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サステナビリティは社内の環境整備から 安易な「サステナ」表記にも要注意【ファッションロー特集】

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「WWDJAPAN」2023年6月19日号では、3年半ぶりにファッションロー特集を掲載した。“ファッションロー”とは、「ファッション産業やファッション業界に関わるさまざまな法律問題を取り扱う法分野」(経済産業省「ファッションローガイドブック2023」)のことだ。特集ではここ数年にわたるファションロー関連のニュースの“トレンド”を振り返りつつ、法改正から最近話題の生成AIまで、実務面から今知っておくべき5つのトピックを紹介している。

4つ目のトピックには「サステナビリティ・グリーンウォッシング」を選んだ。海外ではサステナビリティに関連する法規制が年々厳しくなっている。日本でもサステナブルを目指す企業やブランドが増えてはいるものの、具体的なアクションに関する悩みも多いはずだ。海老澤美幸弁護士は、環境的な負荷軽減だけではなく、「自社の労働環境の整備こそが『真のサステナブランド』の第一歩」と強調する。

また、合わせてグリーンウォッシングに対する注意点も聞いた。日本ではグリーンウォッシングを直接規制する法律はないものの、商品の品質を偽った場合には景品表示法違反となるリスクが高まる。また、海外との取引が想定される企業は、海外の法規制も遵守しなければならないし、海外に実店舗がなくてもECやSNSなどを通じて海外からそのブランドを買ったり知ったりすることができれば、海外の法規制に縛られる可能性もあり、「サステナビリティ」をうたうのであればほぼ全ての企業が見て見ぬふりができない状況になっている。(この記事は「WWDJAPAN」2023年6月19日号からの抜粋に加筆しています)

海老澤美幸(えびさわ・みゆき)/三村小松法律事務所 弁護士兼ファッションエディター

1998年自治省(現:総務省)入省。99年、宝島社に入社しファッション雑誌の編集業務に携わる。2003年に渡英しスタイリストのアシスタントを経験。帰国後は「エル・ジャポン」のコントリビューティング・エディターなどを務める。17年に弁護士登録、第二東京弁護士会所属。19年から現職。専門はファッションロー。知財戦略から契約交渉、労働問題まで幅広く取り組む。22~23年には経済産業省 ファッション未来研究会 ファッションローWG副座長として日本初のファッションローガイドブック作成に携わる 【最近気になるファッションロートピック】ステマ規制とフリーランス新法は、ファッション業界への影響が大きいと考えられるので、特に気になっています

WWD:「サステナブルなブランド」を目指すときに、ファッションローの観点から注意すべきポイントは?

海老澤美幸弁護士(以下、海老澤):やるべきことはたくさんありますが、「サプライチェーンの把握」と「自社の体制の整備」の2点が特に重要と言えます。まず1点目の「サプライチェーンの把握」について、ブランドは、取引先である工場や原材料の供給元などが環境や人権に配慮しているかどうかをきちんと把握しておくことが重要です。特に海外展開を視野に入れている場合、海外の協業先や卸先などから、商品の製造過程で使用する素材が環境に配慮されていることや、工場や取引先の労働環境が適切であることを保証するよう求められることが多くなっています。また、サプライチェーン全体が環境や人権に配慮しているかどうかを監督することを求められることも。海外の企業との契約書では、こうした点を保証する旨の規定が入っていることが多く、場合によっては、ブランドだけでなく、商品を製造する工場からの誓約書を提出するよう求められることもあります。最近では国内企業との契約書でもそうした条項を目にする機会が増えました。こうした事態に対応するためには、初期の段階から、環境や人権、労働環境に配慮した取引先を選ぶことが大切です。

WWD:「人権や労働環境に配慮」というのは具体的には?

海老澤:例えば、「素材の生産・加工の過程で倫理的な問題がないか」「強制労働や児童労働、劣悪な労働環境ではないか」などが挙げられます。これまでは工場や取引先任せになっていた側面もありましたが、これからはそうした情報を開示してもらい、ブランド側でも把握しておく必要があります。

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