5月に入り、いよいよ日焼け止めが手放せない季節に突入した。毎年多くの日焼け止めが発売されているが、2023年は日焼け止めの効果を示す表示に耐水性の新基準が加わったり、新たな日焼け止めトレンドが生まれたりするなどしている。最新の日焼け止め事情をまとめた。
【2023年日焼け止めトピック】
日焼け止め機能表示に新基準
「UV耐水性」がスタート
2022年12月から運用が始まった耐水性表示は、UVAに対する機能表示「PA」の基準が4段階に拡大された13年以来の大きな変更点だ。2年の猶予期間があるため24年11月30日までは記載がない商品も市場に出回るが、来年には多くのメーカーがこの基準に沿った商品を流通させることになるだろう。
■新基準・耐水性表示が生まれた理由 ウォータープルーフと何が違う?
化粧品の耐水性を示す言葉に「ウォータープルーフ」がある。汗や水に強いという商品特性を示すものだが、これまでは耐水性の業界基準がなかったため各社が自主的に試験を行い、その結果を根拠として表記していた。
そのためメーカーや商品によっては効果にばらつきがあったが、海やプールなどの水辺で使用する事も多い日焼け止めの耐水性は、消費者にとって商品選択の鍵を握る重要な機能だ。そこで、化粧品製造メーカーの業界団体である日本化粧品工業連合会が自主基準を検討し、国際標準化機構(ISO)の規格であるISO18861(2020)に基づいた明確な基準を設けた。
今後はウォータープルーフの文言を記載する商品には新基準に沿った試験を受け根拠を示す必要があるため、猶予期間終了後は「ウォータープルーフ」の表現はUV耐水性のマークと併記する商品で占められることになる。また、今回の新基準は日焼け止めのSPF値に関するルールのため、マスカラやファンデーションなどのコスメアイテムには該当しない。
■耐水性表示は何を意味している?
紫外線には“レジャー日焼け”と言われ、長時間日に当たることで肌が赤くなったり黒くなったりする紫外線B波(UVB)とシミやシワなど“光老化”の原因となる紫外線A波(UVA)があり、B波に対するUVカット力はSPF、A波はPAで表示されている。
今回新たに設けられた耐水性基準はSPFを対象としていて、水流を発生させた30℃の湯に40分間(20分×2)、または80分間(20分×4)水浴し、前後のSPF値の保持率を確かめる方法が採用されている。水浴時間40分で耐水性効果ありと認められた場合は「UV耐水性☆(またはUV耐水性★)」、80分の場合は「UV耐水性☆☆(またはUV耐水性★★)」の表示が可能となる。
試験方法からもわかるように、この耐水性表示は「水に浸かった時」を対象にしている。SPF値&PA値にも言えることだが、タオルで肌をこすったり、激しい動きで物や衣類等とこすれ合ったりすると日焼け止めの効果は落ちるので注意が必要だ。元々日焼け止めは2〜3時間ごとの塗り直しが推奨されているが、水から上がってタオルで体を拭いた時は塗り直しを行うなど、状況に応じた対応を心がけた方が良いだろう。
【2023年日焼け止めトピック2】
「チークUV」も登場
UVカットもメイクアップの一部に
SPF値やPA値などのUVカット力や耐水性、肌にストレスがかからないテクスチャーなどで語られがちだった日焼け止めだが、近年はメイクアップの一部としても存在感を放っている。
■クロスオーバーする日焼け止めとベースメイク
トーンアップ機能を兼ねたUVカット商品は2018年頃から人気を集め、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」の“UVイデア XL プロテクショントーンアップ”、「ランコム(LANCOME)」の“UV エクスペール トーン アップ ローズ”、ロート製薬の“スキンアクア トーンアップUVエッセンス”などがヒット。以来、各ブランドから化粧下地やカラーコントロールを兼ねた日焼け止めが多数登場した。
日焼け止め商品にベースメイク機能が備わる一方で、メイクアップブランドの化粧下地やコントローラーはUVカット機能を強化。日焼け止め商品とベースメイク商品が境界を越えUVカット力や“美肌見せ”を高め合った結果、消費者の商品選択の幅が広がっている。すっぴんで過ごす日はトーンアップUVだけを塗る、屋外を出歩く時は日焼け止めと化粧下地で万全の対策を行うなど、シーンに合わせた使い方が可能だ。
■「日焼け止めでポイントメイク」の新発想
ベースメイク機能の進化が続く日焼け止めだが、今年は「ポイントメイク」を発想源として商品も加わっている。「アリィー(ALLIE)」の“アリィー クロノビューティ カラーオンUV” [SPF50+・PA++++ ](全3種、税込各1760円※編集部調べ)は高いUVカット機能を持たせながら自然な色づきを与え、日焼け止めでポイントメイクを行う新たなメイク提案を行っている。また、「ジバンシイ(GIVENCHY)」はスキンケアシリーズ“スキン パーフェクト”から、ピンクと白のマーブル状のテクスチャーでハイライトとしても使えるスティックタイプの日焼け止め“スキン PFCT UV スティック” [SPF50+・PA++++](11g、6710円)を発売している。
