中国は世界最大のEC(電子商取引)大国として知られる。今年1~4月のEC化率(小売総額に占めるネット販売の比率)は24.8%に達した。日本の8.78%(2021年実績、経産省「令和3年度電子商取引に関する市場調査」)をはるかに上回る。このECの強さはリアル小売の弱さと表裏の関係にある。強力で効率的な大手小売事業者が育つ前に、ECの荒波に飲み込まれてしまったわけだ。しかし、中国のリアル小売は衰退しているばかりではない。2010年代後半からデジタル化時代に合わせた、新たなトレンドや業態の発展が目立つ。ECに食い荒らされる存在からネットを補完する存在としてのリアル小売店という役割が強調されるようになってきた。2020年初頭から約3年間続いたCOVID-19の流行という打撃はあったものの、今、再び存在感を高めつつある。特にアパレル、化粧品で重要なトピックとして「次世代コスメセレクト」「国潮」「トレンドトイ」「リユースショップ」を取りあげる。世界最大のEC大国において、リアル店舗/小売はどのような生き残りの道を見いだそうとしているのか。我々にとって参照すべきヒントが詰まっている。(この記事は「WWDJAPAN」2023年6月12日号に加筆したものです)
次世代コスメセレクト
KK集団
設立:2015年 創業者:呉悦寧(ウー・ユエニン) 本拠地:広東省深圳市 資金調達額:700億円超
概要:大手集合店運営企業、旗艦ショップのKKVなど700店舗以上を展開している。ビッグデータ分析により新たな売れ筋商品を、Z世代を中心とした若き消費者に届けることを目的としている。今年1月に香港証券取引所に上場申請を行った。
新たなネットサービスやD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー、ネット専売)ブランドが次々と登場すると、課題となるのが顧客獲得コストの高騰だ。いかにしてコストパフォーマンスの高い広告チャネルを見つけ出すかが課題となる。動画配信とネットショッピングを一体化させたライブコマース、エレベーター広告、地下鉄のつり革広告、農村の壁にペンキで描く街頭広告などさまざまなチャネルが開拓されるなか、セレクトショップにも光があたった。中国語では「集合店」と呼ばれるが、単独では店舗展開できない中小ブランドの顧客獲得の場として注目を集めるようになった。特に2021年には中国ベンチャーマネー業界のホットトレンドとなり、KK集団が200億元(約4000億円)、ワウカラー(WOW COLOUR)とヘイドン(HAYDON/黒洞)がいずれも10億ドル(約1400億円)という高い評価額で資金調達に成功している。
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