私たちは決算記事でよく書くんです。増収増益の要因を「ファッション&レザーグッズ部門が好調で」とか、「広告等で得た新規顧客がリピーター化する好循環が奏功し」とか。
でもそれはあくまで“前期に比べて”の話です。なぜ、好調企業が成長を継続できるのか、大きな利益を上げ続けられるのか。売上高の伸長はもちろん、高い利益率を維持するためには、仕組み作りこそが大事です。
5月26日発売の齊藤孝浩ディマンドワークス代表の著書「アパレルゲームチェンジャー」(日経BP 日本経済新聞出版)は、ラグジュアリー帝国のLVMHから、ナンバーワンSPAのインディテックス(INDITEX)、ウルトラファストファッションのシーイン(SHEIN)、会員制のコストコ(COSTCO)、ZOZO、 ワークマンまで、成長を続ける注目企業9社の10のビジネスモデル、つまり儲ける仕組みを徹底解説しています。
この“儲ける仕組み”を押さえているかどうかで、業界やその企業に対する解像度も、日々のニュースの理解度も大きく差が出ます。
「ザラ」(インディテックス)からは需要連動生産のためのサプライチェーンマネジメントとサーキュラーエコノミー、ZOZOからはEC時代の高効率物流、ワークマンからはFC活用のローコストオペレーション、LVMHからはブランド買収によるポートフォリオ経営、コストコからは有料会員制による安定的バリュー提供といったポイントが解説されます。
シーインについては、その売上高予測から、創業のストーリー、優位性、強みを網羅。現地の業界人の見解も押さえながら、課題までまとまっており、こちらも必見です。
また、金融業へと参入する丸井やメルカリ、ラストマイル物流サービスを提供するドアダッシュ(DOORDASH)といった企業の革新的な点、利益を生み出す仕組み、プラットフォーマーとしての進化も示唆に富んでいます。
決算書や財務諸表は、それぞれの項目の意味が分かっていても、その企業のビジネスモデルを理解し、時系列での変遷を見たり、競合他社と比較するなどしないと、分析はできません。そういった数字を齊藤氏がどう読み解いているのか、決算書や財務諸表を読み解くためのポイントも余すところなく明かされています。
特に、本書を読むと貸借対照表(BS)がいかにもうけの仕組みの源泉になっているか、利益を生み出すための基盤がどのようにBSに表れているかは、これからの経営を考えるうえで重要だと実感します。
オススメは、齊藤氏の好評連載「ファッション業界のミカタ」との併読です。「アパレルゲームチェンジャー」で有力企業のビジネスモデルを把握した上で、「ファッション業界のミカタ」で齊藤氏による最新決算の解説を読むと、理解が深まること間違いナシです。
在庫最適化を軸にアパレル企業のコンサルティングを行う齊藤氏のお話や著書からは、いつも業界への愛が感じられます。利益を生み出すビジネスモデルを築くことで、次のビジネスの種をまき、目を育て、育くむことができます。人材にも投資できます。激動の時代を生き抜くためのヒントや刺激が満載のビジネスマン必携の書です。