ファッション

「RTFKT」共同創始者ブノワ・パゴットに聞く、Web3.0時代にイノベーションを起こすためのルール

2020年のスタート以来、デジタル領域を基点とした製品や体験を世に送り出してきたのが、NFTブランド「アーティファクト(以下、RTFKT)」だ。これまでに「リモワ(RIMOWA)」や「バイレード(BYREDO)」、ジェフ・ステイプル(Jeff Staple)、村上隆などとコラボレーションを果たし、その存在感を知らしめた。

中でも「クローン X(CLONE X)」は「RTFKT」を代表する人気プロジェクトで、アバターを主体としているのが特徴だ。海外セレブリティーにもファンが多く、一時はジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)も保有していた。最近ではスニーカーNFT“RTFKT x Nike Air Force 1”を発売し、期間中に参加することでフィジカルスニーカーが入手できるフォージングイベントも開催。バスケットボール選手のレブロン・ジェームズ(LeBron James)が着用したことでも注目された。

ホルダーならではのコミュニティー体験ができるのも、「クローン X」が支持される理由の1つだろう。SNS上のコミュニケーションにとどまらず、昨年末に渋谷でホルダー向けの有志イベント「クローン X トーキョー(Clone X Tokyo)」が開催されたように、世界中でコミュニティーイベントが実施されている。

21年にナイキによる買収を受け、NFTブランドからファッションブランドへの道のりを着実に進んでいる「RTFKT」は、まさにファッション業界でイノベーションを起こし続ける期待の新星と呼べるだろう。4月29日、共同創始者の1人、ブノワ・パゴット(Benoit Pagotto)に取材することができた。

「RTFKT」の組織編成と人気プロジェクト「クローン X」

WWD:「RTFKT」について、人々はクリエイター集団と思っていたり、ブランドだと思っていたりするが、あなたは何と定義する?

ブノワ・パゴット(以下、ブノワ):私たちは、何よりもまずブランドです。でも私たちが「RTFKT」を作ったとき、全く新しいブループリントを作る必要があると考えていました。従来のブランドのあり方を超えた、新しいタイプのブランドーー常に境界線がなく、人々を刺激し、革新できるブランドでありたいと思っています。だからこそ、私たちが行うすべてのことは、最もクリエイティブで、革新的でなければいけません。

なので、私たちはわざとCEOがいない構造を作っています。たとえ私が多くの仕事をこなしていても、CEOになることはありません。「RTFKT」をクリエイターの集団にしたかったから、ピラミッド型の組織には反対しているのです。プロジェクトマネジャーも、ファイナンシャルアドバイザーも、何もいない。ただクリエイティブな人たちだけが、自分たちができる最もクールなことをやっているのが理想で、それを形にしたのが「RTFKT」というブランドです。私たちがやることには境界がないので、他のブランドがスニーカーやバッグを作ったりするように、アバターだけではなくアパレルも作れます。なので、人々にとって「『RTFKT』はクリエイティブスタジオだ」とか「アート集団だ」とか、「いや、ブランドだ」とか、理解が難しいのも仕方がありません。

WWD:「RTFKT」がブランドということは、「クローン X(CLONE X)」はプロジェクト?

ブノワ:そうですね。「クローン X」は1つのプロジェクトであり、商品。平たく言えばIP(知的財産)です。「クローン X」を作ったのは、私がもともとファッション業界の出身だったから。ファッション業界にいる中で私が好きではなかったのが“ファッションブランド=製品を作る”ということです。バッグや服、アクセサリーなど、あらゆるものを作る。そしてトレンドに合わせて広告塔を探し、常にモデルを変えていきます。だから、新しく登場したホットなモデルや文化的にビッグな人が現れれば他社と競争して、いち早く手に入れようとします。そのように、ブランドが主体となってモデルを集め、彼らを消費していくのはおかしいと感じていました。

「RTFKT」の根幹は次世代のファッションブランドであること。そしてこれからのファッションブランドは、自分たちでモデルを作ることができるんじゃないかと思いました。そこで「クローン X」を手に入れたコレクターには、商業的権利と知的財産権を与え、彼ら自身がクローンとしてモデルになり、ブランドを紹介し、マーケティングすることができる仕組みを生んだのです。だから「クローンX」は商品カテゴリーであり、IPでもあるということ。アバターという形で国境を越えた、文化的なプロジェクトなのです。村上隆とのコラボレーションも行いました。

このように私たちが考えるファッションブランドの新しい手法は、従来のブランドとは異なる全く新たなカテゴリーなんです。特定のトレンドに乗り、できるだけ早く有名になるのではなく、オリジナルを作り、自分たちのコミュニティーから有名人が生まれることを望んでいます。

NFTが実現するWeb3.0ビジネス

WWD:もしNFTがなかった場合、「RTFKT」はどんな取り組みを行なっていたと思う?

