山田昭一/ピープルショールーム代表 プロフィール
(左)1978年11月8日生まれ、埼玉県出身。ジャーナル スタンダードや「スノーピーク」を経て、2018年に独立。21年にピープルショールームを設立。被写体としてもたびたびメディアに登場し、1年の3分の1はアウトドアで過ごす。キャンプの必携グッズはテンカラ(和式の毛針釣り)竿で、渓流釣りを楽しむ
辻井国裕/オフィス ボルシチ代表 プロフィール
1976年7月7日生まれ、愛知県出身。セレクトショップで販売員などを経験後、2004年にオフィス ボルシチを立ち上げる。アウトドア系を中心に15ブランドをハンドリング中だ。プライベートでは、UL(ウルトラライト[装備を軽量化する])自転車キャンプやパックラフトを実践する PHOTO : NORIHITO SUZUKI
夏を間近に、「キャンプに挑戦してみたい!」と思っている人も多いだろう。そこでアウトドアブランドを多数ハンドリングし、プライベートでもキャンプが趣味のPR会社2社の社長に登場いただいた。
こだわったのは1点。“取材あるある”で、この手の依頼をするとクライアントの商品が出てきてしまうのが常だが、今回は「それ以外のブランドで!」と強くお願いしたことだ。泣く泣く紹介してもらった、つまりは“本当に使える(2人が実際に使っている)ウエア&ギア”がそろった。
4アイテムとも1万円台、キャンプ初心者も手を出しやすそうな辻井セレクト
WWD:数多くのアウトドアウエア&ギアを所有しているだろう2人に、4点ずつ厳選して持参いただきました。まずは、辻井国裕オフィス ボルシチ代表の服から紹介してもらえますか?
辻井国裕オフィス ボルシチ代表(以下、辻井):英国のアウトドアブランド「カリマー(KARRIMOR)」のレインポンチョです。3年ほど前に1万円強で購入しました。雨が降っていても気分があがるようにネオンイエローを選びました。これには、山で何かあったときに発見されやすいという実用の意味もあります。ポンチョって袖なしのデザインが基本で、でもそれだと作業中に手がびしょびしょになってしまうんです……。だから、これを見つけたときは即決でした。さらに面ファスナーで袖口も絞れて、雨風を防げます。加えて、ロング(膝下)丈なんですが、小さく畳めるんですよ。
WWD:ナイロンベストはどこのもの?
辻井:カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」です。なんと言っても薄さ・軽さが特徴で、たった85gなんです。本来はトレーニングウエアのようですが、僕は夏場の寒さ対策で携行しています。パッカブル仕様なので、バッグやジャケットのポケットに忍ばせています。“保険”というか、お守りというか。山は朝・晩、冷え込みますからね。はっ水・速乾性があって、Tシャツの上に羽織るだけでだいぶ変わり(温かくなり)ます。
山田昭一ピープルショールーム代表(以下、山田):「アークテリクス」、憧れのブランドですよね。でも、ちょっと高くてなかなか手が出ないです……。それとシャープなデザインが多い印象で、体格の良い僕はそこでも躊躇しちゃってます……。
辻井:あ、でも、このベストは約1万円でしたよ。
山田:それはお買い得ですね!というか、辻井さんが買い物上手なのか(笑)。
WWD:シューズもお持ちいただきましたね。
辻井:5月に購入したばかりの「ナイキ(NIKE)」のアウトドアライン“ナイキ ACG”です。1万6000円ほどでした。僕はパックラフト(ゴムボートによる川下り)がキャンプの楽しみなんですが、このシューズはグリップ力がすごいんです。オールホワイトで洒落てるから、雨の日の街履きにも良さそうですよね。モノトーンコーデとかで。
WWD:最後はギアです。
辻井:ギアは本当にたくさんあって悩んだんですが、日本ブランド「ソト(SOTO)」のスタッキング鍋を選びました。価格は約1万5000円で、もう7年くらい使っています。ステンレス製で炒め物もできて、ふたが皿にもなるんです。つまり、これさえあればアウトドアでの調理には困らないのですが、重いのがタマニキズ……。
山田:僕もまったく同じものを持っています。ダッチオーブンみたいにも使えるので、“丸鶏とゴロゴロ野菜のハーブ蒸し”なんかを作っています。
WWD:以前、こちらの動画で紹介してもらったメニューですね。おいしかったです!
山田:ありがとうございます。
WWD:山田さんの言う通り、辻井さんのリコメンドアイテムはどれも1万円台で、キャンプ初心者も手を出しやすそうですね。
レア古着から大人気ブランドまで、山田セレクトに共通するのは“楽しむ”ための道具感
WWD:続いては山田さんの厳選4アイテムです。
山田:1着目は、「パタゴニア(PATAGONIA)」の前身ブランド「シュイナード・イクイップメント(CHOUINARD EQUIPMENT)」のアロハシャツです。
WWD:キャンプにハワイアンシャツ!?
