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1stソロアルバムのリリースを控えるザ・エックス・エックスのロミー 「安心領域を抜け出すような感覚」

2010年代のUKロックシーンを代表するバンドの一つが、ザ・エックス・エックス(The xx)だ。ロミー(Romy)とオリヴァー・シム(Oliver Sim)、ジェイミー・エックス・エックス(Jamie xx)の3人から成るバンドは、2017年にリリースした3rdアルバム「I See You」を最後に充電期間に入っている。しかし、悲しいことだけではない。ジェイミー・エックス・エックスはDJとしてのソロ活動がさらにアクティブになり、オリヴァーも制作に2年を費やしたアルバム「Hideous Bastard」で22年にソロデビュー。そして23年6月、数年前からソロ活動に本腰を入れていたロミーが、満を持して1stアルバム「Mid Air」をリリースすると発表した。

アルバムのリリースに先駆けた2月、「フェンディ(FENDI)」のフラッグシップストア「パラッツォ フェンディ 表参道」のオープニングイベントのために、5年ぶりの来日を果たしたロミーにインタビューを敢行。ソロ活動をスタートしたきっかけから、盟友フレッド・アゲイン(Fred again..、音楽プロデューサーでアーティスト)との出会い、そしてじっこんの仲であるラフ・シモンズ(Raf Simons)との関係についてまでを語ってもらった。

ーーまずは、アーティストとして活動する以前の幼少期の話を聞かせてください。

ロミー:幼い頃はロンドンの郊外に住んでいたんですが、当時はインターネットが今ほど普及していなかったのもあって、何もかもが自分の想像力だけで事足りているような感覚で生きていましたね。ただ、インターネットを使うようになってからは毎日が新しいことの連続で、「マイスペース(MySpace、音楽を中心としたSNS)」で知らない音楽と出合うことが楽しくて楽しくて。それは、単に退屈な時間を音楽で満たしていただけではあるんですけど、結果として今のインスピレーションなどに繋がっています。

ーー音楽一家のもとに生まれたというわけではなかったんでしょうか?

ロミー:そうですね。母親を早くに亡くしたため、幼い頃から父親と2人暮らしだったのですが、彼が生粋のレコードコレクターだったので、自宅では2人で静かに同じ音楽を聴く生活が普通だと思っていました。でも、友達の家に遊びに行くようになってから普通ではないことだと気付いて(笑)。父親からは、家で静かに音楽を聴くライフスタイルを学びましたね。

ーーその後、16歳でザ・エックス・エックスを結成してから15年後の2020年にソロ活動をスタートしました。このきっかけは?

ロミー:ザ・エックス・エックスを初めた頃は、自分に自信がなくシャイだったので、興味はあったけど今こうしてソロアーティストとして活動するだなんて想像もしていませんでした。ただ、2018年にザ・エックス・エックスでのツアーを終えてから、改めて音楽を作ることが本当に1番大好きで、最も自分の情熱を注げるものだと思い、ソロ活動のためではなく誰かに楽曲を提供することを目的に制作を始めたんです。それからフレッド・アゲインと友人になり一緒に制作することが増え、この出会いが自分に自信を持てるきっかけになりました。

そしてある日、私が制作した楽曲を聴いた彼に「これは誰のために作ったの?」と質問され、「……私のためかも」と答えたことがソロアーティストとして活動する第一歩になったんです。いざ活動してみると心に開放感があって、この歳で自分の変化を楽しめているのは驚きですね。

ーーだから1stシングル「Lifetime」にフレッド・アゲインがプロデューサーとして参加しているんですね。

ロミー:アイデア自体はパンデミックによるロックダウン前から持っていて、ロックダウン中に彼と「ズーム」を通じてオンラインで曲作りをしているうちにいい感じに整ったので、「Lifetime」をデビュー曲に選びました。

ーーちなみに、彼とはどのように出会ったんでしょうか?

ロミー:彼は今ソロアーティストとして大活躍していますが、もともとは音楽プロデューサーや楽曲提供を中心としたソングライターです。近しい友人を通して、才能に溢れた人間だということは耳にしていました。そして、ロンドンの音楽シーンでは「この人とこの人を会わせてみよう!」といった動きが活発で、それを機に2018年の9月に出会ったんです。

ーーありがとうございます。それでは、9月にリリースを控えるソロアルバム「Mid Air」の制作に至った経緯を教えてください。

ロミー:フレッド・アゲインの影響もあって、ザ・エックス・エックスではないロミーとしての楽曲を作りたいという気持ちが強くなったことが大きいですね。ザ・エックス・エックスで築き上げた安心領域を抜け出すような感覚で、バンドのサウンドとはかなり毛色が違う、クラブミュージック寄りに仕上げています。

ーー以前、クラブを“癒しとコミュニティーの場”と表現していましたが、今回のアルバムはクラブシーンでプレイされることなども想定しながら制作したんでしょうか?

