「カルティエ(CARTIER)」から新作ハイジュエリーが登場した。コレクション名の“ル ヴォヤージュ ルコマンセ”とは、“旅の再開”。同メゾンのクリエイションの核心への旅を表現している。
「カルティエ」のハイジュエリーのクリエイションは、デザイナーと職人の二人三脚で実現する。彼らを導くものは、好奇心と共に進化する専門技術で、それらが新しい原動力となり、新たな旅に繰り出すようにクリエイションに駆り立てられる。“ル ヴォヤージュ”は、ラインや抽象概念の可能性を追求して立体構造を描き、色の調和を再解釈した80点以上の作品がそろう。
「カルティエ」のハイジュエリーのクリエイティブ・ディレクターのジャクリーヌ・カラチ(Jaqueline Karach)は、「“カルティエ スタイル”の本質を深掘りし、新たな視点でさらなる高みにたどり着いたコレクション。時代を超えて受け継がれる物語のように、われわれは旅を続ける」とハイジュエリーのクリエイションについて述べている。
「カルティエ」のハイジュエリーは、宝石自体が持つ美しさを最大限に引き出すために哲学的とも言える探求を通して、新しい構造やクラフツマンシップにたどり着き、新たな調和と輝きを生み出す。
涼やかなカラーと構築的な構造による有機的な輝き
“サマ”ネックレスはダルヴィーシュというイスラム神秘主義の修道僧がまとう僧服から着想を得ている。約19カラットのサファイアの周りにカーブが連続した螺旋を描き、アラベスク模様が躍動感を与えている。ひと続きの立体構造を描き、螺旋モチーフが肌に馴染むようにCADが使用された。中央のモチーフには目に見えない連結構造が組み込まれ、全ての渦巻き模様がミリ単位で調整されているという。浮遊感があり、螺旋状のダイヤモンドは、サファイアを取り巻く波のようにも見える。
グレーバイオレットファンシー ダイヤモンドが輝く“オンデュル”リングは、希少なバイオレットカラーのダイヤモンドを、光の渦のように捉えてミニチュアの建築のように表現。ミステリアスな光の輪がフォームと輝きを引き立てている。
アール・デコやイスラム芸術から着想を得たリズミカルなデザイン
ジグザグのラインで構成される複雑な立体構造が特徴的な“クロストラ”ネックレス。ダイヤモンドとオニキスが描く幾何学模様の中央には、約4カラットのダイヤモンドがセットされている。この2つのパーツから構成されるネックレスは組み合わさったときに一つの連続性を持つ一方で、完全に別のジュエリーとしても着用が可能。アール・デコの象徴的な組み合わせブラックとホワイトをオニキスとダイヤモンドで描き、リズムと動きを与えている。
ルイ・カルティエ(Louis Cartier)が1903年に、パリの美術館でイスラム芸術をテーマにした展覧会を見て、メゾンのスタイルにその幾何学的モチーフやライン、アラベスク模様が加わった。カルティエは色の組み合わせに関する研究も始め、グリーンとブルーを組み合わせた“ピーコック パターン”が誕生。当時ヨーロッパでは、この2色は合わないとされていたが、「カルティエ」のシグニチャーの一つとなった。イスラム芸術や建築と“ピーコック パターン”を取り入れたのが“ジリ”ネックレスだ。洗練されたグラフィカルなデザインをベースに、職人がカットしたターコイズがエメラルドと呼応し、美しいカラーハーモニーを描いている。カラーとグラフィカルなラインがリズミカルな印象を強調する作品だ。
様式化と具象化の対話から生まれる“パンテール”のクリエイション
「カルティエ」を象徴するモチーフである“パンテール”。ルイ・カルティエは1914年に、パンテールの毛並みに着想を得てウオッチを制作し、33年にクリエイティブ・ディレクターのジャンヌ・トゥーサン(Jeanne Toussaint)がメゾンのアイコンへと昇華した。そのしなやかで立体的な姿や毛並みはシンメトリーでグラフィカルなアール・デコやイスラム的なモチーフとは異なり、様式化と具象化の対話を通してジュエリーへと落とし込まれる。“パンテール ジブレ”ネックレスは、アクアマリンとダイヤモンドが軽やかにダンスするようなネックレスに写実的に描かれたパンテールが潜んでいるようなデザイン。パンテールの毛並みを幾何学的なオニキスの斑点とダイヤモンドで描き、周りをうかがっているような横顔を描き出した。オニキスと呼応するのがネックレスに施されたラピスラズリ。その繊細なタッチが全体の構図にリズムをもたらしている。