Z世代の美容意識に迫る第3弾は、近年注目が高まる「メンズスキンケアケア」にフォーカスする。20代男性のスキンケア習慣や肌意識を探るために、美容やファッションへの関心度に差がある、異なるバックグラウンドの男性に取材を実施。彼らのリアルな声を元に、昭和・平成世代とは一線を画する「スキンケア意識」を深掘りする。
スキンケア開始は中学時代から
「ニキビ経験」が1つの分岐点
今回取材に協力していただいたのは、一般企業の営業職のウタさん(23歳・学生時代は特別ファッションや美容に関心なし)、一般企業のリサーチ部門に所属する二郎さん(23歳・学生時代はファッションサークルで活動)、服飾系の大学に在籍中のヒデキさん(22歳・ファッションにも美容にも関心が高い)の3人である。まずは、普段スキンケアをしているか聞いてみた。
ウタ:顔を洗うくらいで、特に何もしていません。特に肌トラブルなど問題がないので……。
ヒデキ:僕は毎日、化粧水と乳液で保湿して、時々パックをします。肌がとても敏感で物心ついた頃から保湿をメインに習慣にしていましたが、中学生時代、ニキビに悩んでから自発的にスキンケアを始めました。
二郎:僕も中学生から試行錯誤を始めました。ニキビがひどく、頬は乾燥する混合肌で、一時はヒデキ君のようにフルアイテム派でした。今は洗顔と保湿のシンプルケアに落ち着いています。
過去に肌悩みを経験した2人はスキンケア意識が高く、きっかけは共に「思春期のニキビ」(ちなみに、ウタさんはニキビ経験なし)。思春期の経験が、その後のスキンケア行動を左右するように感じたけれど、同世代の男性たちはどうだろうか。周囲にスキンケアしている男性がいるか聞いてみると……?
ウタ:ちょいちょい、いますね。肌感覚では3割くらい?
二郎:僕のまわりは半々くらいかな。ニキビや乾燥肌の人はみんな、なにがしかやってるけれど、肌悩みがないとやらない印象。
ヒデキ:実際、スキンケアしているかどうかは別にして、僕の周囲は「肌のことを気にしてない人はいない」という印象です。
あくまで彼らの感覚に基づいた話ではあるが、Z世代の男性は他の世代に比べて「自身の肌への関心」が高いように思える。少なくとも、思春期の肌悩みを一時的なものとしてやり過ごさず、その後のスキンケア習慣につながっているのがこの世代の傾向ではないだろうか。
相談相手は“女性の友達や家族”
情報収集にはSNSも手堅く活用
スキンケア習慣のある2人に詳しく、過去と現在のお手入れ法を聞くと、洗顔から保湿まで正しい手順を踏んでおり「私が20代の頃よりよっぽど丁寧!?」と驚いた。一体どこからこのような知識を得ているのだろうか?
二郎:僕は姉に相談することが多いですね。
ヒデキ:女性のほうが圧倒的に情報を持っているので、相談相手は姉や女友達です。
ウタ:彼女が敏感肌で悩んでいて時々、洗顔や保湿のアドバイスを受けることがあります。
男性の側から女性に対して、気兼ねなく肌悩みを相談できる環境がうかがえる。そして女性の側も男友達との肌トークを「当たり前のこと」としてとらえているようだ。
ヒデキ:もちろん情報収集には、男性のインスタやユーチューブも参考にします。
二郎:僕は男性と女性両方見るかな。「ニキビ」とか「混合肌」で検索して、ヒットしたものをチェックしています。
ヒデキ:まずは肌悩み優先で、使った感想を見て、良さそうだったら試してみる感じ。
「メンズ専用」コスメは信用しない。
重要なのは、世界観より「どう効くか」
女性が美容情報をリサーチする場合、「ブランド」や「バズっている」ことが、判断基準の1つになることもある。しかし男性の場合(ことスキンケアに関しては)実利重視のようだ。
二郎:ブランド買いとかは全くないですね。レビューを見ます。
ウタ:僕も何か買う場合必ずレビューは見るので、美容系で探すとしたら同じことをすると思います。
二郎:見た目がダサくても「効く」ならそっちのほうがいい。逆に「メンズ専用」をうたっていると、あえて避けたりします。
ヒデキ:それ、めっちゃ分かる。
最後の2人の発言は、衝撃だった。近年、男性の肌や嗜好性を丹念にリサーチしたスキンケアがたくさん登場しているが、それらを「あえて避ける」理由とは何だろう?
二郎:メンズ用は、僕の肌には刺激がある。あとは販売戦略なのか、容量は同じなのに女性用より高めなものが多い。だとしたら、女性用を買うほうが堅実。
ヒデキ:まったく同意見。男性用によくある「スッとした感触」とか「爽快な香り」とか、僕の肌には合わなかった。男性専用といわれると、逆に警戒してしまう。
ウタ:僕は詳しくないので、メンズ専用といわれたらそっちを買っちゃいそう。ただ、2人が言う「強すぎる」というのは共感します。
「男性は皮脂分泌量が多く、さっぱりした感触を好む」「香りもフローラルより爽快系がいい」、これらは決して間違いではないと思う。しかし、ニキビや敏感といった肌悩みに「10代から真摯に向き合ってきた」Z世代には、画一的な男性像は響かないのだ。本質的に肌悩みを解決するものを求める彼らに「どんなスキンケアがあったら理想か」聞いてみた。
二郎:僕は過去に色々試したので、シンプルに完結するものがいい。究極はそこです。
ウタ:僕は経験がないからこそ、複数のステップがあると無理ってなる。1本で80点くらい取れるものがありがたい。
ヒデキ:ビタミンCに信頼感があるので、ビタミンC配合の優れたメンズコスメがあるなら、ぜひ試してみたい。
彼らがこれまでに使ってきたアイテムを参考に、若い男性に多い肌悩みであるニキビに対応し、同時に肌へのやさしさも視野に入れていること。さらにエントリーしやすく多機能という視点で、ジェンダーレスなローションを選んでみた。
昭和・平成世代との決定的な差は
「清潔感」のとらえ方
Z世代の話しを聞いて強く感じたのは、他の世代に比べて「肌が美しいことへの肯定感」が高いことだ。その象徴ともいえるのが、取材中頻繁に出てきた「清潔感」という言葉である。
ウタ:漠然とですが、今後スキンケアしたほうがいいかなという思いがあります。理由は、ちゃんとやってる人は男女問わず、清潔感があるから。
二郎:分かる。上の世代の方たちがいう清潔感って、結局のところ短髪で、白シャツで……というイメージじゃないですか。
ウタ:センタープレスのパンツ履いてタックインして、みたいな。僕らの世代は、こなれ感のある古着だったとしても、髪や髭がきちんと整っていたり、肌がキレイだったら、清潔感があると感じます。
ヒデキ:肌と髪は大事だよね。だから、気にしない人はいないと思う。
髪の長短やピアスのありなし関係なく「肌がキレイであれば、清潔感がある」という言葉に、「なるほどなあ」と深く頷くばかりだった。これまでも清潔感は男性の身だしなみを語る上で、頻繁に使われてきたワードである。しかし、昭和・平成世代が語る清潔感と、Z世代のそれは明らかに一線を画し、Z世代においては清潔感=肌と深く結びついているのが印象的だった。
今回の取材を通して、今後メンズコスメの市場が拡大していくのは、ほぼ間違いないように思う。その一方で自身のメンズケアの常識や情報発信の方向性について「根本的に考え方を変えないといけないな」と考えさせられた取材でもあった。次回はZ世代男性の大多数が関心を抱く「脱毛事情」について深掘りしたい。