1973年に東京で創業したメルローズは50周年を迎えた。DCブランドブームを仕掛けたビギグループの傘下として、ビギのニット部門が独立したのがそのはじまりだ。 「ピンクハウス」 「マルティニーク」 「ティアラ」 など個性豊かなスタイルを発信し、多くの顧客に愛されている。 日本のファッション史に大きなインパクトを与えてきた50年を振り返りながら、 「WWDJAPAN」が現在の主力ブランドをレビューする。
メルローズの歴史は日本の
ファッションの歴史そのもの
1 / 3
1970年、メルローズの前身であるビギグループ創業者の大楠裕二、ファッション誌「ミセス」でモデルをしていた稲葉賀恵らを中心に5人が集い、東京・白金のマンションの一室でビギが創業した。同年には原宿に石垣づくりの店舗「ブティック・ビギ」1号店を開き、原宿ファッションの黎明期をリードしていく。
「株式会社メルローズ」が設立されたのは73年だった。ビギの成長に伴い、中核企業として独立した。創業の理念は「服-それはあくまでも着る人のためにある」。コーポレートブランド「メルローズ」が生まれたのもこの年だ。自己表現の手段としてファッションを楽しむようになった女性たちに向けた先進的なスタイルが支持され、表参道の同潤会アパートの「メルローズ」1号店は多くの女性のあこがれの場所になった。
ビギおよびメルローズは、創業時から80年代にかけて爛熟期を迎える。72年にはデザイナー金子功による「ピンクハウス」が産声を上げ、そのロマンチックでデコラティブなドレスは80年代のDCブランドブームの主役の一つになった。77年にデビューした「ラブレア」は女性の社会進出を象徴する服となった。78年の「メルローズフォーメン」は後に「メンズメルローズ」に改称し、今年45周年を迎える。「フィフスクラブ」はスポーツとライフスタイルの融合を先取りした。「メルローズ アン・ファミーユ」は新しい時代感覚を持ったファミリー層に照準をあてた。
2000年以降もセレクトショップ業態として新境地を開いた「マルティニーク」、クラシックなスタイルを再解釈した「ティアラ」、オールジェンダーでオールエイジ向けの「プレインピープル」、人気スニーカーと現代の東京のスタイルを掛け合わせた「コンバース トウキョウ」、デジタル時代の消費スタイルを提案したセレクトショップ業態「サードマガジン」――。同社のブランドや業態のバリエーションはとても豊富で、幅広い顧客の支持を集め続ける。
創業から50年。この間、社会は大きく変化し、ファッションの流行も移り変わっていったが、時代の数歩先を読み、着る人のエモーションを刺激するメルローズの姿勢は創業時から変わっていない。
メルローズの主要ブランドを
「WWDJAPAN」がレビュー
1 / 7
日本の“カワイイカルチャー”の源流と言えるのが 「ピンクハウス」。50年が経った現在も、母娘の幅広い世代を魅了し、国内外にファンを抱える。 アーカイブアイテムはプレミアな価値があり、古着屋では高額で取引される。 2018年には、ドラマでの衣装が話題となり、 再び脚光を浴びた。 国内のさまざまなブランドとの多彩なコラボレーションも話題だ。
「メンズメルローズ」は日本のメンズファッションシーンをけん引してきたブランドの一つ。「メンメル」の愛称で親しまれ、 幅広い層の男性たちに支持される。カルチャーを取り入れたデザインを上品に打ち出し、 着心地や着回し力の高いアイテムがそろう。
「メルローズクレール」はエフォートレスにおしゃれを楽しみたい大人におすすめのブランド。 ベーシックなカジュアルスタイルをベースに、今の気分を取り入れられるデザインが魅力だ。 さりげなく体形カバーをしてくれる優秀なアイテムも人気。
「マルティニーク」はカリブ海に浮かぶ島であるマルティニークに由来するように、旅に出たくなるようなワクワクを感じさせるブランド。国内外のセレクトアイテムからビンテージ雑貨までそろい、宝探しのような気持ちでショッピングを楽しめる。オリジナルアイテムにも定評があり、大人の上品で洗練されたスタイルを完成させてくれる。ビンテージのトランクなどを飾った店舗のインテリアも良い。
“大人かわいい” を極めたいのならば「ティアラ」へ。立ち上げ当初の品ぞろえは、パンツはほぼなく、スカートとワンピースのラインアップだったという逸話もあるほど、 フェミニンなテイストが得意なブランドだ。 特に人気のあるドレスは、コロナ禍で型数が減っていたが、今夏にドレスコレクションとして復活するとか。デザイン性だけでなく、着心地 も考慮されているアイテムが豊富だ。
旬な東京のカルチャーやファッションを取り入れるなら「コンバース トウキョウ」 へ。 定番アイテムであるALL STARと相性抜群の洗練されたアイテムがずらり。 100年以上の歴史を持ち、世界的に有名な 「コンバース」の日本限定アパレルブランドのため、観光客の間でも話題を集める。
「サードマガジン」は一通りのおしゃれを楽しんできた、ファッション玄人に響くセレクトショップ。スタイリストやエディターのファンも多く抱える。 仕立ての美しいジャケットから古着のロックTシャツ、ハイヒールまで、絶妙なミックススタイルが新鮮だ。 東京・代官山に、“店舗で見て、オンラインで購入”という形式のショールミングストアを構えており、完全予約制でパーソナルスタイリングを受けられる。
東秀行社長、これからの50年への宣言
「未来を創る会社であり続ける」
「服は着る人のためにある」という思いのもと、ワクワクドキドキを感じていただけるモノ作りに挑戦してきたメルローズが2023年、創立50周年を迎えました。当社のブランド、そして洋服を愛して下さったすべての皆様に、心より感謝を申し上げます。モノ作りへの思いは50年間変わることがありませんが、培ってきた技術や伝統も改革がなければ、新たに紡いでいくことはできません。“時代と共に価値観のすべてが変化していくなか、持続可能な社会はどのように作れるか?”ということを考え、これからも、未来を創る会社であり続けたいと思っています。服は装いを美しくするだけでなく、その人の内に自信と誇りを湧き起こします。メルローズの仕事は服を作るだけでなく、「夢を創ること」。これからの50年、そして先に続く未来も変わらぬモノ作りの精神で、夢に溢れる服を創っていきます。
メルローズロゴを復刻した
50周年記念アイテムを発売
メルローズの50周年の歴史をさかのぼり、アーカイブから象徴的なフォントを現代風にアレンジしたロゴを配したTシャツとスエットを販売する。ボディーは企画チームがアーカイブのボディーを持ち寄り、フィッティングしながら修正したパターンを採用。Tシャツは襟元の曲線にこだわり、通常のTシャツよりも前下がりを浅くしているのがポイント。スエットは生地をバイアスにカットすることで縮みを軽減し、脇から袖下にリブを入れることでストレッチ感が程よく出るように配慮が凝らされている。それぞれユニセックスで着用できるデザインで、2サイズを展開。カラーはTシャツがホワイト、スエットはホワイトとブラック。6月1日に公式オンラインストアとメルローズ全国店舗(一部店舗除く)で販売を開始する。
メルローズ
03-3464-3310(代表)
ファッションの「これまで」と「これから」