ベイクルーズの杉村茂CEOは今年1月、ルミネの新年賀詞交換会でテナント代表として登壇し、「一生懸命作った商品を、上質な接客でお客さまに提案し、適正な価格で販売していく」といった趣旨のスピーチを数百人の小売り関係者を前に行った。(この記事は「WWDJAPAN」5月15日号からの抜粋です)
杉村CEOは危機感を持っている。1990年代以降、デフレの代表的な業種になってしまったアパレル市場は、度を越した価格訴求や頻繁に行われる値引き販売によって健全とはいえない状態になっていった。低収益構造のしわ寄せは商品を作る人、商品を売る人の待遇にも及ぶ。ファッション業界自体が健全化しなければ、この先、優秀な人材が集まらなくなる。
人手不足に対して賃上げや働き方改革などの対策は不可欠であるが、同時に業界の低収益構造を根本的に改めなければ将来が見通せないというのが杉村CEOの考えだ。商品の供給量をしっかりコントロールし、値引き販売を抑制することがその第一歩だとする。
「価格を決めるのは僕らアパレルの権利である。店頭に商品が並ぶまでには当社のスタッフはもちろん、素材や縫製工場まで含め、多くの人が関わる。販売員はそれを努力して売る。それらの仕事の対価が商品価格だと考えれば、値引きばかりするような状況は働く人たちの対価を削っているのと変わらないことになる。自分たちの従業員を守らなくてはいけない。根本から変えないと、洋服屋は生き残れない」。
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