラボで人工的に作られたものに対してアンチとは言わないが、私のDNAやストーリーにはないものだ。天然ダイヤモンドと人工は本物の絵画とリトグラフのようなものだと思う。