REPORT
「むか~しむかし、あるところに」。
2017年春夏の「J.W.アンダーソン」メンズは、こんなフレーズからスタートできそうなくらい、ノスタルジックだった。今シーズンのインスピレーション源は、童話「星の王子さま」。ただコレクションの着想源になったのは、童話そのものよりむしろ、物語に夢中だった幼少期の心のようだ。ネオンカラーに彩られたタートルネックのニットは袖が異様に長く、まだまだ甘えん坊な男の子の内面を表しているようだし、パパやママの洋服をいたずらに着てしまったようなムードがただよっている。チュニック丈のシャツには、キルティングで作ったビブ(よだれかけ)のようなパーツをプラス。曲線にアレンジした襟や裾も、子どもっぽいムードを強めている。
ヘンリーネックのリネンシャツ、コートとシャツの中間のようなトップス、それにボーダー柄のニットにのったモチーフは、まさに子どもの奇想天外で複雑怪奇、けれど、どこか微笑ましい頭の中のイメージのようだ。リネンのシャツには、油性絵の具のような質感で抽象画をハンドペイント。シャツには子どもが大好きなパズルと、晴れた日に登った木の幹、ママのような女性、それにポジティブカラーのチェックが同居し、混沌としていながらもノスタルジックかつハッピーなムード。混沌としているのは、一着の洋服の中に詰め込んだ数々のモチーフのみならず、ワンピースのようなニットにハイウエストのフレアパンツ、ウィメンズのようなショルダーバッグ、そしてテクノなゴーグルタイプのサングラスなど、テイストのミックス感もすさまじい。
「ロエベ」との両立がスタートして以来、自身の名前を冠にしたブランドは、より若々しい方向に舵を切っている。「星の王子さま」を出発点とした今回のコレクションは、ユースマインドをより強く意識するようになった方向転換について、ジョナサン・アンダーソンが引き続き自信を持っていることの表れのようだった。
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