山田:はい、ぜんぜん着て行っちゃいます(笑)。
辻井:実は、自転車キャンプの人もシャツを着ていますよ。
山田、WWD:へー、それは意外ですね。
辻井:着脱が簡単で、体温調整しやすいからだと思います。それに「WWDJAPAN」でも特集していましたが、日本のアウトドアブランド「山と道」の影響もあって、トレンドとも言えるのかと。フィールドでもSNSでも、シャツを着ている自転車キャンパーを多く見かけます。
WWD:現場のリアルな声ですね。勉強になります。ちなみに山田さん、ハワイアンシャツの下は?
山田:「パタゴニア」の“バギーズ”(ショーツ)です。「パタゴニア」×「パタゴニア」ですね(笑)。あ、このシャツ、クライミングギア柄なので、その意味でもアウトドア物と言って良いかと。辻井さんも言っていましたが、キャンプのときって、普段街で着ないような色・柄を着れちゃうんですよね。その方がテンションがあがるというか。それに辻井さんのポンチョほどではないですが、赤もハザードカラーなので実用性もあります。
WWD:古着で購入?
山田:ええ、東京・町田のアウトドア専門古着店バックストリートで2万円ほどでした。1980年代の物だと思います。
WWD:続いてはアウターですね。
山田:「サウス2ウエスト8(SOUTH2 WEST8)」のテンカラジャケットです。
WWD:テンカラとは?
山田:和式の毛針釣りのことです。テンカラは川に入って行うので、ジャケットの着丈が短くなっています。ロッド(竿)ホルダーを設けているのも特徴ですね。防水素材なので、レインウエアとしても使えます。「サウス2ウエスト8」はテンカラに特化しているので機能性も十分で、何より格好良いですよね。シーズンごとに買い足して、5枚を所有しています。価格は各6万円ほど。辻井さん、釣りは?
辻井:やらないですね……。僕にとって川は、もっぱら“下る”ものです(笑)。
山田:キャップは、釣り具ブランド「ダイワ(DAIWA)」のアパレルライン“ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)”です。素材にははっ水性があって、裏地がメッシュで夏向きです。青のパイピングがかわいいですよね。
WWD:キャップはよくかぶります?
山田:はい、30個ほどを所有しています。これは、くしゅくしゅっとポケットに突っ込める点も気に入っています。
辻井:帽子はキャンプの必需品ですね。日焼けをすると、体力も奪われてしまいますので。
山田:ギアは僕も本当に悩んで、「WWDJAPAN」の読者にも人気がありそうな「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のチェアにしました。価格は2万4000円ほどでした。クッション材入りの背もたれが高くて、高身長の僕も安心なんです。コーデュラナイロン製だから丈夫で、長く座っていても疲れないんです。2脚あって、妻と使っています。
WWD:「ザ・ノース・フェイス」はチェア以外にも?
山田:シェルジェケットやパンツを愛用しています。
WWD:辻井さんは?
辻井:ビームス別注の“ヌプシブーツ”やダウンマフラーを持っています。「ザ・ノース・フェイス」は街でも大人気なので、バッティングしないよう“変化球的小物”を選んでいます(笑)。
キャンプ上級者からビギナーにアドバイス、「服もギアも家にある物でいい!」
WWD:最後に2人から、この記事を見て「キャンプ、やってみようかな?」と背中を押されたビギナーにひと言アドバイスをお願いします。
辻井:あれこれ紹介しておいてなんなんですが、極端な話、服は普段着で良いし、ギアも手持ちの物で賄えると思います。最初から全部そろえる必要はないんです。僕は、今回紹介した「ソト」のスタッキング鍋を家でも使っています。
山田:まったくもって、そう思います!敷居を高く感じてしまって、“あれもなきゃダメ、これもなきゃダメ”と最初の一歩が踏み出せなくなるのは残念過ぎます。服で言えば、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ワークマン(WORKMAN)」にもキャンプで使える商品がたくさんあります。ちなみに、僕は夏場に“エアリズム”が手放せません。ギアは「無印良品」がおすすめです。
辻井:服で大事なのは雨対策でしょうか。山の天気は変わりやすく、体が濡れると体力を消耗してしまうので。
山田:生地の乾きやすさは、ウエア選びの基準にして良いでしょうね。雨具は防寒具にもなりますし。
WWD:もう十分に服もギアも持っている2人ですが、今夏に狙っている商品はありますか?
辻井:日本のアウトドアブランド「ネイタルデザイン(NATAL DESIGN)」が発売している、スエット地に総柄プリントのショーツに触手が伸びています。ショーツは30着ほど持っているんですが、何枚でも欲しくて(笑)。
山田:僕はパックラフトグッズですね。今日、辻井さんから話を聞いて、すっかりやってみたくなっちゃいました。今度、レクチャーしてください。
辻井:なかなかに“沼”ですよ(笑)。日本市場にはまだ服もギアも少なくて、海外からの取り寄せが基本になります。ちなみに、国内のパックラフト人口は800人ほどとか。
山田:では、僕が801人目になります!