ヘアサロン「タヤ(TAYA)」を運営する田谷は4月、日本初となる3人の外国人美容師(中国人2人・韓国人1人)を採用した。3人は国内の美容学校を卒業後、日本での美容師免許を取得。4月から池袋、吉祥寺、銀座それぞれのサロンに配属され、接客に携わっている。
「外国人の美容師を雇用したい、という希望は数十年前からあった。しかし、国内の美容師の雇用を守るための制度があり、外国人は日本の美容専門学校で学び、国家試験を受けることはできるが、合格しても日本の美容室で働くことはできない。そのため自分の国に帰り、そこで働くのが一般的だった。しかし昨年10月から、“国家戦略特区”の外国人美容師育成事業がスタートし、今年4月から東京都に限り、外国人の就労が可能に(5年間限定)。当社は育成機関の要件を満たした、外国人美容師就労の1号店となった」と、田谷の新藤和久 取締役執行役員は話す。
田谷が外国人を採用したのは、人材育成のため。そのため採用してからも、育成プログラムを組んで国に提出したり、報告の義務が定期的に発生したりする。では、採用した田谷のメリットは何なのか。新藤取締役執行役員は以下のように話す。「一時期コロナで落ち込んだインバウンドが、最近は復活してきている。東京都はアジアからの外国人観光客が多く、観光の一環で日本のサロンを体験するケースも増えているため、中国語・韓国語などを駆使できる美容師がいると差別化につながる。また、5年後に国に帰るとしても、『タヤ』の技術を一緒に学んだ人たちなので、現地に当社の技術を持ったサロンの出店の可能性が生まれてくる」。
さらに今回の取り組みは、未来への可能性にもつながっているという。「これは1回限りではなく毎年繰り返していくので、重ねていけば外国人美容師の数もかなりの数になっていく。日本での就労が可能になったことで、日本の美容学校で学びたいと考える外国人は増えるだろう。さらに、日本で働いてから国に帰った卒業生が現地で活躍し、この流れがブームになれば、美容学校としても日本国内の市場だけでなく海外からの生徒も期待できるようになり、美容学校も盛り上がるだろう」。
美容学校が盛り上がれば、必然的に、業界の人手不足の解消にもつながるはずだ。「今後、5年間という期間や、東京都のみという地域の縛りが外れる可能性も大いにある。今回の取り組みには多くのメーカーやディーラーも賛同してくれているので、皆で業界を盛り上げていきたい」。