「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が5月24日(現地時間)、イタリアで2024年クルーズ・コレクションを発表した。会場は、イタリア北部のマッジョーレ湖に浮かぶイゾラ・ベッラ島。イタリアにおけるバロック建築の最高峰とされるボッロメオ宮殿が、庭園と共にマッジョーレ湖面に浮かぶ空間だ。
ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は、そんな夢のような空間にふさわしいドリーミーなコレクションを作り上げた。新たなシルエットやスタイル、シャープなカッティングで探求し続けたモードに今回、バロック調の貴族的なテイストやパステルカラーの可憐なムードを加え、神秘的なコレクションにまとめた。
序盤は、全面プリントが印象的なネオプレンのウエアやセットアップだ。ニコラは、「この湖にまつわる神秘的なストーリーに興味を持った。ファーストルックのモデルが表現したのは、湖から島に上がり、周囲を探索する妖精のようなムード。ドラゴンの翼を持つ、人魚のような、美しい生き物を想像したんだ」と話す。ウエットスーツに用いるネオプレンは、セカンドスキンのようにぴったりフィット。その裾には、これがドラゴンの翼なのだろう。ペプラムのようなフリルをあしらったり、背面にはスワローテイル加えたりで神秘的でありながら、ボッロメオ宮殿にもふさわしい貴族的なムードを高める。ショートパンツやヒップハングのミニスカートに合わせるのは、ハイテクスニーカーだ。
秋冬と春夏の間に発売するクルーズコレクションは元来、ブランドのエッセンスを散りばめつつも日常使いできるシンプリシティが魅力だ。特に元来のクルーズ・コレクションは、富裕層が文字通りクルーズ船に乗ってバカンスに出かける時にまとっていたコレクション。ストレスフリーな着心地は欠かせない。序盤のネオプレンも、そんなクルーズならではの特性から生まれたアイデアだろう。これに続いたのは、スモックのようなレザーのミニドレスや、ビンテージ調のチュールで作ったパンツを被せたジャンプスーツ、ネオプレンで作ったスイムスーツやボディスーツなど。ここには、たっぷりの布地を使った着脱式の袖やケープ、アコーディオンのような骨組みの袖が特徴のコートなどを合わせてデカダン(貴族的ながらも退廃的)なムード漂わせた。
中盤以降は、大小さまざまなスパンコールを全面にあしらったスカート、曲線のヘムラインが特徴のジャケットなど。そして、造形に注力した後半へと突入する。後半の幕開けは、ラテックスのような生地とシルクサテンを組み合わせたベアトップのドレス。胸元に用いたラテックス風の生地にはプリーツを寄せた。ここからはフレアシルエットのスカート、バナナのような曲線を描く袖のコンパクトジャケット、フリルが縦横無尽に走るドレスなど、ニコラ得意とする独特のシルエットの探索が始まる。足元はコンバットブーツに変わった。そしてボレロ風のジャケットや、ショートパンツ、コンパクトなジャケットに合わせるロングジレなどには繊細かつ圧倒的な刺しゅう。パネル状のレザーやタペストリー風の生地を組み合わせた鎧のようなジャケットなどは、中世のムードだ。
フィナーレは、裾にワイヤーを入れて花弁のようなフォルムにしたドレスを連打した。チュールやサテンなどの生地は、渦のように体をなぞり、誇張したスリーブが夢の世界を思わせる。その姿は、湖畔に生息する貝のヒダや、海洋生物の揺らぎのよう。実用性と夢が融合したコレクションが完成した。