ファッション

画家ジミー大西がスマホケースをキャンバスに描く 「エジュー」の新井愛子と語るコラボ秘話

今や説明不要のジップバッグ付きスマホケース「エジュー(AJEW)」が、芸人、ジミー大西とコラボした。ジミーといえば、1992年にTV番組の企画をきっかけに絵を描き始め、画家としても国内外で高い評価を得ている。コラボアイテムには、活動初期に描いた代表作「パラダイス」と「ジャングル」を採用。「エジュー」の定番モデルよりも一回り大きいマルチ対応のスマホケースに、色鮮やかなジミー独特の世界観を宿した。気になるのは、ジミーと「エジュー」の出合いだ。数あるスマホケースの中で、なぜジミーが「エジュー」にゾッコンか。「エジュー」の新井愛子デザイナーとジミーに、コラボの裏側を聞いた。

なお、コラボアイテムは26日まで、大阪・阪急うめだ本店9階で開催中の「ジミー大西 画業30年記念作品展『POP OUT』」で販売しており、27日までは、「エジュー」のオンラインストアでも受注生産を受け付ける。

――ジミーさんは普段から「エジュー」を愛用されているそうですね。

ジミー大西(以下、ジミー):去年、僕、銀座三越で個展を開いたんです。そのとき、三越でものすごい可愛らしいスマホケースを見つけたんで(同時期に「エジュー」もポップアップショップを開設)、買ったんですよ。それで、IMALUちゃんが遊びにきたときに、IMALUちゃんにもそのスマホケースをプレゼントしたんです。

新井愛子「エジュー」デザイナー(以下、新井):IMALUさんがストーリーズで、ジミーさんと一緒に店頭で購入されるまでの様子をアップされていて、それを見たときにもう鳥肌が立ちました。ジミーさんは、IMALUさん以外にも毎日いろんな方を連れてきてくださっていたみたいで、これはただ事ではないなと。どうにかお礼を伝えたいと思っていたら、ジミーさんの連絡先を知ってるっていうスタッフが社内にたまたまいて。そういう奇跡があってコラボが始まりました。

ジミー:デザインが可愛いので、自分が見惚れてしまったんです。首から下げられるし、ポケットも付いていて、使い勝手もいいでしょ。それで僕からエジューさんに、スマホケースをデザインしたいって頼んだんですよ。アートの選定から始めて、形になるまで1年ぐらいかかりました。

新井:今回のコラボケースもいろんなサイズのスマホに使ってもらえるように、スマホをクリップで固定するマルチタイプをベースに選んだんですが、ジミーさんはこれを普段使ってくださっているんです。

――ジミーさんは普段、スマホケースのジップポケットに何を入れているんですか?

ジミー:僕は大阪の魂を売ってしまって、「スイカ」を入れています。

絵柄はジミー大西の代表作
サル、トリと相性抜群って?

――スマホケースの絵柄に採用したアートは、「パラダイス」(1998年)と「ジャングルの眼」(1994年)で、いずれもジミーさんの代表作ですね。

ジミー:代表作でいきたかったんです。「パラダイス」は98年にボルネオ島に行って、そのときに実際に見たサルを描きました。僕にとってサルは、ラッキーアニマルなんですね。僕、申年と酉年の人とめちゃくちゃ相性いいんです。

新井:私、酉年です。

ジミー:あら、ほんま!?今回、実はトリを描いたんですけど、ちょっとしっくりこないなと思ってやめたんです。

新井:ピーコックの絵を描き下ろしてくださいましたよね。

ジミー:でもそれが自分では気に入らなかったんですよ。スマホケースにしたときにあんまり良さが出ないなと思って。だからラインアップから外してもらいました。やっぱりしっかり作り込まなきゃあかんなって、すごい反省しています。

――絵を描いて、実際に世に出るのはどれくらいですか?

ジミー:3分の1ぐらいですね。そのときは良くても何年か経つとやめよか、というのもあるし。

新井:テンションが変わってくる感じですか?

