ファッション

「ロエベ財団 クラフトプライズ2023」に稲崎栄利子と渡部萌の日本人女性2人が受賞

ロエベ(LOEWE)」は「ロエベ財団 クラフトプライズ2023」の大賞に、日本人アーティストの稲崎栄利子による「Metanoia」(19年)を選出した。賞金は5万ユーロ(約735万円)。また特別賞には、同じく日本人の渡部萌による「Transfer Surface」(22年)と、ベナン出身のドミニク・ジンクペ(Dominique Zinkpe)による「The Watchers」(22年)がそれぞれ選ばれた。

今年度の「クラフトプライズ」では、モノの本質から熟考し時間をかけたテクニックと、素材を巧みに操る術を探求した作品が選ばれ、候補作の中には思いがけない形や色彩が登場し、見る者に遊び心と驚きを与えているという。

稲崎による複雑な陶磁器を組み合わせた造形物「Metanoia」は、極小のパーツを集積することで結晶化した表面を生み出している。審査員は、「陶磁器でさまざまな要素から相乗効果を生むという、これまでに見たこともないような卓越した技術である」と評価した。稲崎は1972年生まれ、高松市在住。95年に東京・武蔵野美術大学を卒業し、97年に京都市立芸術大学大学院美術研究科の修士課程を修了した。滋賀県にある陶芸の森の「アーティスト・イン・レジデンス」に参加し、個展やグループ展に出展。2017年には、香川県文化芸術選奨を、18年にはタカシマヤ美術賞と第13回パラミタ陶芸大賞の大賞を受賞している。

特別賞を受賞した渡部による「Transfer Surface」は、生け花を想起させるような、胡桃の木の皮でできた箱の作品。東京を拠点に活動する渡部は、東北地方で素材を集め、自然や植物をモチーフにした作品を制作してきた。木工作品の多くは、自ら採集した野生のアケビや胡桃の樹皮から作られており、素材を調達した現地の生活やモノ作りに直接触れることで、自らの想像を交錯させている。組み合わせて編む“編組”という技術を用い、現代的なデザインコンセプトと美学を生み出す。季節の循環に敬意を表した「Transfer Surface」は、樹皮の素材感の素晴らしさと、建築の構造や修理の伝統に着想を得たリベットの使用が評価された。

ベナン・コトヌー在住のジンクペは、インスタレーションやドローイング、絵画、彫刻、ビデオなどさまざまな分野で活動しているアーティスト。今回は彫刻で表現した「The Wathchers」(22年)を出展し受賞した。小さなイベジ(ヨルバ語で双子の意味)の人形を組み合わせた作品で、ヨルバで伝統的に信仰されている子宝を連想させる。審査員は伝統を彫刻で再解釈し、現代のクラフトのあり方を拡張している点を評価した。

「クラフトプライズ2023」の発案者であるジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)「ロエベ」クリエイティブ・ディレクターは、「クラフトはまさに『ロエベ』の神髄。ブランドが追求するのは、その言葉が持つ最も純粋な意味でのクラフトだ。そこにこそ私たちが考えるモダニティーがあり、クラフトは常に私たちとつながっている」とコメントしている。

今回の審査員は、委員長を務める、スペインの大手新聞「エル・パイス(El Pais)」のアナチュ・サバルベアスコア(Anatxu Zabalbeascoa)建築・デザイン特派員を筆頭に、デザインや建築、ジャーナリズム、評論、キュレーションの専門家13人。ニューヨーク・メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)の近代建築・デザイン・装飾美術キュレーター、エイブラハム・トーマス(Abraham Thomas)やロンドンのデザインミュージアム(Design Museum)元館長のディヤン・スジック(Deyan Sudjic)、日本民芸館館長でデザイナーの深澤直人、陶芸家のマグダレーン・オンドゥンド(Magdalene Odundo)ら。また、授与式には評論家のフラン・レボウィッツ(Fran Leibowitz)も参加した。

ファイナリストの作品は6月18日まで、ニューヨークのイグチ美術館(The Noguchi Museum)にあるスタジオで展示されている。また、スタジオの展覧会はオンラインでも閲覧可能。

なお、次回「クラフトプライズ」は6月から作品の応募手続きを開始し、来年はじめに開催地を発表する予定だ。

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