ファッション
連載 エディターズレター:IN FASHION

「折衷」の意味を持つブランドが栄冠 LVMHプライズの審査員たちの視点【エディターズレター:IN FASHION】

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※この記事は2023年06月13日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「折衷」の意味を調べると「いろいろな物からいいところをとり、一つにあわせること」とあります。その「折衷」の意味を持つブランド「セッチュウ(SETCHU)」が2023年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」のグランプリに選ばれました。デザイナーはミラノを拠点に活動する日本人の桑田悟史さんです。

LVMHプライズは、候補者のクリエイションが注目なのは当然のこと、審査員たちが「今、何を良しとするのか」が浮き彫りになるところも見どころです。審査員は社会に向けて尖ったアンテナを立て、ファッションがそこでどう貢献できるのかを結果に反映させています。22年度のグランプリであるロンドンのメンズブランド「エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)」はそれを伝えた記事によれば「自国の階級社会や伝統をクィアな視点で解釈したどこかノスタルジックなムード漂うクリエイションが特徴」でした。

2018年度に「ダブレット(DOUBLET)」の井野将之デザイナーがグランプリを受賞したときはそのユーモアのセンスが評価をされたようです。ジェンダーや障害、地球環境といった社会的問題に極めて真面目な姿勢を持つ井野さんは、「意識高い」などと揶揄されがちなシリアスなテーマに真正面から取り組みつつ、同時に強烈なユーモアで包み込むことで笑いに変えてしまう、素晴らしいセンスの持ち主です。苦い粉薬を飲むための薬包紙みたいなそのクリエイションは、国境を越えて多くの人が受け取りやすい。だからグランプリを受賞したのでしょう。

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