ロミー:プロデューサーとして関わってもらったフレッドとスチュアート・プライス(Stuart Price)には、「クラブで聴かれるような音楽にしたい」と相談しましたね。すでに全曲の制作は終えているんですが、実はタイトルもアートワークもまだ決まっていなくて、今日このインタビューが終わったら「ズーム」で最終決定する予定なんです(笑)。

ーー先行視聴した楽曲の中では特に「enjoy your life」が好きでした。この楽曲にまつわるエピソードがあれば教えていただけますか?

ロミー:まず、まだアルバムを聴いてくれている人が少なく、どの楽曲がどのようなリアクションをもらえるか気になって仕方がなかったので、こうして具体的に好きな楽曲を伝えてもらえたことがうれしい!ありがとう。

「enjoy your life」は、ロビン(Robyn、スウェーデンのシンガーソングライター)に連れられて観たビバリー・グレン・コープランド(Beverly Glenn-Copeland、トランスジェンダーのシンガーソングライター)のライブに着想しています。そのライブでグレンは、「La Vita」という楽曲を披露したんですが、「My mother says to me enjoy your life」という歌詞が小さい頃に母親を亡くしている私の心に強く響いたんです。その日以降、私は「enjoy your life」と口ずさむようになり、それを聞いたフレッドが「すごくいいフレーズだね!」と反応したので、彼と一緒に「La Vita」をサンプリングする形で「enjoy your life」を制作しました。

ーーここからは、ファッションについて聞かせてください。「Lifetime」のリリース時、「エックスガール(X-GIRL)」とのコラボアイテムを発表していましたね。

ロミー:かなり前にSNSを通じて存在を知り、ブランドについて調べたら立ち上げの中心人物がソニック・ユース(SONIC YOUTH)のキム・ゴードン(Kim Gordon)だし、女性向けのブランドだけどストリートのエッセンスがあることによってデザインがフェミニンすぎないし、それがずっと素敵だと思っていたのでコラボしたんです。

ザ・エックス・エックスの頃は真っ黒な洋服ばかりだったのが、最近は少し柄のあるストリートスタイルが気になっていますね。メンズのアイテムを着ることも好きなんですけど、大半が私の体にはシルエットが大きすぎて困っています......。

ーーここ数年は、丈の短いTシャツもよく着用しているイメージです。

ロミー:「エックスガール」の影響もあるのか分かりませんが(注:1994年設立)、1990年代っぽいミニTの気分なんです。今日着ているのは、「ドーバー ストリート マーケット ロンドン」で購入した「ブラック・コム デ ギャルソン(BLACK COMME DES GARCONS)」と「ナイキ(NIKE)」のコラボTシャツですね。

ーーザ・エックス・エックスでは、ラフ・シモンズとカプセルコレクションやMVを制作するなど親しい仲ですよね。

ロミー:もともとは、ありがたいことにラフ・シモンズがザ・エックス・エックスのファンで、何かのインタビューで公言しているのを見つけてメンバーで喜んでいたところ、ちょうど連絡があったんです。それが、2014年にニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館で行われた「ディオール(DIOR)」のファッションショーでのパフォーマンスの依頼でした。それから密に連絡を取るようになり、「I Dare You」のMVでもコラボしたんです。

ーー最後に、忘れられないファッション体験談があれば教えてください。

ロミー:11歳くらいの時に、従兄からもらったお古の「ナイキ」の“エア マックス プラス(AIR MAX PLUS)”を履いて学校に行ったら、友達みんなが「何そのスニーカー!超クールじゃん」って集まってきたんです。今でもそれが忘れられず、今日も“エア マックス プラス”を履いていて、このモデルは「今後これしか履かないかも」と思うぐらい気に入っていますね。

ーー僕も1番好きなスニーカーが“エア マックス プラス”なので、今日会った時に「あ!」って思っていました(笑)。

ロミー:本当!?イングランドでもあのデザインが刺さる人と刺さらない人がいるので、“エア マックス プラス”が国を越えた共通言語なのはうれしいです。

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