ファッション

コロナ前より売り上げが30%アップ 仏ランジェリー「オーバドゥ」のセールスマネジャーを直撃

日本の下着市場は、大手下着メーカーによる寡占が長かった。しかし最近は、アパレルブランドが手掛ける下着や新進デザイナーズブランドが注目されるなど、大きく変化している。その中で、改めて存在感を示そうとしているのが、ヨーロッパのインポートランジェリーだ。上質な素材と独創的なデザインで消費者を魅了する一方で、さまざまな施策で購買層を広げようとしている。その一つが、栄進物産が輸入販売するフランスを代表するランジェリーブランド「オーバドゥ(AUBADE)」だ。現状と今後の展開について、アジアや中東などの営業を統括するフランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマネージャーに聞いた。

WWD:現在の仕事の内容は?

フランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマジャー(以下、トレル):役職は輸出部門のエリアセールスマネージャー。「オーバドゥ」は現在、約50カ国に輸出しており、私はアジア、イタリア、中東、アフリカ、カリブ海エリアの販売を統括している。

WWD:「オーバドゥ」の現在の売上高は?

トレル:2022年の世界売上高は約7400万ユーロ。(約105億8000万円)。「オーバドゥ」はスイスが本拠地の「カリダ」グループの傘下で、チューリッヒ証券取引所に上場している。そのうち、フランス国内ビジネスは全体の64%を占め、輸出は36%。私が担当している国の中では、日本は1位の売り上げで、重要な国の一つだ。日本は、ファッション、カルチャー、ウェルビーイングという点で非常に刺激的な国と捉えている。

WWD:現在の日本における販売拠点数は?

トレル:現在、伊勢丹新宿本店、松屋銀座、名鉄百貨店、岩田屋本店、栄進物産の直営店舗である青山の「マリアネリ」、帝国ホテルアーケード内の「マリアネリマダム」とECで販売する他、約200に卸している。ECと伊勢丹新宿本店、青山の「マリアネリ」が好調だ。

WWD:他の高級ランジェリーと違う理由は?

トレル:「オーバドゥ」の歴史は1875年まで遡り、医療用コルセットの会社がルーツだ。1958年に“朝の詩”を意味する「オーバドゥ」の名でランジェリーブランドとしてスタートした。“朝の詩”が名前の由来となったのは、愛しい人と過ごした夜を思い出して詠んだ朝の詩をイメージしたランジェリーだから。そのことからもわかるように、「オーバドゥ」は多くの観客に語りかけるエモーショナルなブランドだ。女性に力と幸福を与えるという使命を、自らに課している。

WWD:高級ランジェリーの魅力を伝えるために尽力していることは?

トレル:「オーバドゥ」の魅力を伝えるためには、卓越したビジュアルを見ていただくのが一番だ。製品に対する情熱を饒舌に表現している。また、医療用コルセットメーカーをルーツとしていることからも分かるように、「オーバドゥ」の魅力はそのフィッティングの良さだ。エモーショナルな部分とフィッティングという機能性を兼ね備えていることを顧客一人一人に説明し、「オーバドゥ」を身につけることで喜びを感じてもらうことが重要だ。

WWD:そのための効果的な施策は?

トレル:店頭で「オーバドゥ」の魅力を伝えるセールススタッフのトレーニングに力を入れている。世界各国の代理店との連携も重要で、コロナ禍ではフランス出張がなく、動画にパリ本社のスタッフが出演して、社内を案内したり、ものづくりの現場を紹介したりした。私自身も世界各国の代理店とオンラインでコレクションの説明を行うなど、コミュニケーションを重視した。

ファッションの一部として見せるランジェリーが好調

WWD:コロナ感染拡大がビジネスに与えた影響は?

トレル:ヨーロッパでは、コロナが下着のデザインと販売に大きな影響を与え、一部のブランドは姿を消した。「オーバドゥ」も肌触りのいいシルクのラウンジウエアやノンワイヤーブラを充実させるなど、家の中で快適な時間を過ごすためのアイテムを増やした。それらの戦略が功を奏し、ロックダウンで店舗が全て閉鎖する中、ECが非常に健闘し、コロナ禍でも売り上げを落とすことなく伸長し続けた。22年も、ECの売り上げは前年比18%増だった。

WWD:アフターコロナで売れる商品に変化は見られるか?

トレル:心地いいもの、リラックスできるものを求めていたコロナ禍と異なり、よりファンタジーを掻き立てるような魅惑的なランジェリーが好まれるようになっている。特にファッションとして楽しめるアイテムが人気で、ジャケットの下に着たりデニムとコーディネートしたりする“見せるランジェリー”の動きが活発だ。そんなファッションで、ディナーを楽しんだりスペシャルな場所に出かけたり、女性達は、コロナ後にご褒美を望んでいるのだろう。その結果、ECも店頭も好調で22年の売り上げはコロナ禍前(19年)と比べると30%増になった。

WWD:現在伸びている市場は?

トレル:世の中がアフターコロナのムードに包まれた22年はイギリス、ドイツ、アメリカなどが好調だった。ただ、エネルギーや物価高の影響で、購買意欲が落ちているように思える。ヨーロッパでは、バケーションに向けた買い物が盛んな時期だが、悪天候が重なり、水着やビーチウエアの動きもやや鈍っている。

WWD:今後のグローバル戦略は?

トレル:まずは、最高の商品を提供し続けること。「オーバドゥ」は約50カ国で同じデザインを販売しているが、サイズの幅を広げてHカップまで展開するようにし、多様な体形への対応を進めている。また、モールドプランジブラやブラレットなど新しいブラのデザインやメンズラインも充実させている。23年秋冬は「エリー サーブ(ELIE SAAB)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを発売する。国際的なデザイナーとのコラボコレクションは革新性をアピールするためにも積極的に行っていくつもりだ。これは私個人の夢だが、将来、日本人デザイナーとのコラボレーションを実現したい。先日、2023年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のグランプリに輝いた「セッチュウ(SETCHU)」とのコラボなどを夢に描いている。

WWD:今後の日本戦略、注力したいカテゴリーや商品は?

トレル:日本に限ったことではないが、魅惑的な商品を提供するだけではなく、多くの人が着けられる幅広いラインアップを展開していく。その一つが、24年春夏に発売するウェルネスウエア“ホットモーション”だ。これは、ヨガやピラティスなどアスレジャー用として楽しんでもらえるスポーツブラやショーツ、ボディースーツ、スポーツレギンスなどだ。スポーツ系セグメントはポテンシャルが高く、多くのハイブランドも手掛けている。話題になりそうなビジュアルも完成しており、日本市場はもちろん、世界で受け入れられると期待している。また、サステナビリティへの取り組みも加速させる。今もいくつかのコレクションにリサイクルレースを採用しているが、今後は全ての新シリーズを100%リサイクルマテリアルとし、継続コレクションも同様にリニューアルしていく計画だ。

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