「フェンディ(FENDI)」は、イタリア・フィレンツェのメンズ見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)にゲストとして参加し、2024年春夏メンズ・コレクションを現地時間15日に発表した。会場は、同ブランドがフィレンツェ郊外の田園地帯に22年秋に新設したレザーグッズの生産拠点「フェンディ ファクトリー」だ。ショー開催の数日前に、国際的な建築物の環境性能評価制度“LEED”の最高評価レベルであるプラチナ認証を取得した場所でもある。地元の植物と、「フェンディ」が新しく植えたオリーブ園が広がる穏やかな地で披露したのは、クラフツマンシップへの賛美をスタイルへと転換した、同ブランドらしいユーモア溢れるクリエイションだった。
ゲストが会場に到着すると、職人たちがバッグやレザーグッズを実際に製作している現場の合間を進んで行く。職人の年齢層は、ベテランから若い世代までさまざま。ゲストは、生産レーンの間に設置されたシートに座るまで、全てのアイテムが職人たちの丁寧な手作業を経て形になっていく様子を見ることができた。
手仕事と最新技術の融合
24年春夏メンズ・コレクションは、職人たちの手仕事とテクノロジーの融合をスタイルで表現する。ベースとなるのはメンズでは普遍的なワークウエアだ。コットンとレザーを使ったワークウエアらしいパッチポケットをコレクション全体に散りばめ、胸元のネームカードや首にかけたメジャーでユニホーム感を一層強調させる。
ファーストルックは、ベージュのコートとスラックスのセットアップに、肌が透けるほどざっくりと編んだニットを合わせた。ベーシックなシャツはワンピースのように縦長に変化させ、ワークエプロンをスカートのようにスタイリングしたりと、硬質なワークウエアに、しなやかなフォームやフェミニンなディテールを取り入れていく。ワークの再解釈として、ハサミやドライバー、ハンマーなどをシャツの柄としてプリントするアイデアは、「フェンディ」らしいユーモアだ。トスカーナの風景に思いを馳せて、カラーは焼けたような色味のブラウンやテラコッタ、深いインディゴを多用。アイコニックな“FF”ロゴは、ニットのシアリングコートに織り込んだり、デニムにはジャカードで浮き上がらせたりと、あらゆる手法でクラフツマンシップと象徴的なモチーフを結び付けた。
アクセサリーは、シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=アーティスティック ディレクターの軽やかなクリエイションを「フェンディ ファクトリー」の確かな技術で形にする。かごの編みや結び目で装飾したジャカードの“ランチ バッグ”や、レザーをデボスした“スケール”などでアイコンバッグ“バゲット”“ピーカブー”などをアップデート。新作のミニハンドルバッグ“フェンディ キヨード(FENDI CHIODO)”にはシボ感のあるグレインレザーを使い、繊細な構造に仕上げている。
隈研吾との協業も披露
さらに、建築家の隈研吾と協業したプロジェクト“フェンディ ケンゴ・クマ”のアイテムも披露した。“ピカーブー”や“バゲット ソフト トランク”、スニーカー“フェンディ フロー”に、隈建築を象徴する編み上げた竹や、シラカバ樹脂、布から作った紙と和紙を混ぜた和蘭(わらん)紙のほか、トスカーナのオリーブの木で構築した。自社だけでなく、国やジャンルを超えてクラフツマンシップを讃える姿勢を見せた。
フィナーレには、シルヴィア・フェンディ=アーティスティック ディレクターを先頭に、ファクトリーで働く職人たちが列をなしてランウエイを歩いた。それぞれの表情を見ていると、慣れない状況にややはにかみながらも、誇らしげに堂々としている姿が印象的だった。昨今のショーのフィナーレは、多くのゲストがモデルにスマートフォンを向けるため、大きな拍手に包まれた雰囲気はなかなか見られない。しかし「フェンディ ファクトリー」の職人たちに送られた拍手は、どのショーよりも盛大だった。