「サンローラン(SAINT LAURENT)」は26日、国立新美術館と共催で開催する現代美術家の蔡國強の大規模個展開幕に先駆け、福島県いわき市の海岸で「満点の桜が咲く日」と題した白天花火の打ち上げを行った。
蔡國強は1957年中国の福建省・泉州市生まれ。上海戯劇学院で舞台芸術を学んだ後、86年からの約9年間、日本で製作活動を行う。火薬を用いて描く火薬画の技法が特徴で、代表作には万里の長城の終点から1万メートルの導火線を敷設し点火した「万里の長城を1万メートル延長するプロジェクト」や、ヒロシマ賞を受賞した「キノコ雲のある世紀」などがある。
「津波や原発事故などで失った命に捧げる」約4万発の花火
蔡が「第二の故郷」と呼ぶ福島県いわき市では、94年に地元住民と協力して実現した「地平線プロジェクト」をはじめ、さまざまな作品を製作してきた。以来、95年に拠点をニューヨークに移してからも地元住民との交流が続いている。今回の「満点の桜が咲く日」では、「東北大震災による津波や原発事故などで失った命に捧げる」とし、約4万発の花火を打ち上げた。高さ80メートル、幅400メートルにわたって津波の壁を表現した作品やピンクの煙で満開の桜を描いた作品など約20分間にわたって披露した。海岸には、「サンローラン」が招待したメディア関係者や顧客のほか、地元住民が多数集まり作品を楽しんだ。
花火の打ち上げ後は、蔡がデザインを手がけた「いわき回廊美術館」で地元のボランティアによるウェルカムランチが振舞われた。冒頭の挨拶に登壇したフランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)=サンローラン社長兼最高経営責任者(CEO)は、「クリエイティビティーをより発展させアーティストを支援することは、当社のスピリットである。皆さんもこの精神に沿って、一緒にこの機会をお祝いしてほしい」とコメントした。サンローランは加えて、いわき市で震災後に立ち上がった「いわき万本桜プロジェクト」の植樹にも協力するという。
29日から始まる個展「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」では、蔡自身が展示構成し初期の代表作である「原初火球」をはじめ、ガラスや鏡に焼き付けた新作を含む日本初公開の新作を含む約50件の作品を展示する。
■蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる
会期:6月29日〜8月21日
時間:10:00〜18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
定休日:火曜日
場所:国立新美術館 企画展示室1E
住所:106-8558東京都港区六本木7-22-2
入場料:一般1500円/大学生1000円/高校生、18歳以下は無料