ブノワ:もしNFTがなかったとしたら、近未来的なストリートウェアブランドや、ゲームのプログラムなどを作っていたかもしれません。デジタルビジネスで同じようなことをしていたでしょうね。

NFTの最も素晴らしい点は、デジタルアイテムのビジネスを迅速に行うことができるということです。NFTが生まれる以前、eスポーツの世界で仕事をしたことがありました。eスポーツのファンたちはほとんどの時間をゲーム内で過ごすので、スタジアムでフィジカルなTシャツを着るだけでなく、ゲーム内でもブランドをアピールしたいんです。eスポーツの事業を進める中で、他の共同創業者の2人にも出会いました。クリスはもともと、ゲーム”カウンターストライク(Conter Strike)”のスキン(アバターに着せる服)のデザイナーで、スティーブンはゲームとスニーカーにとても詳しいのです。
ただeゲームにおける事業では、フラストレーションを抱えることが多かったです。まずパブリッシャーとの半年から9カ月に及ぶ交渉が必要で、その後やっとスキンを作ったのに、最終的にはただアイテムにロゴを載せるだけの結果になってしまった。これだけ時間をかけても、自分が望むデザインを作ることすらできなかったのです。

時が経ち、2018年にNFTの存在を知りました。この時「ゲーム会社の許可を得ることなくデジタルアイテムを販売できるのでは」とひらめいたのです。通常、ファッションブランドを立ち上げるとなれば、コレクションをデザインし、メーカーを探し、販路を利用する必要がありますが、NFTがあれば、デジタル上でのファッションならデザインの作成や実装、販売までを1日で行うことができます。つまり、アイデアから製品になるまでが、よりオーガニックでスピーディーなのです。

10代の若者から多くのブランドやクリエイションが生まれている今の時代。このテクノロジーのおかげでクリエイションの幅がさらに広がり、さらにAIと組み合わさって、とんでもないことが起こると思います。氷山の下には才能あふれる若者がたくさんいて、きっと私たちのように独自のコミュニティーを立ち上げるでしょう。彼らは3Dの使い方を知っていますし、ユーチューブでスマートコントラクトの仕組みを学ぶこともできるので、あっという間に既存ブランドとのギャップを埋めていく。よりスピーディーに、革命的なことが起きるはずです。

WWD:香りや味覚など、デジタルで伝わりにくいものをNFTとしてどのように提供していく?

ブノワ:そうですね。私たちは、香水でも飛行機でも船でも、未来的で感動的なものであれば、どんなものでもリリースできるようにしたい。「RTFKT」はそのようにあるべきだと思います。

特に香水はラグジュアリーブランドにとってキープロダクトです。なぜならバッグを買えない人でも香水は買いやすいし、香りを嗅ぐといった体験も得られます。もし香りをNFTで伝えるなら、アルケミー(錬金術)にヒントを得るのが良いでしょう。まずコレクターがNFTでデジタル材料を売って、それを混ぜると本物の香りになる、という仕組み。こうすることで、NFTを購入した人に共同創作の感覚を持たせることーーつまり自分たちが参加していると感じられる体験を与えることができるのです。このアイデアは、実は私が大ファンである「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」にインスピレーションを受けています。多くのアイデアは、私たちが愛するビデオゲームや映画などから生まれたものなのです。

「RTFKT」のコミュニティーマネジメントとクリエイター

WWD:ファッションブランドにおける新たな手法として、「RTFKT」のコミュニティーマネジメントは特徴的だ。コミュニティーマネジメントに望ましい人材とは?

