2024年春夏シーズンのコレクションサーキットがロンドン・ファッション・ウイークと共に本格的に開幕し「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」も最新コレクションを現地時間11日に披露した。場所は郊外のセント・ジョセフ・コミュニティ・センターで、1970〜80年代初頭に地元労働者がコミュニティ・センターをナイトクラブとして使った様子を再現した演出だ。赤いライトで染まった会場内には、郊外とは思えないほどの個性的なスタイルのゲストたちでひしめき合い、汗がしたたるほどの熱気に包まれた。
同ブランドは、今シーズンも継続してスモールコミュニティーの強いつながりと、そこから溢れ出るパワーをスタイルで表現する。無骨なカーコートやスポーツウエアにウィメンズライクなAラインシルエットを用いたり、テーラードジャケットのバランスを歪ませてドレープを作ったりと、ビンテージ風のウエアに奇抜なシェイプを掛け合わせていく。かつてのナイトクラブに集った、多種多様な人種がコミュニケーションするような自由な感覚で、ストリートウエアの再構築に挑む。デザイナーのマーティン・ローズはサウスロンドン出身で、ジャマイカ系の家族のもとで育った。「コミュニティーセンターは当初イギリス的なものだったが、移民が大勢訪れたことで変化していった。ポーランド系、西インド系、トルコ系のセンターもあった。コミュニティーセンターは、どのコミュニティーにも関連している。だから、ここはとてもパーソナルなものに感じられる」と述べた。
今シーズンのもう一つのキーワードが、モーターサイクルだ。バイクに乗るライダーからヒントを得たテーラードジャケットは、肩が前面に張り出した前下がりのシルエット。ジャケットやパンツに使ったナッパレザーの光沢は、オイルにまみれたバイカーたちを再現したものだ。全体的にオーバーサイズは継続させながら、今シーズンは横幅はやや抑え気味にし、縦長のシルエットを強調していた。
ローズは、5月に英国シューズメーカーの「クラークス(CLARKS)」のゲスト・クリエイティブ・ディレクターに就任し、同氏が手掛けたアイテムも初披露した。「快適性に重点を置いた」というシューズは、3種類のクラシックな型をヘビ皮を使い、ブラックとバーガンディーに染めてアレンジ。コレクション同様に、クラシックを現代的に再解釈するクリエイションだ。
コレクションとしては新しさにやや欠ける印象だが、ロゴ推しで知名度が拡大した頃から素材のバリエーションは増え、コレクションの背景とディテールとのリンクのさせ方が分かりやすくなった。今年1月にはイタリア・フィレンツェでピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)にゲストデザイナーとして参加し、そのショーがきっかけでビジネスが拡大したという。ミラノを拠点にするセールスエージェンシーのトゥモロー(TOMMORROW)からの出資も追い風となっている。今後は「ナイキ(NIKE)」や「ステューシー(STUSSY)」との協業をステップに、王道を進むのか。もしくはロンドン発のカルトブランドの立ち位置を維持するのか。実力派デザイナーは、どのような成長戦略を描いているのだろうか。
24年春夏サーキットは、現地時間12日に「サンローラン(SAINT LAURENT)」がドイツ・ベルリンでメンズのショーを開き、15日にはピッティ・イマージネ・ウオモに「フェンディ(FENDI)」が参加する。その後、ミラノではメンズ単独ショーを再開する「ヴァレンティノ(VALENTINO)」や、パリではファレル・ウィリアムス=メンズ・クリエイティブ・ディレクターによる初の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」メンズなどが注目を集めている。