アパレルの人手不足が深刻化している。コロナによる行動制限が解除され、客足が戻っているにもかかわらず、店舗を回す販売員が満足にそろわず、人操りが厳しい現場が増えている。打開策として賃上げも実施されているが、根本にはアパレル業界の構造的な問題が絡むため、解消するのは容易ではない。(この記事は「WWDJAPAN」5月15日号からの抜粋です)
「WWDJAPAN」は販売員の人手不足の現状を調べるため、主要なアパレル小売企業にアンケートを実施し、30数社から回答を得た(下記図表参照)。
「販売スタッフ(正社員、パート・アルバイト)は足りているか?」の質問に対し、「不足」「とても不足」と答えた企業が8割以上に上った。2020年にコロナ禍に突入してから多くの企業は出店を抑制するとともに、低収益の店舗を整理してきた。また来店客数の減少に伴い、販売員の採用も抑制してきた。ほぼ3年ぶりに平時の店舗運営ができるようになり、来店客も戻ってきたのに、今度は販売員が満足にそろわなくなり「ギリギリの人繰り」「毎日綱渡り」「アルバイトが集まらずにフルタイムの正社員への負担が増加」といった状況を余儀なくされている。
スタッフの離職率をどう抑えるか
これまでも景気などで人手不足に陥るケースが何度もあったが、現在の人手不足はもっと根が深いというのが各社のほぼ一致した声だ。「コロナによる店舗休業や消費低迷を受けて、アパレル業界自体への将来不安が高まってしまった」(総合アパレル)、「労働市場におけるファッション業界への就業意欲が低下している」(ファッションビル系アパレル)といった見方が多い。
かつては服が好きだから働きたいという若者がそれなりのボリュームで存在し、彼ら彼女らが販売員として現場を支えてくれた。長時間労働、不規則な勤務形態、他業種に比べて低収入といった課題を抱えつつも、なんとなく華やかなイメージのあるファッション業界はそれなりに人気だった。
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