ブノワ:そうですね。NFTの世界の特徴の一つとして“顧客が購入品を所有するだけではなく、コミュニティーを形成する”ということが挙げられます。一般的なブランドではカスタマーサービスマネージャーがいて、それぞれの顧客が求めるサービスを管理しクレームに対応しますね。私たちの場合はコレクターがコミュニティーを作っているので、それらを管理することはVIP対応のようなものです。だからこそ、今後はコミュニティーマネジャーとして、高級ホテルなどホスピタリティー分野から来た人を雇おうとしています。特に、オフラインでは人々を歓迎する方法がたくさんありますが、オンラインでの場合、どうすれば歓迎される人に特別感を感じてもらえるのか考えなければいけない。これは私が話しているコミュニティーマネジメントのホスピタリティーに通じるもので、重要なことです。そして将来的には、ホスピタリティーとオタク文化、ディスコード、コミュニティーを組み合わせ、組織化する方法を提案していきたいと思っています。

1番の理想は、コミュニティーの中から人材を見つけることだと思います。コミュニティーマネジャーには適切な人材を見つけたら、次はその人自身の能力の枠から飛び出し、さらに力をつけてやってみよう、と新たな挑戦をしやすい環境を作ってほしい。“アマチュアとプロフェッショナルの隙間を埋める”ということだから、そのバランスを保つのはとても難しいと思います。

WWD:先進的な才能を発見するために意識していることは?

ブノワ:コミュニティーから生まれた最たる才能を組み合わせることです。新たな才能を見つけるには、それぞれの才能を組み合わせる必要があります。そしてどうやってプロをアマチュアから学ばせ、アマチュアがプロからどう学ぶかを考えなければいけません。

例えば3Dチームでは、年配の人たちと、18歳の若者を一緒に働かせます。先輩は技術的なことや課題解決、ノウハウについてよく知っていますが、デジタル領域で最近何が起きているかを理解していません。逆に若者たちは最新の情報やトレンド、インターネット文化を先輩に教えることができます。

そして今度は、コミュニティー内でこれを行う方法を見つけなければいけません。ギャップマネジメントやカスタマーサービスなど、役職経験を持ちながらオープンマインドな先輩と、コミュニティーの優秀な人材を共に働かせて、互いに学び合うようにするにはどうすれば良いのか考える必要があります。

私たちの周りには非常に優秀な人材が多くいますが、あえて彼らを雇わないこともあります。大企業から大物を雇おうとして本来の企業文化が崩壊してしまうことは、スタートアップの企業に起こりがちな失敗例です。マネジメントのそもそもの課題とは“どのようにチームを形成するか”ということ。だから、技術に優れた経験を積んでいる人材と、若くて斬新なセンスを持った人材を探して、組み合わせる必要があると考えています。

「RTFKT」の企業文化として、クリエイターに多くの自由を与え、それぞれがとても積極的であることが大切です。自由で積極的な人々のマネジメントは難しく、新しいことなので、最初からうまくいくとは思っていません。コミュニティーマネジメントを構築する過程では、完璧な公式は存在しないのです。

将来的には、もともとコレクターだった人材がコミュニティーマネジメントとしての新たなブループリントを切り開くことが理想です。刺激的なインターネットの世界において、オンライン・ホスピタリティーとは一体何かーーコレクター経験があるからこそ理解できることと、新しいアイデアを組み合わせることで、さらに突き抜けたスタイルになるでしょう。そしてそれはきっと、新たな雇用を生み出す循環となるはずです。

WWD:それぞれのクリエイターはどのように見つけ、雇用している?

ブノワ:シンプルに言うなら、才能を見つけてDMを送っています。良いアーティストを見つけるのに時間を費やすのが大好きなので、常にたくさんの素晴らしいアーティストをフォローしています。日本には素晴らしいAR(拡張現実)アーティストがたくさんいて、世界でもトップクラスの才能が眠っています。そして、「RTFKT」の日本人メンバーであるアサギのことは、実は彼を雇う1年くらい前からすでにフォローしていたのです。

WWD:「RTFKT」は「クローン X」以外にも多くのプロジェクトを持っている。異なるコミュニティー間で相乗効果を発揮しているのか?

ブノワ:はい、すべてが何らかの形で相互接続されることが目標です。私たちはそれをエコシステムと呼んでいますが、「クローンX」を中心にシューズやアパレルなどのアクセサリーをそろえています。究極の回答があるとは言えませんが、すべてがつながるようにしたいので、1歩ずつ学びながら進めたいと考えています。

私たちのビジネスは、アートやファッション、コレクターズアイテム、そしてテクノロジーをミックスしたもの。私たちが行うすべてのことの主な使命は、イノベーションです。 これまでのファッションブランドには四季があり、そのシーズンが終わるごとに商品が捨てられて、ただ単にPRのために服を作っているように感じました。私たちが「RTFKT」を作ったのは、クールなイノベーションが起きず、長期的に刷新し続けない業界全般に嫌気がさしたから。僕たちは100年後にも「かっこいい」「革命的だ」と思ってもらえるようなものを作りたい。クールだと思ったものをただやるだけです。「RTFKT」は私にとって、10代の時に持っていた夢をもう1度思いさせてくれる、とてもワクワクするもの。だからこそ、最終的な目標は新しい世代にインスピレーションを与えることなのです。

「ナイキ」とのコラボレーションについて

WWD:「RTFKT」の取り組みは非常にスピーディーで先鋭的だと感じるが、ナイキに買収された意義とは?

