ファッション
連載 鈴木敏仁のUSリポート

プチプラアクセサリー店「クレアーズ」が新販路を広げる背景【鈴木敏仁USリポート】

アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。今回はアクセサリーショップの「クレアーズ」の現状を取り上げる。同社は2018年に経営破綻が報じられ、20年には日本からも撤退した。現在は再生して、新しいビジネスモデルを築こうとしている。

ティーン向けのアクセサリーを売る専門店チェーンのクレアーズ(CLAIRE’S)が、ホールセールビジネスを強化している。今年初頭に開催されたスーパーマーケット業界団体主催のコンベンションで、幹部が現在の戦略について解説し明らかになった。スーパーマーケット企業を対象として出品もしていたようだ。

クレアーズは2005年に投資企業にバイアウトされて非公開となり、業績悪化で負債が負担となって18年に破綻、そして昨年中に手続きを終了して復活しているのだが、その後すぐに再上場計画を発表している。

投資企業の思惑がよく分からないのだが、負債を整理して財務が健全となり、そして新しい戦略も手応えがあるので、早いところ出口を見つけようということなのだろう。昨年上場計画を発表したがいまだに上場していないのは、おそらく急速な金利の引き上げで金融市場が冷え込んでおり時期を待っているからだと考えている。

その新戦略が、他の小売店舗で売るホールセールビジネス、またはインストアショップ展開である。

スーパーや百貨店でも売る

クレアーズが他社店舗で売る戦略に踏み込んだのは最近のことではなく、私が持っている資料では21年半ばの時点ですでに1万店舗と記されている。契約している北米とヨーロッパに25社、ウォルマート、CVS、アズダ、テスコといった大手が含まれている。私の知る限りではヨーロッパでの展開が先行し、ウォルマートやCVSはこの時点では実験段階だったはずである。

昨年9月に発表されたのがウォルマートでの拡大で、40商圏内の店舗で取り扱っていたものを2倍に増やすと発表されている。具体的な店舗数は明にされていない。

2月の展示会では、スーパーマーケット企業10社と契約し2200店舗で販売していて、過去2年間の間に300%増え、そして今後3ヶ月間に230店舗が加わる予定とコメントしていた。契約企業にはクローガーやアルバートソンズといった大手が含まれている。

また昨年後半にクレアーズと契約したのがメイシーズで、その時点では21店舗へ導入すると発表していた。

興味深いのは各店舗の特性によってディスプレーやアソートメントをカスタマイズすると言っている点にある。レジ周りの小さな陳列からエンドや島陳列といった大きな陳列を用意し、週単位で売上データを分析してカスタマイズに反映させると説明している。

ブランドメーカー並みのビジネスモデルを組み立てていることが分かる。

「モールの外へ」に足並みがそろう

クレアーズは18年の破綻時に原因はモールの集客力の低下にあると説明していた。「モールの集客力が落ちている要因はいくつかあり、ディスカウントストアとの競合、核テナントの撤退、ネット通販の成長、が含まれている」と書いている。7500店舗のほとんどはモール内に立地しているので、モールの集客力は重要だとも記している。

モール内に出店していたセフォラが立地戦略を転換して、モール外に出始めていることは本稿で既に書いた。コミュニティ型ショッピングセンターへの出店と、コールズ店舗内でのインストアショップ展開である。

クレアーズはひとサイズ小さくして売り場単位でモール外に出ていることになるのだが、モールに見切りをつけたという戦略の背景は同じである。

またアルタビューティはターゲットのインストアショップ展開が好調に推移しており、セフォラとコールズも含めて、チェーンストア同士のコラボもトレンドの一つとなっている。知名度のある他企業の集客力を利用する戦略だが、従来とは異なる顧客層の獲得につなげたいという思惑もある。

クレアーズはティーンズを顧客層としているので、若年層の獲得につながることになる。

昨年契約したのが百貨店最大手のメイシーズだが、同社の最大の悩みは中心顧客層だったベビーブーマーの高齢化で、これをいかに下げるかが彼らの命題であり、トイザらスのインストア展開と合わせてその目的がよく分かるだろう。

クレアーズの店舗数は昨年末の時点で、北米とヨーロッパ17カ国に2300店舗強、北米に別ブランドのアイシングを190店舗、そして中東とアフリカにフランチャイジングで数100店舗と発表されている。いまだ4ケタを展開する大きなチェーンストアで知名度もある。新戦略で復活への道筋が見え始めたといったところだろう。

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