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連載 小島健輔リポート

ワークマン「神話」に陰り【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。作業服専門店からカジュアル専門店へと華麗な変身を遂げたワークマン。だが、先に発表された2023年3月期は13年ぶりの最終減益となった。この数年、急成長してきた同社だが、曲がり角を迎えているのだろうか。

「#ワークマン女子」の矢継ぎ早の出店やユーチューバーの社外取締役起用など、何かと話題が尽きないワークマンだが、2023年3月期は純利益が13年ぶりの減益となるなど勢いに陰りが見られる。数々のワークマン「神話」もホントなの?と疑いたくなる数字も出てきて、急成長からの転換期を迎えているようだ。

減益・減速から再成長軌道に戻せるのか

ワークマンの23年3月期決算はチェーン全店売上高が1698億5600万円と前期から8.5%伸びてワークマンの営業総収入(FC本部の売上高に相当)も1282億8900万円と10.3%伸びたが、営業利益は241億600万円と10.1%、純利益も166億5600万円と9.0%減少し、純利益は13年ぶりの減益となった。営業利益率は18.8%と前期の23.1%から4.3ポイント、チェーン全店売上高対比の営業利益率も14.2%と前期の17.1%から2.9ポイント低下し、一株当たり純利益も自己資本利益率も総資産利益率も軒並み低下した。

24年3月期予想もチェーン全店売上高、営業総収入とも6.5%増、営業利益6.7%増、純利益5.4%増と巡航軌道の定着をうかがわせるもので、18年9月5日の「ワークマンプラス」1号店(ららぽーと立川立飛)出店以降の急成長(チェーン全店売上高は19年3月期16.7%増、20年3月期31.2%増、21年3月期20.2%増)からは減速を否めない。既存店売上高も22年3月期は1.5%増、23年3月期も2.6%増と急成長期の2ケタ増(19年3月期14.0%増、20年3月期25.7%増、21年3月期14.2%増)からは大きく減速しており、「ワークマン」から「ワークマンプラス」への転換や新規出店、「#ワークマン女子」の出店を加速してもチェーン全店売上高を再び2ケタ成長に戻すのはハードルが高い。加えて、再加速するにはチェーン全店売上高の65.9%まで増えたPB(プライベートブランド)商品の在庫消化という課題を解決する必要がある。

減益・減速には調達コスト増などさまざまな理由があるだろうが、急成長の勢いに乗ってワークマンが発信してきた数々の「神話」に疑念を挟みたくもなる。私が疑念を抱くのは以下の3点だ。

(1)賃料・減価償却負担は5%まで

ワークマンは、直営店はもちろん加盟店(FC)の店舗投資と賃料も負担しているが(大半を占めるAタイプ)常々、賃料・減価償却負担は売上高の5%までと公言してきた。実際、チェーン全店売上高に対する地代家賃・減価償却負担は22年3月期で5.01%、23年3月期でも4.89%と5%ラインをキープしているが、20年3月期の2.14%、21年3月期の2.54%からは急激に上昇している。

22年3月期から賃料・減価償却負担率が跳ね上がったのは「収益認識会計」適用による会計処理の影響が大きく、それを差し引いた(減価償却費の伸びから推計した)賃料・減価償却負担率は22年3月期で2.90%、23年3月期で3.06%と推計されるが、それでも負担率は年々、かなりのペースで上昇しており、20年3月期からは実に43%も肥大している。

それは一般消費者向けの「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」へのシフトに伴い、生活圏のロードサイドからパワーセンターなどのオープンモールや広域SC(ショッピングセンター)、一部はターミナル商業施設にまで出店立地を上っているからで、地代家賃・減価償却負担率が上昇するのは必然だった。立地を上るにつれ平方メートル当たり販売効率も19年3月期の38万6000円から20年3月期48万7000円、21年3月期56万1000円、22年3月期57万2000円、23年3月期59万2000円と急ピッチで上昇していったが、地代家賃・減価償却負担はそれ以上のペースで上昇している。広域SCやターミナル商業施設でも5%ラインは死守すると公言していたが、実際には8〜10%、好物件では10%を超えているのではなかろうか。商業施設関係者へのヒアリングもそれを裏付けている。

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