顔の中でも高い位置にある頬や鼻先は紫外線を浴びやすいものの日焼け止めはメイクの上からは塗りにくい。しかし、ポイントメイクならばメイク直し時にも塗り直しやすいという利点がある。また、日焼け止めだけで過ごす日もトーンアップ系の日焼け止めに加えて血色感を与えたい時に重宝する。
メイクアップアイテムとしてのチークも「エトヴォス(ETVOS)」の“ミネラルプレストチーク”、江原道の“マイファンスィー UVミネラル クリーム ブラッシュ”などUVカット機能を持たせた商品があったが、「ポイントメイクとしての日焼け止め」は新しいアプローチといえる。日焼け止めがメイクアップの一部としてさらに進化を遂げるか、注目だ。
【美容ジャーナリスト加藤智一がセレクト】
さらにマルチな機能性を付加した
最新日焼け止め16選
新作の日焼け止めは、機能性はもちろん、形状もさまざま。また、外出先で化粧直しとともに、“日焼け止めのつけ直し”ができるアイテムにバリエーションが増えているのも新しい傾向だ。 (構成・文 :加藤智一)
PROFILE:加藤智一(かとう・ともいち):業界歴25年を超えるベテラン。「25ans」(ハースト婦人画報社)など、女性誌の美容エディターを経て独立。著書に「お洒落以前の身だしなみの常識」(講談社)などがある。現在、「Yahoo! ニュース」のオーサーとしても活躍中
【POINT①】ユニーク形状でシーンに応じて使い分け
ADDICTION
“アディクション スキンケアUV.タッチアップクッション”(SPF45・PA+++ 全3色、各12g、各5830円)
化粧下地として使えるほか、メイクアップの上から日焼け止めを塗り直せるクッションコンパクト。美容液90%配合、10種のオーガニック植物由来成分配合で、保湿効果も充実。スキンケア感覚で、快適にUVケアができるのがメリット。全3色のカラーバリエーションで肌色補正できるタイプも用意。
GIVENCHY
“ジバンシイ スキン PFCT UV スティック”(SPF50+・PA++++ 11g、6710円)
ピンクと白のマーブル状テクスチャーのスティックタイプ。パール成分が肌にほんのり血色感と明るさを加えるので、ナチュラルなハイライターとしても活躍。スキンケア成分としてはビタミンC誘導体などを配合。朝のスキンケアのラストステップとして、または日中の化粧直しとして使う。
KANEBO
“カネボウ チアリング ミスト UV”(SPF50+・PA++++ 30mL、3300円)
ミスト状ながら、肌の上で伸び広がると、均一でやわらかな水膜オイルジェルに変化。肌表面の凹凸をカバーして、潤いを守りながら紫外線を防御。瞬時にピタッと収まるため、メイクの上からでも使いやすい。また、体や髪、頭皮など全身に使える。ナイアシンアミドや西洋ナシ果汁発酵液など、美容成分も配合。
【POINT②】メイクアップ効果をプラス
DIOR
“ディオール プレステージホワイト ル プロテクター UV ルミエール シアーグロー”(SPF50+・PA++++ 30mL、1万5180円)
肌悩みに働きかけるエイジングケア効果、ホワイトローズとビタミンC誘導体によるブライトニング効果を発揮するブランド最上位シリーズのUVプライマー。光の立体感によるソフトフォーカス効果を備えているので、ファンデーションの輝きを引き立てる。シルクのように柔らかで伸びの良い使い心地。
ROHTO
“ロート製薬 スキンアクアネクスタ トーンアップセラムUVエッセンス”(SPF50+・PA++++ UV耐水性★★ 70g 1760円)
UV耐水性★★を付加。艶のあるシアーなローズカラーで、くすみやすい大人の肌を自然に明るく整える。紫外線吸収剤不使用、ミネラル由来の紫外線散乱材だけを使いながら、オイル成分の処方工夫で、ノンケミカル特有のきしみや乾燥感を低減し、心地よい使用感に。また、環境負荷が懸念される成分不使用。
SUQQU
“スック プロテクティング デイ クリーム”(SPF50+・PA++++ 30g、7700円)
薄片状酸化亜鉛が、肌の上に薄く伸びひろがることで、まるで鏡のように光を反射する艶ベールを形成。肌の内側から発光するような生き生きとした肌印象を演出。上に重ねるファンデーションの透明感も劇的にアップさせる。また、均一なベールが水分蒸散を防ぎ、10時間の潤い効果を発揮。
ATHLETIA
“アスレティア スキンプロテクション UVジェル C”(SPF30・PA+++ 全2色、各30g、各4400円)
