軽量な装備を追求する“ウルトラライト(UL)ハイキング”という新しい登山カルチャーが広がり、登山人口の若返りが進んでいる。そんな中で、大手メーカーが作る製品では満足できない個人などの小規模事業者が、文字通り自宅ガレージなどで立ち上げた中小ブランド“ガレージブランド”の存在感が増している。ULハイキングのギアを幅広く取り扱う小売店もあり、そこでしか手に入らない品ぞろえやコミュニティー作りで強いファンを作っている。(この記事は「WWDJAPAN」5月8日号からの抜粋に加筆しています)
中目黒の「バンブーシュート(BANBOO SHOOTS)」は、本格的なマウンテンギアとファッションを織り交ぜた提案がユニークなセレクトショップだ。1998年の店舗オープンからバイヤー、店長を務め、現在のスタイルを築き上げたのが甲斐一彦バンブーシュートディレクター。ここ数年ほどの間で、来店客のULハイクに対する関心の高まりを感じているという。
ディレクターはもともと古着畑
「どうせなら山に登るか」でいい
品ぞろえの半分は、「山と道」をはじめ本格的なULハイクギア。特に甲斐氏の思い入れがあるのが米ユタ州ローガンに本拠地を構えるブランドが「ULA」。自らアトリエを訪ね、モノ作りに惚れ込んだ。「大手アウトドアメーカーもULギアに力を入れ始めた。僕らはその分、他では手に入らないモノ、語れるモノをそろえることが大事になる」。残りの半分を占めるのがオリジナルブランド「バンブーシュート」のアパレルやバッグなど。マウンテンギアで用いられる機能素材や合理的なデザインを抽出し、「自分たちが常に着ていたい、使いたい」と思える商品を作っている。
オリジナルブランドとULギアを組み合わせた提案は、ファッション好きの目にも新鮮に映る。登山経験のない男女の入店も多い。「大事なのは、お客さまがどこに面白みを感じるか」だと甲斐氏。「それがギアの見た目のかっこよさであってもいい。そもそも僕自身、元々は古着畑のキャリアだが、ULギアの素材や縫製の奥深さにハマった人間。店を始めてから、ようやく山に登るようになった(笑)。『いいザックを買ったし、どうせなら山に登ってみるか』とか、『荷物が軽いと登山って楽しいね』とか。まずはそのくらいのテンションでULに触れてもらえたらいいと思っている」。