6月にオリヴィエ・ティスケンス=クリエイティブ・ディレクターが去り、創業当時にデザイナーを務めたリサ・カルソンをウィメンズ・クリエイティブ・ディレクターとして再び迎えた「セオリー」。セオリー社のアンドリュー・ローゼン最高経営責任者(CEO)は「ブランドを新たなステージに導く時がきた」と話す。ローゼンCEOとカルソン=ウィメンズ・クリエイティブ・ディレクターが、新体制に切り替わったブランドの方向性と、元祖コンテンポラリー・ブランドの一つとしての今後の展望を語った。
リサ・カルソン=ウィメンズ・クリエイティブ・ディレクター。創業当時も「セオリー」でヴァイス・プレジデント兼ヘッド・デザイナーを務めた
元祖コンテンポラリー・ブランドの一つ として知られる「セオリー」だが、同カテゴ リーのブランドが大幅に増えた今、ローゼ ンCEOは改めてファッション業界における コンテンポラリーゾーンの重要性と可能性 を強調する。「コンテンポラリーゾーンは、今 後も成長していかなければならない。常に ファッション誌のトップページを飾るような 服を作ることが、必ずしも重要だとは限らな い。服が美しいことは大前提として、クオリ ティーやフィット感、生地、着心地など、全体 的な完成度の高さを追求するのだ。ワード ローブの大切な一着となり、長く着られる 服を作る。一つのラインの中に、ハイエンド からローエンドまで、異なる価格の商品が 混在するラインアップを提供したい。もち ろん、上質で洗練された魅力は全ての商品 が持つべき」とローゼンCEO。
また、インターネットやファストファッショ ンの台頭により、創業当時と比べ、あらゆる 物事の進むペースが速くなり、消費者の知 識量に大きな変化が起きたと話す。とは言 え、「消費者のその時々の気分や、年齢を重 ねるペースにデザインを合わせる必要はな い。もちろんブランドも月日とともに進化す るが、一貫した魅力的な美的感覚を表現で きれば、幅広い年齢層から支持を得ること は可能だ」という。
デザイン面では、今後は顧客のニーズに 合わせつつ、より前衛的な商品も提案する という。リサ・カルソン=ウィメンズ・クリエ イティブ・ディレクターは、「これまでの『セオ リー』に欠けていたのは、ほんの少しのフェ ミニンさとセクシーさ。顧客もそれを求めて いると思う。仕事着としてのイメージが定着 しすぎた部分があるので、女性の『セオリー』 に対する概念を覆したい。今回の春夏コレ クションではそれを意識した」と話す。
実際に、「セオリー」の2015 年春夏コレク ションでは、これまでよりカラフルなルック が多く見られた。リネンのジャケットなど のベーシックアイテムやアイ ボリー、淡いグレー、ナチュ ラル・ホワイトを基調に、バー ガンディーやテラコッタの商 品も提案した。2月の店頭展 開では、アーストーンの商品 も追加するという。「カラーバ リエーションだけではなく、 ファッション性の高い、現代 的で洗練されたシルエット のピースを増やした」とカル ソン。「セオリー」単独店限定 の、シューズやバッグなどのア クセサリーも増やす。
1997年にエリー・タハリ氏と共にセオリー社を立ち上げた、アンドリュー・ローゼン最高経営責任者(CEO) (ルックキャプ) 2015年春夏コレクションから
近年、ファッション業界で 急速に増えた、ブランドやデ ザイナーによるコラボ企画に は、ローゼンCEOも興味を 示している。「二つのブランド が互いの要素を融合させる ことは、とてもモダンだと思 うし魅力を感じる」と話し、 将来的なコラボ企画への意 欲を示した。
「めまぐるしく変化するファッション業界に 合わせて成長を続けなければならない。『セ オリー』が培ってきた品位と美的感覚を損な うことなく、ビジネス面での戦略を進歩させ たい」とローゼンCEO。新たなビジネス戦略 の一つとして、ブランドロゴの一新を挙げた。
また、「セオリー」が単独店メインの販 売モデルに移行する中で、顧客とのより密 接な関係性を構築しなければならないと いう。今後は、安定したマーケティング・プ ログラムとソーシャルメディアを活用したデ ジタル戦略に注力し、「店舗とオンラインの シームレス化」を図る。「今の時代、実店舗 やデジタル、オンラインのどれか一つに偏 ることなく、顧客に『どこで買うか』という幅 広い選択肢を提供しなければならない」と ローゼンCEO。