ビームスはこのほど、旗艦店のビームス 六本木ヒルズ店を大規模リニューアルした。ストリートカジュアルをベースにした店舗設計から、ストアコンセプトを“ザ プレミアム”に改め、六本木で暮らす人々に向けた高級感のある店舗へと転換した。同社初の試みとして、商品はレーベルの垣根を越えて横断的に仕入れ・販売する。
リニューアル後の店内は、イエローの大理石で高級感を演出しながら、曲線を描く壁面や木材を随所に取り入れて温かみのある空間に仕上げた。メインエントランスがある2階をウィメンズフロア、3階をオーダーサロン併設のメンズフロアで構成する。
同店は2018年に都内最大級の旗艦店としてオープンした。従来は観光など六本木に遊びに来る層が主だったが、コロナ禍で客足が途絶えたことをきっかけにマーケットのニーズの見直しが進んだ。これまでの顧客層は、40代半ばを中心に男性7割、女性3割だった。リニューアルを主導した諸岡真人担当は、「メンズはドレスレーベルを中心に顧客商売が確立できていた一方で、洋服好きな女性が多いこのマーケットで女性客を取りこぼしていたことも大きな課題だった」と話す。
新たなターゲットは、「六本木を生活圏にしている人」だ。「私自身6年ほど六本木に住んでいるが、この街に暮らす人々はただ高価なものを求めているわけでなく、“良いモノ”を日常に取り入れる生活を楽しんでいる印象だ。六本木の街で生活するお客さまに楽しんでもらえるかどうかという視点を大切に、ファッションが大好きな私たちが考える“良いモノ”を提案していきたい」と話し、若手富裕層から70〜80代の高齢層まで幅広く狙う。
同店では、ドレス・カジュアル・雑貨などの全11レーベルから同店にあう商品を、顧客の好みを知る店舗スタッフが仕入れ、レーベルを横断して販売する。商品配置だけでなく、レーベルごとに計画していた予算も店単位に変更した。諸岡担当は、「今の時代におけるラグジュアリーとは何か、大人とは何かを再考した。例えば、六本木店に訪れる若手富裕層の方々は精神的にとても成熟している。顧客の趣味嗜好が多様化しているなかでファッションの楽しさを伝えることだけを考えれば、お客さまにとってレーベルの壁は必要ないと考えた」と説明する。
現在店頭でのセレクト商品の比率は7割と高い。「セレクトショップ各社では、オリジナル商品の強化が進んでいるなかで時代と逆行している自覚はあるが、同時に勝算も見えている。すでにお客さまからは評価をいただいているし、客単価はリニューアル前の1.8倍になった」と手応えを語る。秋冬シーズン以降、さらに同店の特色を反映した商品ラインアップを強化し、店舗限定のポップアップショップなども企画していくという。