ブノワ:「RTFKT」が影響を与えることができるのは数十万人程度ですが、「ナイキ(NIKE)」は約1億人に向けて発信することができますからね。フランク・オーシャン(Frank Ocean)が「Nikes」という曲を作ったり、誰もが一度は「ナイキ」を履くように、「ナイキ」は世界で最もクールなブランドの1つだと思います。逆に私たちは、ナイキにツールや技術を提供して彼らを助けることができる。だからこのコラボレーションはとても素晴らしいものです。

しかしナイキほどの規模になると、全て巨大なスケールで取り組む必要があります。身軽に動きにくくなるため、普通であればイノベーションを起こすことが難しくなるでしょう。だから私たちは自分たちのことを、ミレニアム・ファルコン(「スター・ウォーズ」に登場する架空の宇宙船)のようなものだといつも冗談を言っています(笑)。多角的な部分からインスピレーションを受けながら、最終的には独自の道を切り開いていくわけです。探索し、境界を破り、革新するーーそのために今、ここにいる。ナイキと協力することで、私たちが行っていることをより大きなスケールで展開できるか、確かめることができるのです。

とはいえ、私たちも失敗をすることがあります。しかし重要なのは「失敗をいかに自分のモチベーションやビジネスの妨げにしないか」、そして「いかに早くその失敗から学び、二度と同じことを繰り返さないか」です。今私たちが生きているのは、10年、20年に1度の特別な瞬間。時には失敗することがあるかもしれないけど、それを最大限に生かしたいのです。

2020年1月に作った「RTFKT」が、2021年12月にナイキに買収されました。彼らが私たちを買収したのは、今までに私たちのような集団を見たことがないからだと思っています。だから私たちは、「RTFKT」として思う正しいことを実行し、リーダーシップを発揮し続けなければならない立場なのです。ナイキという素晴らしい車に乗って、可能な限りクールなことをやり続けたいと思います。

WWD:「ナイキ」以外で尊敬するブランドを挙げるとしたら?

ブノワ:「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」の大ファンです。彼らの取り組みや雇っている人材は従来のブランドと比較し、とても新鮮だと思います。ファッションやブランドに対するコンセプチュアルなアプローチが好きです。マルタンがブランドを去ったのはずいぶん前のことですが、現在の方向性もとても気に入っています。

また、ブランドではないのですが、私が尊敬している人の1人にコジマプロダクションの小島秀夫がいます。彼はコナミを退社し、独立後にゲーム“デス・ストランディング(DEATH STRANDING)”を手がけました。私は彼のフィギュアやTシャツを買ったりしていますし、ファッションブランドと同じような価値があると思います。

日本は文化とテクノロジーを融合するのに適している

WWD:日本文化のファンだと聞いたが、どのようなきっかけで?

ブノワ:私の母国・フランスの主要なテレビ局では昔、「ドラゴンボールZ」や「北斗の拳」を放送していて、みんな日本のアニメを観て育ちました。映画も人気で、北野武監督もフランスではとても有名です。加えて、多くの日本のマンガがフランス語で翻訳されています。私の場合は父がマンガを買ってきてくれたのがきっかけで日本のアニメ文化の大ファンになり、今でもその影響を大きく受けていると思います。

WWD:「RTFKT」は日本の文化と相性が良いと感じるが、他に期待している国は?

ブノワ:まず日本は芸術の国でありながら、オタク文化がある。パーフェクトです。僕自身も昨年、日本人アーティストのNFTをたくさん買いました。日本人だけが発明できるクレイジーなものが生まれることがあるし、この先もずっとそうであってほしいと思っています。

そしてもう1つ、韓国です。なぜかというと、まずは技術第一なところ。そして韓国は、エンターテインメントで世界にインパクトを与えることができた国。ファッション分野では、現在のブランドアンバサダーは韓国がナンバーワンです。この2つの国は、文化とテクノロジーをミックスするのに適していて、ブランドが影響力を発揮できる良い場所だと思います。

Web3.0時代にイノベーションを起こすために大切なこと

WWD:「RTFKT」と並ぶ2台巨頭として、プロジェクト“クリプトパンクス”や“ベイク”を擁する「ユガラボ(YUGA LABS)」が挙げられるが、ライバルのように感じている?今後コラボする可能性は?

