ファッション

「大切なことはすべて販売員時代に学んだ」 日本初の本格的なD2Cブランドを創業 エイミーイストワール 梯真奈美

時給800円の広島のアパレル販売員から、最先端のビジネスモデルの華やかなD2Cブランドのファウンダーへ。現在、若い女性から圧倒的な指示を集める人気ブランドのクリエイティブディレクターを務める梯(かけはし)真奈美さんは、まさに現代のシンデレラストーリーの王道を歩んできた。ただ、そのど真ん中には、地道にアパレル販売員のコアである「接客重視」をぶらさずにまい進してきたマインドがある。現在は「エイミーイストワール(eimy istoire)」に加え、「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」の3ブランドのクリエイティブディレクターを務める、MANAMIこと梯真奈美さんのインタビューをお届けする。

梯真奈美/「エイミーイストワール (eimy istoire)」「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」クリエイティブ・ディレクター

(かけはし・まなみ)1990年4月26日生まれ、山口県出身。「リエンダ ガールズ」を経て、2016年6月に日本初の本格的なウイメンズのD2Cブランドとなる「エイミーイストワール」をスタート、クリエイティブ・ディレクターに就任。20年9月にコスメブランド「アイアム」を運営するAiamを創業、副社長に就任。23年1月に3ブランド目となる「ジョゼムーン」をスタート PHOTO:YUTA KATO

WWD:ファッション業界に入ったきっかけは?
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梯真奈美(以下、梯):高校を卒業後に広島パルコの109系のアパレルブランドの販売員になったことがきっかけです。当時は山口の実家に住んでいたので行きは始発、帰りは最終のバスに乗り、往復4時間かけて通勤していました。

WWD:転機は?

梯:東京に上京して、「リエンダ」の販売員になったことです。今につながる大事なことはほぼ全て、「リエンダ」の販売員時代に学んだ、と言っていいほどです。接客や販売といった販売員にとって大事なことだけでなく、服とお客さま一人ひとりにしっかりと向き合うことなど身をもって体験しました。

WWD:具体的には?

梯:当時勤めていた池袋店の店長の影響がものすごく大きくて。今もそうなのですが、「売り上げより、お客さまを喜ばせよう」ということを、口だけでなく実際の仕事のやり方を通して教わりました。おかげで、どうしたらお客さまに満足していただけるか。そればっかりを考えられるようになりました。私は元々物覚えがよくないので、当時は常に大学ノートを店舗のバックヤードやカウンターの下に置いて、お客さまを接客するたびに、時間を見つけてはそのノートにお客さまの特徴や話したこと、ワードローブ、趣味などを細かくつけて、1日の終わりに見返していました。病院のカルテみたいなものですね。

2016年6月に「エイミーイストワール」をスタート。大きな転機に

WWD:2016年6月の「エイミーイストワール」の立ち上げのときのことを教えて下さい。

梯:(ドットワン現CEOの)藤井から声をかけられてブランドを立ち上げることになり、16年1月に販売員を辞めました。ただ、その時点ではブランド名も何も決まってなくて。本当にゼロからです。オフィスも社員も何もなかった。毎日、渋谷の「ベローチェ」に2人で集合して、ブランドコンセプトやブランド名、ターゲットなどを書き出して、横にいる藤井に見せては、ダメ出しをされていました。朝から晩まで、毎日ずっとダメ出しされ続けるので、いつもつらくて泣いていた日々がとても懐かしいです。

当時はSNS発のブランドが国内では今みたいに多くなく、販売員しか経験がない私にはわからないことだらけで手探り状態でした。そんな中でも一緒にブランドを盛り上げたいと思ってくれる仲間が少しずつ増えて、毎日朝まで仕事をして、シャワーだけ浴びてまた会社に戻る。そんな怒涛の日々を過ごしていました。本当にブランドを作ることが今よりも大変な時代だったので、貴重な経験をすることができました。

WWD:販売員時代と変わらないことは?

梯:「お客さま第一」です。お客さまとコミュニケーションする場や手段に、ブログやSNSなどが登場していますが、それは変わりません。今でもDMへの返信はルール上NGですが、基本的にはすべて目を通しています。イベントで初めてお会いするお客さまも、SNSを通してコメントくださったことがある方のことは記憶していることが多く、お会いできた際にお客さまの髪型やメイクの変化に気がついて、お伝えすると「初めて会ったのになんでわかるんですか!?」と、驚かれることも今まで多々ありました。

WWD:今の1日のスケジュールは?

梯:現在は3ブランドをディレクションしているので昔以上に大変な部分もありますが、変わらずに3ブランド共、世界観を作り上げるクリエイティブ周りの確認は全て行っていますし、商品企画から修正まで全てに携わっています。

WWD:SNS全盛の時代だが、逆に誹謗や中傷めいた書き込みも少なくない。どう向き合っている?

梯:どんな内容であっても、ブランドに関してのコメントはできるだけ私自身も目を通すようにしています。正直言って、批判にはとても傷つきます。それはずっと変わりません。ただ、どんな内容であっても、ブランドや私に不満や至らない部分が何かあるからだと思うんです。だから解決策は改善に向けて一つ一つ向き合い地道にできることを積み重ねていくしかないですね。

WWD:最後に販売員など、ファッション業界で働く人たちへのメッセージを。

梯:私は最初からスポットライトが当たる場所にいたわけではありません。キャリアの最初は広島で、時給800円で働く普通の販売員でしたし、さらに言えばそのこと自体に不満があったわけでもありませんでした。でも、思い切って一歩を踏み出せば、自分次第で全ては変えられる。そのことを証明し、かつ、お客さまに勇気や踏み出すきっかけを提供したい、そう思って突っ走ってきました。

私はお客さまの人生の中で小さな幸せを与えられる存在で居たいと思っています。女性にとってファッションを楽しむこと、美容で喜びや自信を得ることはとても大切です。お客様に笑顔になっていただくには何をすべきか。何から始めて良いかわからなかったり、漠然とした不安で、夢に向かう勇気や一歩が踏み出せない事もあると思います。ですが、皆さんが思い描く夢がどんなものであったとしても、叶える価値があることを忘れないでいてください。小さな一歩でも、踏み出してみると人生は少しずつ変わっていきます。自分自身を信じて、まずは一歩を踏み出してみましょう!皆さんの夢を心から応援しています。

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