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百貨店「店舗売上高ベスト10」 東京・大阪・名古屋の一番店が過去最高更新、2022年度

主要百貨店の2022年度決算が発表され、各社の店舗売上高が出そろった。コロナによる行動規制が緩和され、国内の消費者だけでなく、秋以降は海外からの訪日客も急回復した。店舗売上高の上位10店舗に限れば、7店舗がコロナ前の19年度実績を上回った。そのうち伊勢丹新宿本店、阪急本店、JR名古屋高島屋の3店舗は過去最高を更新している。

東西の横綱の勢力が拡大する

店舗売上高ベスト10は順位に大きな変動はないものの、上位の有力店舗の強さが際立った。

1位は不動の横綱、伊勢丹新宿本店。前年比29.2%増の3276億円と急伸した。バブル末期の1991年度の3000億円超の記録を31年ぶりに上回った。コロナ前に比べて入店客数は8割程度の水準にとどまるが、一人当たりの客単価が大幅に伸びた結果だ。

21年4月に就任した細谷敏幸社長は、コロナ下で不特定多数の集客力に頼った従来の手法を見直し、識別顧客(カード会員、アプリ会員、外商客など)と深くコミュニケーションするように切り替えた。特に識別顧客の最上位である外商客には手厚いサービスメニューを用意し、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾品、美術品といった高額品の購買に結びつけた。結果、同店の売上高全体に占める識別顧客の割合は20年3月期に約50%だったのに対し、23年3月期は約70%に上昇した。識別顧客の売上高の中で、年間100万円以上を使う人の占める割合は50%に達する。

コロナ前の19年度との比較でも売上高は、実に536億円も上積みされている。外部環境も追い風になった。同じ新宿の小田急百貨店新宿店が昨年10月に本館を閉店し、大幅に規模を縮小した。さらに今年1月には東急百貨店渋谷本店(東急本店)が閉店した。「伊勢丹が小田急と東急の外商客の受け皿になった」と三越伊勢丹の幹部は証言する。電鉄系の小田急と東急はその沿線に多くの富裕層がおり、彼らを外商客として取り込むことに成功した。

10年前に東横線と副都心線の直通運転が始まった際、東急沿線の消費者が渋谷を通過して伊勢丹新宿本店に向かう現象が起きた。副都心線の駅は伊勢丹の足元にある。東急本店が閉店し、伊勢丹はさらに東横線の沿線の商圏を広げた。また、東急本店の近隣には日本屈指の高級住宅街・松濤がある。東急本店の金城湯池だった松濤の外商客も伊勢丹に流れたとみられる。

2位は西の横綱、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)で同30.1%増の2610億円だった。こちらも過去最高だった18年度の2507億円を上回った。好調の理由は伊勢丹新宿本店とほぼ重なる。識別顧客による高額品消費がけん引した。9階の祝祭広場など広いスペースを生かしたユニークな催事も集客に貢献した。

3位の西武池袋本店は同14.8%増の1768億円。コロナ前には届かないものの、やはりラグジュアリーブランドなどの高額品を中心に急回復している。セブン&アイ・ホールディングが子会社そごう・西武を米投資会社フォートレス・インベストメント・グループに売却するにあたり、同店の処遇を巡ってもめている。「ルイ・ヴィトン」などのラグジュアリーブランドが入る1階を含めた低層部に、ヨドバシカメラの大型店を入れるか否かが焦点だ。フォートレスの主張通りヨドバシを入れれば、多くのラグジュアリーブランドが離反する懸念がある。

4位はジェイアール名古屋タカシマヤ(JR名古屋高島屋)で同21.7%増の1724億円。00年の開業以来、過去最高を更新した。同店の売上高には、隣接地に17年開業したショッピングセンター(SC)のタカシマヤゲートタワーモールが含まれる。とはいえ、百貨店単体でも松坂屋名古屋店を上回る名古屋一番店であることは間違いない。昨年からラグジュアリーブランドの売り場を増床し、ファッション感度の高い若い顧客を呼び込むことに成功した。21年に隣の大名古屋ビルデングに開店した高級時計売り場「タカシマヤウォッチメゾン」も売り上げに貢献している。

5位には高島屋日本橋店が同15.3%増の1430億円で入った。コロナ前の19年度を上回った。同店は18年に隣にSCの新館を開業させたが、SCの売上高は含まれていない。今年は開店90周年の節目にあたるため、更なる集客策を図る。高島屋は7位に高島屋大阪店(1319億円)、8位に高島屋横浜店(1319億円)もランクインしている。

二極化が加速 小田急と東急は大幅縮小

日本百貨店協会によると、2022年(1〜12月)の全国百貨店売上高は前年比13.1 %増の4兆9812億円だった。19年との比較では11.1%減。2月期や3月期決算が多い主力百貨店各社とは比較する期間の違いもあって、コロナ前の9掛けの水準となった。地方や郊外立地の百貨店は閉店に拍車がかかり、山形県や徳島県は「百貨店ゼロ」の県になった。また東急本店や小田急百貨店新宿店本館のように親会社である電鉄会社の再開発に伴い、閉店する事例もあった。

一方、コロナ禍には休業要請や外出自粛で最も打撃を受けた大都市の旗艦店は、急速に息を吹き返す。21年後半以降は海外旅行などのイベントを楽しめたくなった富裕層の消費が、ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品、美術品などの高額品に向かった。昨年10月には水際対策が大幅に緩和されため訪日外国人がやって来るようになり、円安で買い物天国になった日本で高額品を買い漁っている。

地元の中間層に支えられた地方・郊外立地の百貨店と、富裕層の顧客基盤を持ち、訪日客の来店も多い大都市立地の百貨店。両者の明暗はコロナ前から存在したが、回復局面でコントラストがいっそう鮮明になった感がある。東京、大阪、名古屋の一番店がそろって過去最高を更新したことが象徴的だ。「冬の時代」と言われて久しい百貨店業界にあって、上位の有力店は「我が世の春」を迎えている。

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