ナチュラル処方ながら、カラータイプの日焼け止めが登場。血色感を加えるコーラル、毛穴やくすみを抑えるグリーンの2色展開で、気になる肌悩みをナチュラルに補正。ライトなメイクを施すトレーニングの日やビーチでの休日などを使用シーンに想定。潤い成分を配合した、のびのよいジェルテクスチャー。
【POINT③】スキンケア機能がさらに向上
SEKKISEI
“雪肌精 クリアウェルネス UVエッセンスミルク”(SPF50+・PA++++ UV耐水性★★ 50mL、2420円)
UV耐水性★★を付加。複数の植物成分を配合することで、アウトドアやレジャーの過酷な紫外線によるダメージから肌を守る。また、シミやくすみを自然にカバーし、素肌そのものを美しくみせ、明るく艶のある仕上がりに整えるのも特長。まろやかなミルクタイプ。海に流れ出にくい、サンゴフレンドリー処方を採用。
YVES SAINT LAURENT
“イヴ・サンローラン ピュアショット エアリーライト UV50”(SPF50+・PA++++ UV耐水性★ 30mL、7700円)
UV耐水性★を付加。汗や水に強い耐水性を搭載しながらも、エイジングケア成分を強化。ナイアシンアミドを従来の10倍配合。パワフルなボタニカル・シトラスとのバランスにより、透明感・ハリ肌をスピーディにかなえる。また、独自の薄膜フィルターが引き締まったハリ感を実現。化粧下地としても優秀。
ALBION
“アルビオン スーパー UV カット インテンスコンセントレート デイクリーム”(SPF50+・PA++++ 50g、1万1000円)
人気UVがリニューアル。今作では時計遺伝子の働きに着目。日中は紫外線から防御する力を、そして夜は修復を促す肌環境に整えることで、エイジングケアの機能性を強化。ブルーライトカット効果もプラス。高級スキンケアクリームのように上質で濃密なテクスチャーにも注目。つけ心地の良さにリピーター多数。
【POINT④】ミネラルながら高いSPF値
YAMADA BEE FARM
“山田養蜂場 植物から生まれたミツバチ UVミルク”(SPF36・PA+++ 50g、4730円)
化学合成の紫外線吸収剤や紫外線散乱材を使用せず、植物の力だけで紫外線をカットするのがコンセプト。また、コメヌカ由来のフェルラ酸を用いたことで、高い紫外線カット効果を実現した。エッセンスミルクのような使い心地も魅力。敏感肌パッチテストに加え、乳幼児テスト済み。家族全員で使える。
ETVOS
“エトヴォス ミネラルUVアクアセラム”(SPF35・PA+++ 3740円)
日焼け止め効果のほか、美容液、化粧下地の3つの機能を備えた日中用美容液。ブルーライトや近紫外線など光ダメージからも肌を守る。顔色を明るくするホワイトカラーで、仕上がりに美肌補正効果も加えた。ノンケミカル処方ながら、するすると伸び広がるテクスチャー。低刺激処方で敏感肌にも配慮。
【POINT⑤】耐こすれ・耐皮脂など防御を強化
IPSA
“イプサ プロテクター サンシールドe”(SPF50+・PA++++ UV耐水性★★ 30mL、3080円)
UV耐水性★★を付加。海や山などのアウトドアやアクティブなシーンで活躍する。また、皮脂へのアプローチを強化。紫外線だけでなく、空気汚れの付着を防止することで、脂質の酸化を誘発する原因物質から肌を守る。汗・水・皮脂に強くくずれにくい仕様ながら、皮膜感のない、みずみずしい使い心地。
DECORTE
“コスメデコルテ サンシェルター マルチ プロテクション ベリーウォーターレジスタント”(SPF50+・PA++++ 35g、3300円)
カプセルの中に厚みのあるゲルを内包。ゲルの上に被膜が形成されることで、汗・皮脂はもちろん、こすれにも強いプロテクト膜を作る。さらに、大気中の微粒子からもガードし、環境ストレス因子から肌を守る。潤いを抱えたウォータリーエッセンスベースで、しなやかでハリのある肌が持続する。
【POINT⑥】光や有害なガスをも味方に
ORBIS
“オルビス リンクルブライト UV プロテクター”(SPF50+・PA++++ 医薬部外品 50g、3850円)
有害なガスさえも味方に変える成分を搭載。自動車の排気ガスやたばこの煙に含まれるガスを水と二酸化炭素に分解し、その過程で発生するイオンでプロテクト膜をより強固に。また、シワ改善と美白の両方への効果が認められたWナイアシンや、肌のバリアを強化するアプローチで、スキンケア効果も高めた。
CLE DE PEAU BEAUTE
“クレ・ド・ポー ボーテ クリームUV n”(SPF50+・PA++++ 50g、1万1000円)
肌本来の防御力を高めることで、外的ダメージに負けない肌をつくる。加えて、太陽光から肌を守りながら、肌によい光を選択して取り込む機能も搭載。赤色光を取り込むことで、肌活性にアプローチする。ブランド独自のエイジングケア成分で、肌を潤いで満たし、保湿感を長時間持続させるのも特長。