モノが素晴らしくても、「届ける」にまで思いを馳せないと売れない時代。「マクアケ(MAKUAKE)」で多数の応援購入という形で支持されるプロジェクトは、モノづくりからコミュニケーションに至るまでの設計の何が違うのか?この連載では、モノづくり企業に伴走するキュレーターが成功体験を伝授。時にモノづくり企業が苦手とする、訴求ポイントの整理からターゲットの設定、トップ画像やキャッチコピーに至るまでのコミュニケーション上の工夫を伝授してもらう。今回は、“帽子で世界をカッコよく”をビジョンに掲げる有限会社音ワの話。
今回お話を伺ったのは、有限会社音ワです。同社は“帽子で世界をカッコよく”をビジョンに掲げる、帽子を中心としたフェイス周りのアパレルブランドです。須藤裕史創業者はサラリーマンの傍ら、福岡県天神市でアクセサリーを路上販売し、その後はショッピングセンター内にワゴンショップを出店していました。2001年にワゴンショップを買い取るかたちで独立。03年に有限会社音ワを設立しました。アクセサリーの販売から始まった音ワがオリジナル帽子の制作を開始したのは05年。以降、オリジナル帽子の制作を軸に、17年にはスマートフォン関連雑貨事業を立ち上げるなど、複数店舗を展開する会社へと成長を遂げていきました。
そして21年、音ワは新しい挑戦を始めます。日本人の骨格に合わせた帽子の開発です。これまで帽子は店舗を訪れ、自分の頭に合うかどうかを確認してから購入するのが当たり前とされてきました。インターネットで“自分に合う帽子”を見つけるのは難しかったのです。そこで音ワは日本人の頭の形を研究し、5〜6枚の生地で構成する一般的な帽子とは異なる11枚剥ぎの帽子“J-FITキャップ”を開発。細かなパーツを立体的に組み合わせることでフィット面積を増やし、頭に合う体験をつくったのです。また、サイズ展開でも「普通」「大きい」「超大きい」をつくり、いろんな人たちの頭の形に合うようにすることで、一人でも多くの人に「新しい自分に出会う喜び」を提供しています。
「マクアケ」で“J-FITキャップ”のプロジェクトを実施したところ、合計で1248万円の応援購入が集まるなど、大きな反響を集めました。今後、音ワは「似合う帽子専門」のオンラインストアや、“似合う”に特化した別ブランドの立ち上げなどにも取り組むそうです。
実行者の想いとユーザー分析
実店舗では数ある商品をいろいろ試着したり、店員と会話したりして“似合う”を届けることができますが、試着などができないオンラインで“似合う”を届けるのは難しいもの。オンラインで多くのお客さまに対して、「新しい自分に出会う喜びを届ける方法はないか」と考えた結果、生まれたのが“J-FITキャップ”でした。これまで日本人の骨格に合わせて開発された帽子は少なかったため、日本人の頭のカタチを研究した帽子を制作しました。
ターゲットとしたのは「帽子が似合わないと思っている人たち」です。今回の「マクアケ」でのプロジェクトを担当した音ワの社員さんも、大学生の頃は「帽子が似合わない」と思っていた一人だそう。ところが自分に似合う帽子を見つけたことで、帽子がライフスタイルの一部になったそうです。そんな体験を一人でも多くの人に提供すべく、「帽子が似合わないと思っている人たち」をターゲットとしました。直近の3回目のプロジェクトではアウトドア要素をプラスし、女性も含めた幅広い層の獲得を目指しました。
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