ブノワ:あんなに大規模なのに、ライバルのように見ていると思いますか?(笑)というか実際、本当に仲が良いのです。ファウンダーのゴードン・ゴナー(Gordon Goner)とグレッグ・ソラーノ(Greg Solano)は、昔からディスコードで話したり、アドバイスし合ったりしていた良い友達です。彼らのやっていることはとても野心的だと思うし、「ベイク(BOARD APE YACHT CLUB、以下BAYC)」も最高です。公式な計画は何もないけれどお互いのことをよく理解しているし、尊敬し合っている。だから、将来的にはコラボレーションする可能性もあるかもしれません。

ただ、彼らはNFT文化としてのリーダーであり、NFTの申し子でもあるので、大変なこともあるでしょう。というのもNFTが嫌われたり、逆に好まれるようになったことで、さまざまな意見が生まれます。それらの意見は彼らにストレートに向かっていくことになるでしょう。そんな中で、とても型破りでありながら、誰かがやらなければならないことをやっているーー自分の情熱で何かを作り、何か違うことをしようと挑戦しているのです。だから、私は彼らがやることを支持するし、今後もファンであると思います。

WWD:デジタルファッションにおけるLVMHだとも言われているが、「RTFKT」がここまで成長してきた理由についてどう捉えている?

ブノワ:LVMHは企業同士の合併や買収によって発達したコングロマリットで、たくさんのブランドを持っていますね。私たちはどちらかというと、Web3.0における「シュプリーム(SUPREME)」と呼んだほうが正しいかもしれません。彼らの身軽さや自由さが私たちに似ていると思います。

しかし、LVMHは本当に素敵なグループです。彼らはクリエイティブディレクターとCEOが二人三脚になり仕事をするので、クリエイティビティーとビジネスがうまく融合しています。そして伝統的な職人技を大切にしながら利益を生み出している。彼らのように、僕たちは3DやAIを駆使して、未来の職人技を打ち出していきたいと考えています。

WWD:Web3.0でイノベーションを起こすために、他ブランドにアドバイスするとしたら?

ブノワ:ブランドにアドバイスをすることはいつも同じーーそれは適切なチームを編成すること、そしてそのチームは映画「プレデター(Predator)」の“コマンドー”みたいに独立していなければいけない。つまり、本来ブランドが持っている中枢業務とは分離しているチームが必要なのです。なぜなら、何かイノベーションを起こしたいと考えた時に、時代に合わせてスピーディーに、臨機応変に動いていかなければいけません。ブランドの軸となるビジネスと関わりを持っていたら、彼らは四半期報告書という通常の業務に縛られ、自由に動けなくなってしまう。移り変わりの早い今の時代ではなおさら、その必要があります。

私たちが行っているのは、テクノロジーと文化の組み合わせ。人々が求めるものをフィジカルからデジタルへと移行させるという大きな変革で、従来のビジネスを完全に変えるでしょう。10年後には、今のブランドのビジネスの50%以上がデジタルに移行する可能性があります。だから企業は「その時のための準備ができているのか」「どのように準備すればいいのか」と確認し、備えなければいけません。だからこそ、今雇うべきは未来を見ている人材。そして私たちは、5年後も彼らが働きたいと思える会社でなければいけないと考えています。

WWD:多くのNFTブランドにはロードマップがあるが、「RTFKT」もロードマップを公開する予定はある?

ブノワ:私たちにビジョンやマイルストーン(中間目標)はありますが、ロードマップを持ち、公表することはないでしょう。ロードマップを持つことは、2022年のNFTのマーケティングスタイルだと思っています。本当に重要なのは、日々、自分たちのビジョンに向かってアクションしているかどうかです。「RTFKT」の冒険に賛成してくれる人たちが未来にワクワクし、自分たちのスタイルを形成し合い、それが退屈にならないような構造にするのが大切です。市場の変化が速すぎて、みんな焦ってしまいがちですが、だからこそ会社として、チームとして、1歩引いて考えてみる必要があります。毎日何か新しいことが起きていても、本当に重要なのは長期的なイノベーション。「10年後にどう認識されているか」ということを考えるべきです。

TRANSLATION:DANIEL YAHOLA WILSON

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