ワコールホールディングス(HD)の2023年3月期連結業績(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比9.6%増の1885億円、営業損益が34億円の赤字(前期は32億円の黒字)、純損益が17億円の赤字(同17億円の黒字)だった。旧大阪事務所の固定資産売却益があった一方で、米ワコールののれんや無形資産による減損や国内ワコールのフレックス定年制度実施に伴う費用などが理由で、会社創設後初の赤字決算となった。
国内ワコールの売上収益は同9.8%増967億円。コロナ収束により個人消費回復の兆しが見えたものの、物価上昇による買い控えにより苦戦したが、原価コントロールや固定資産売却によって営業利益は同約5倍の28億円だった。
海外ワコールは、売上収益が同12.7%増の667億円、営業損益は73億円の赤字(前期は20億円の黒字)。欧州やアジアで主力ブランドが好調に推移したものの、米国では個人消費の減速や生産遅延で実店舗が苦戦し、傘下のインティメイツ・オンラインが不調。中国もゼロコロナ政策の行動制限による来店客数が減少し、ECが不調だった。
ピーチ・ジョン事業の売上収益は同2.3%減の119億円、営業利益は同44.5%減の9億1500万円だった。昨年末で中国子会社の事業活動を終了した。直営店の売上高は前期を上回ったものの、十分なマーケティング効果が得られずECの売上高が前期を割った。
会社創設後初の赤字決算について、4月1日に就任した中核会社ワコールの川西啓介社長は、「危機的な状況だが、会社構造を変えるチャンスだ。モノづくりや材料の選び方、店頭でのオペレーションなどゼロベースで見直したい」と語った。