ジミー:作品がどんどん生まれてくるんで、この作品はやっぱ要らんとか、そういう気持ちです。手放したくないのは年代ごとにやっぱりあって、今回使ったのは、絶対手放さない作品ですね。

――「ジャングルの眼」についても教えてください。

ジミー:94年に(岡本)太郎先生に見てもらったやつで、ここから画家生活が始まるんですけど、二度と描けない絵なんで、これをエジューさんとのコラボで使えたら最高やなと思って。

新井:本当にありがたいです。見ての通り、スマホケースはキャンバスに比べて小さい面積ですけど、それでも惹きつけられるアートの力をすごく感じます。

ジミー:エジューさんが僕の絵に合わせて、ベースの色を黒とグレーにしてくれたんです。ズシっとした色がバッチリやなと思ってます。

――ジミーさんの絵はどれも色鮮やかですよね。作品の色付けは、どう進めていくんですか?

ジミー:何か一つ使いたい色を決めて、そこから組み立ていく感じです。最初が決まったら早いですよ。ただ、最初に中間色入れたらあかんのです。赤、青、緑とか、直球の色を決めるんですね。スマホケースもすごくたくさん色がありますよね?

新井:そうですね。私も感覚ですけど、トレンドカラーは意識して、それを組み合わせていく感じです。スマホケースは保護することが目的ですが、それだけじゃなくて、ファッションとしても楽しんでもらいたい。だから、トレンド感は出していきたいなって思っています。

ジミー:トレンド=最新ってことやね。

合言葉は
“キャンバスからはみ出せ”

――スマホも毎年進化していきますが、常に最新版を持ちたいと思いますか?

ジミー:そんなこともないですけど、スマホは2年に1回壊れますわ。だからその度にケースを探すじゃないですか。スマホを変えて、ケースを探しているタイミングで、エジューさんと出合って、素敵やからデザインしたいなと思ったんです。運命的やね。

――スマホケースがキャンバスみたいに感じたのかも知れませんね。今、アートで興味あることはなんですか?

ジミー:今、糸を使う技法にチャレンジしてます。絵はいつも吉本興業の社内で描いているんですけど、そのフロアには他の社員さんもいるんですよ。で、僕が絵を描いている斜向かいの女性が綺麗だったんで、冬の寒いときに手袋編んであげよと思ったら、その子に「手袋編む前に絵を描いてください」って言われて。その子が僕の持っていた糸と針をブスッとキャンバスに刺したんです。それが刺しゅうみたいで面白いなと思って、そこから始めました。

――デジタルで絵を描くことはありますか?

ジミー:デジタルは試したけど、自分のもんじゃないですね。味気ない。

新井:今回のコラボのやりとりでジミーさんから「キャンバスからはみ出せ」っていう言葉をいただきました。ジミーさんは、リアルに描くことやリアルに生きることを実現されている方なので、その言葉がすごく響いたというか。そういう意味でもリアルで描くってすごく大事だと思いました。

ジミー:太郎先生からもろうたんですよ。30年以上、絵を描いているといろんな人からいろんな言葉をかけてもらいましてね。言葉がいっぱい頭に入ってるから、「あっ」ていうときに浮かんできます。横尾(忠則)先生から、「絵を商売にしようとしたら大変だ。あくまで趣味で描け」って言われたことがあって、そういう気持ちで絵を描くと不思議とイップスにもなりづらくなりました。

――「エジュー」としての今後の目標を教えてください。

新井:今はまず、ジミーさんとのコラボレーションアイテムを皆さんに知ってもらって、たくさん日常で使っていただきたいです。会社としては、今年から海外展開を強化しています。9月にパリの展示会にも出すので、そこにジミーさんとのアイテムも一緒に並べられたらと思っています。

ジミー:僕はエジューさんでコラボ、もう一回作りたいです。ピンバッジとかどうですか?

新井:嬉しいですね。でも、うちピンバッジ作ったことなくて(笑)。

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