ファッション業界のご意見板であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「メルカリ」の浸透などもあって古着が存在感を増すようになって久しい。リユース関連の店舗もこの10年でだいぶ増えた。だが、マーケットを詳しく点検すると潮目が変わってきたと小島氏は主張する。
コロナが5類に移行して行動規制もなくなりリベンジ消費が衣料販売を押し上げているが、コロナ下で盛り上がった古着ブームはどうなるのだろうか。空き店舗の増加とともに急増した古着店も減り始め、中古衣類の輸入量も減少に転ずるなど、ブームの継続に黄信号が点っている。
キレイ目・オンシフトで古着はオフトレンドに
ゴールデンウイーク明けの5月8日からコロナが5類に移行して行動規制もなくなったが、衣料消費はそれを先取りして復活が加速している。家計消費や商業動態統計の2019年比はまだ8掛け強で足踏むものの、全国百貨店衣料品売り上げの19年比は1月の72.9%から2月83.9%、3月82.5%、4月85.5%と少しずつ上向き、5月は主要百貨店の速報から見て88%近くまで回復したものと推計される。
19年水準を超えているのはまだ都心の百貨店や商業施設のごく一部に限られるが、好調商品の傾向は一変した。コロナ下で低迷していたオケージョン品やビジネス品、ビジカジ品が復調し、カジュアルの面感もキレイ目にシフトしてフィットもスマートになってきた。そうなるとエイジングした面感やくたり感など古着の味わいはオフトレンドになってくるわけで、コロナ下で盛り上がった古着ブームも熱が冷めるのではないかと危惧される。
人出の回復にインバウンドの復活も加わって各地のハイストリートに賑わいが戻り、出店意欲も復活して家賃も急回復し、空き店舗も急速に埋まりつつある。一時はハイストリートも閑散として空き店舗が広がり、低家賃の期間限定契約中心に広がった古着店も、今年に入って目に見えて減っている。銀座や表参道の一等地を除けば賃料はまだ19年水準に届いていないが回復は確実だから、空きを埋めるためやむなく極端な低家賃で入れていた期間限定契約の古着店が消えていくのは必然だろう。
中古衣類輸入に変調
もうひとつ、古着ブームの先行きを占う気になる兆候がある。それは中古衣類(品目コード6309)輸入量の減少だ。
14年を底に増加に転じて21年、22年と急増し、22年は19.9%増の1万463トンと1万トンの大台に乗った中古衣類の輸入量が23年第1四半期(1〜3月)は前年同期比83.8%と大幅なマイナスに転じた。直前の前年第4四半期(10〜12月)は23.8%の伸びだったから失速感は否めない。
中古衣類輸入量は14年の2993トンから8年で3.5倍に増え、kg単価も847円から1099円に上昇して加熱気味だったから、22年のドル為替レートが132.12円と前年の109.85円から一気に上昇して23年第1四半期のkg単価も1186円と高騰し、割高感から調達が抑制に転じたという見方もできる。
それでも前回ブーム直前02年の1536円(1ドル125.39円)の77%ほどだからまだ上昇余地はあるが、ドル為替が108.19円に急落した04年に前回の古着ブームに火が付いて35.8%増の7309トンと輸入量が急増したことを思えば、逆(ブームの冷却)も考えられる。直近の輸入古着店の店頭を見ても、円安のせいか以前より割安感が薄れたように感じられる。
輸入数量前年比は1月の76.6%、2月の83.4%、3月の91.3%と次第に回復し、4月は128.2と前年同月を大きく超えたが、1〜4月累計は92.5%と前年に届いておらず、再び140円に乗った直近のドル為替レートを考えれば頭打ち傾向が続く公算が大きい。では古着ブームが冷めてしまうかというと、そう単純ではない。輸入古着は22年の輸入額で114億9960億円と限られ、小売段階でもリユース衣料販売額の9%弱を占めるにすぎないからだ。
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